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多彩な顔触れが揃う“真夏のマイル王決定戦”G1サセックスSに注目

  • 2021年07月28日(水) 12時00分

英国の代表的な夏開催「グロリアスグッドウッド」が開幕


 英国における代表的な夏開催の1つである「グロリアスグッドウッド」が、27日(火曜日)に開幕した。31日の開催最終日まで、見逃せないカードが連日組まれている中、開催2日目(28日)のメイン競走として行われるのが、現地時間午後3時35分、日本時間の今夜11時35分に発走予定の、真夏のマイル王決定戦G1サセックスS(芝8F)である。

 ヨーロッパでも7月以降、各路線で3歳と古馬のトップクラスが相まみえる世代間を越えた戦いが展開されている中、10F路線のG1エクリプスS(芝9F209y)をセントマークスバシリカ(牡3、父シユーニ)が、12F路線のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスS(芝12F6y)をアダイヤー(牡3、父フランケル)が制覇。3歳世代が斤量差を活かして古馬勢を撃破し、新興勢力としての威勢の良さを示しているが、どうやら8F路線もこの時流に乗りそうな情勢である。

 26日の現地時間午前10時(日本時間18時)にサセックスSの最終登録が締め切られ、10頭が出走を表明した中、ブックメーカー各社が1.73倍から1.8倍のオッズを提示し圧倒的1番人気に支持しているのが、ポエティックフレア(牡3、父ドーンアプローチ)だ。

 同馬を管理するジム・ボルジャー調教師の生産馬で、調教師夫人のジャッキーさんが所有するポエティックフレアは、LRシルヴァーS(芝10F)など2つの準重賞を制した他、G3ミュンスターオークス(芝12F)3着など重賞入着を5回経験しているグラマラスアプローチの3/4弟にあたる。

 2歳3月にデビュー。3戦目となったレパーズタウンのG3キラヴランS(芝7F)を制し、重賞初制覇を果たして2歳シーズンを終えている。

 今季初戦のLR愛二千ギニートライアルS(芝7F)を制した後、ニューマーケットのG1英二千ギニー(芝8F)に駒を進め、オッズ17倍の9番人気という低評価を覆して優勝。クラシック制覇を果たしている。

 中1週で臨んだG1仏二千ギニー(芝1600m)は6着に敗れたものの、その後連闘で臨んだG1愛二千ギニー(芝8F)では、勝ち馬マックスウィニーの短頭差2着に健闘。そして前走、ロイヤルアスコットのG1セントジェームズパレスS(芝7F213y)を4.1/4馬身差で快勝し、2度目のG1制覇を果たしている。

 セントジェームズパレスSのパフォーマンスレートは122で、この段階で世界ランキング芝マイル部門で第2位、3歳世代でも第2位につけることになった。

 きわめて高い能力を実証済みのポエティックフレアだが、このレースでここまで人気が被ることになったのは、世界ランキング芝マイル部門首位のパレスピア(牡4、父キングマン)がここを回避することになったがゆえである。

 3歳だった昨年も、芝マイル部門で首位タイの座に就いたパレスピアは、今季初戦となったG2ベット365マイル(芝8F)を8馬身差で快勝。続くG1ロッキンジS(芝8F)、前走G1クイーンアンS(芝8F)と、いずれも危なげのない横綱相撲で勝利を手中にし、古馬最強マイラーの地位を不動のものとしている。

 パレスピアVSポエティックフレアは、今年のグロリアスグッドウッドの大きな見どころの1つだったのだが、20日(火曜日)に同馬を管理するジョン・ゴスデン調教師が、血液テストの結果が芳しくないとしてサセックスSの回避を表明。両雄激突の実現は、シーズン後半に持ち越しとなったのである。

