世界的な高級リゾート地ドーヴィルを拠点とするフランスのセリ会社「アルカナ社」が、夏期限定で“フランス競馬”の魅力に迫る現地最新情報をお届けします。
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19世紀からヨーロッパにおける競走馬流通の拠点に
ドーヴィルが海辺のリゾート地として注目を集めはじめたのは、19世紀の序盤でした。以来、200年にわたって、競馬を含むスポーツ、レジャー、カルチャー、そしてファッションの中心地として栄えてきたのがドーヴィルです。今や、フランス国民のみならず、世界各国からツーリストが訪れる、人気のスポットとなっています。
そのドーヴィルが、競馬の中心地となるのが、8月です。ドーヴィル競馬場を舞台とした8月開催は、世界各国から一流馬が集結する開催となっています。さらに、アルカナ社がイヤリングセールを開催するのも8月です。選りすぐりのフランス産馬を中心に、最高の品揃えを誇るドーヴィル1歳セールも、世界中から購買者が集う場所となっています。
リゾート地であるだけでなく、歴史を感じさせる魅力的な街並みが広がる
パリから車でおよそ2時間。ノルマンディー地方の中心にあるのがドーヴィルです。ドーヴァー海峡に面したドーヴィルは、何はともあれ、景観そのものが非常に魅力的です。2キロ以上にわたって続く砂浜では、先ごろ、三代目 J SOUL BROTHERS の岩田剛典さんをモデルにした、ファッション雑誌ELLE MENのグラビア撮影が行われました。
夏になると、色彩豊かなパラソルが立ち並び、優雅なホリデーを過ごす人たちで賑わうこの海岸が、朝の早い時間帯には、競走馬たちの調教場としても使用されることを、皆様はご存知でしょうか。
海以外にも、ツーリストたちが楽しめる場所がたくさんあるのがドーヴィルです。豪華なホテルの数々、スパをはじめとしたリラクゼーション施設、世界的に有名なカジノ、さらには、エルメス、イヴ・サンローラン、ルイ・ヴィトン、ディオール、プラダ、ソニア リキエル、バーバリーといったブランドが、こぞってドーヴィルに支店を構えているのです。1913年に、ココ・シャネルが初めて、彼女の名前を冠したブティックをオープンした場所が、ドーヴィルでした。
フランスにおける、サラブレッドセール主催会社の最大手「アルカナ」
ドーヴィルで初めてサラブレッドのオークションが開催されたのは、1887年の8月でした。
アルカナ社が創設され、Elie de Brignac と称されるドーヴィルのセリ会場を舞台に、オークションを主催するようになったのは、2006年です。エリック・オヨが代表を務めるアルカナ社は、競馬業界における著名な投資家たちのイニシャティヴによって設立されました。
創設メンバーで、現在も最大の株主となっているのが、オーナーブリーダーとして数々の輝かしい実績を残してきたアガ・カーン殿下です。近代的、かつ革新的な手法で、フランスにおける競走馬の流通を牽引してきたアルカナ社は、セール主催者としてヨーロッパで2番目の売り上げを誇るまでに成長しています。
2020年、アルカナ社は年間を通じて13のセールを催し、2600頭のサラブレッドが売買されました。その販売総額は、1億1700万ユーロ(約150億円)に達しています。2020年の最高価格馬は、モンソー牧場から8月1歳セールに上場された、父ドゥバウィの牝馬でした。凱旋門賞勝ち馬ソットサスや、多くのG1を制したシスターチャーリーの半妹にあたる同馬には、250万ユーロ(約3億2840万円)という価格が付きました。
今年のドーヴィル8月1歳馬セールは、8月14日〜16日に開催
ヨーロッパにおけるイヤリングセール・サーキットの幕開けを飾るのが、アルカナ社が主催する8月1歳馬セールです。ドーヴィル競馬場における夏開催の只中に行われるこのセールには、フランスのトップブリーダーによる生産馬のみならず、ヨーロッパ全域の生産牧場から、選りすぐりの1歳馬たちが集まってきます。
上場頭数は例年400頭前後ですが、この中から、週末に行われるパート1に上場されるのが、ことさらに優れたエリートと認められた170頭前後です。2019年のパート1は、総売り上げが3300万ユーロ近くに達して、平均価格は29万ユーロ(約3800万円)を超えています。