 代わって、サセックスSで古馬の旗頭を務めることになったのが、エイダン・オブライエン厩舎のオーダーオブオーストラリア(牡4、父オーストラリア)である。

 昨年11月、キーンランドを舞台に開催されたブリーダーズCで、単勝オッズ74.2倍という、ブリーダーズC史上2番目となる大穴でG1BCマイル(芝8F)を制し、世界をあっと驚かせたのがオーダーオブオーストラリアだ。

 そこまでの戦績が7戦2勝。3歳6月には未勝利の立場でG1愛ダービー(芝12F)に挑み、4着入着を果していた同馬は、その後、ダンドークの一般戦(AW10F150y)、カラの一般戦(芝12F)を連勝。

 しかし、続くG3愛インターナショナルS(芝10F)では勝ち馬から48馬身も離された9着に惨敗。BCマイルの一次登録が締め切られた段階では除外の対象(補欠の4番手)だったのがオーダーオブオーストラリアで、出走14頭中の最低人気というのも、無理からぬ評価だった。

 ところが、マイル戦を走るのは5着に敗れた2歳11月のメイドン以来だった同馬が、道中4番手追走から直線で鋭い末脚を見せ、BCマイルを快勝したのである。

 その後、G1香港マイル(芝1600m)は6着に敗れ、今季初戦となった、ロイヤルアスコットのG1クイーンアンSも8着に大敗。『所詮はこの程度の馬』と評価はダダ滑りして、一発屋のレッテルを貼られかけたのだが、7月18日にカラで行われたG2ミンストレルS(芝7F)では、発馬後まもなくハナに立つ積極的で競馬で、3戦ぶりの勝ち星を手中にした。

 復調なったオーダーオブオーストラリアが、古馬の威信を見せられるかどうかが、大きなポイントとなりそうだ。

 さらに、今年のサセックスSで大きな注目を集めているのが、3歳牝馬2頭である。

 1頭は、リチャード・ハノン厩舎のスノーランタン(牝3、父フランケル)だ。

 ロッククリフ・スタッドによる自家生産馬で、G1英1000ギニー(芝8F)を含む4つのG1を制したスカイランタンの3番仔にあたる。

 今季初戦となったニューベリーのメイドン(芝8F)を制し、デビュー2戦目で初勝利。続くヨークのLRマイケルシーリーメモリアル(芝8F)は3着に敗れたが、勇躍挑んだロイヤルアスコットのG1コロネーションS(芝7F213y)で、アルコールフリーの2着に好走。そして前走、ニューマーケットで行われたG1ファルマスS(芝8F)で、G1英1000ギニー勝ち馬マザーアースを2着に退けて優勝し、G1で重賞初制覇を果たしている。

 同馬は、グロリアスグッドウッド3日目のG1ナッソーS(芝9F197y)にも登録があったが、最終的には走りなれたマイル戦のこちらに矛先を向けてきた。

 注目を集めるもう1頭の牝馬が、アルコールフリー(牝3、父ノーネイネヴァー)だ。

 アンドリュー・ボールディング厩舎から2歳8月にデビュー。ニューベリーのメイドン(芝6F)で緒戦勝ちを果たすと、次走はソールズベリーのG3ディックプールフィリーズS(芝6F)に挑み、2着に好走。続いて出走したのがニューマーケットのG1チェヴァリーパークS(芝6F)で、ここを制しG1初制覇を果たして2歳シーズンを終えている。

 3歳初戦となったニューベリーのG3フレッドダーリンS(芝7F)を制し、距離延長にメドが立ったことから、次走はニューマーケットのG1英1000ギニー(芝8F)に参戦。ここは5着に敗れた後、ロイヤルアスコットのG1コロネーションS(芝7F213y)に駒を進め、ここを制して2度目のG1制覇を果たしている。

 古馬との初顔合わせとなった、前走ニューマーケットのG1ファルマスS(芝8F)は、同じ3歳世代のスノーランタンに3/4馬身及ばぬ3着だった。

 3歳・古馬、牡馬・牝馬が入り乱れた、多彩な顔触れで争われるサセックスSに、日本の競馬ファンの皆様も、ぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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