伏兵の台頭はそれほど多くない一戦だが……

AIマスターM(以下、M) 先週は札幌記念が行われ、単勝オッズ3.8倍(2番人気)のソダシが優勝を果たしました。

伊吹 オークスで初黒星を喫した直後ということもあり、半信半疑だった方も多かったはず。正直なところ私も本命には推せなかったのですが、終わってみれば完勝でしたね。

M 3コーナーで早くも先頭に立ち、そのまま押し切っての勝利。横綱相撲と言って良いんじゃないでしょうか。

伊吹 向正面でブラストワンピースが押し上げたのを見て、一瞬「これで先行勢は苦しくなるな」と思ったんですよ。ソダシがこのタイミングで動いたのは英断だったと思いますし、結局ペルシアンナイトやラヴズオンリーユーの追撃も振り切ったわけですから、これはもう人馬の頑張りを讃えるほかありません。

M 手綱を取った吉田隼人騎手にとっても、会心の勝利だったのではないかと思います。

伊吹 ソダシへの信頼が窺えるレース運びでしたね。おそらく秋華賞へ向かうことになるのでしょうが、その先も楽しみです。

M 今週の日曜札幌メインレースは、サマースプリントシリーズ第5戦のキーンランドC。昨年は単勝オッズ15.5倍(5番人気)のエイティーンガールが優勝を果たしました。

伊吹 4コーナー12番手からの差し切り勝ちでしたね。それまでは展開に泣くことも多かったのですが、このレースは差し馬向きの流れに上手く乗った印象です。

M 2着のライトオンキューや3着のディメンシオンも、序盤は後方でレースを進めていましたからね。

伊吹 ダノンスマッシュが制した2019年も同様の決着でしたし、今後は展開の重要性が増してくるのかもしれません。

M その2019年は3連単4480円、2020年は3連単9万5670円という決着でした。荒れる年も少なくない印象ですが、上位人気馬の成績はどうなっていますか?

伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、単勝1番人気馬は連対率が70.0%、3着内率が80.0%。それなりに信頼できると言って良いんじゃないでしょうか。



M そのようですね。一方、単勝7番人気以下の馬は3着内率が5.4%にとどまっています。

伊吹 2015年にワンツーフィニッシュを決めているとはいえ、2011〜2014年は[0-0-0-38](3着内率0.0%)、2016〜2020年も[1-0-2-42](3着内率6.7%)ですからね。基本的には堅く収まりやすいレースと言えるでしょう。

M そんなキーンランドCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、シュウジです。

伊吹 これはまた穴っぽいところを挙げてきましたね。

M 今回は7か月以上の休み明け。実績上位とはいえ既に8歳ですし、有力視している方はそれほど多くないでしょう。

伊吹 最低人気の可能性すらありますよね。無論、来たら大きいわけで、楽しみな存在ではありますが。

M レースの傾向からはどうでしょう。

伊吹 気になるのはやはり馬齢ですね。基本的に高齢馬は強調できません。



M 2017年に9歳のエポワスが優勝を果たしていますし、2020年も6歳のディメンシオンが3着に食い込みましたが、さすがに全体的な好走率は低めですね。

伊吹 その2020年も、単勝オッズ7.2倍(3番人気)の支持を集めていたフィアーノロマーノは10着に敗れてしまいましたからね。シュウジくらいの人気薄なら気にする必要はないのかもしれませんが、基本的には過信禁物と見るべきでしょう。

M 若いに越したことはない、と。

伊吹 ちなみに、2016年以降の過去5年に限ると、出走数が23戦以上の馬は[2-0-0-27](3着内率6.9%)でした。高齢馬だけでなく、キャリアが豊富過ぎる馬も評価を下げたいところです。

M なるほど。そうなると、やはり実績よりも勢いや伸びしろを重視した方が良いのでしょうか。

伊吹 いや、そんなことはありません。2015年以前はそうでもなかったのですが、2016年以降の過去5年に限ると、条件クラスのレースやローカル場のレースを主戦場としてきた馬は苦戦していました。



M シュウジは2020年と2021年のジャニュアリーS、2020年の千葉Sと天王山Sで3着以内に好走しています。

伊吹 どれもダートのレースですが、もともと芝のレースにも十分な実績がある馬ですし、この傾向に関しては強調できる側と見て良いでしょう。

M 他の出走予定馬を見ると、今年はこの条件をクリアしていない馬が意外と多いんですよね。

伊吹 その通り。オープン入りを果たしたばかりの馬や、いかにもローカル向きといったタイプの馬よりは、高く評価して良いと思います。

M 馬齢やキャリアに目を瞑れば、狙う価値は十分にありそうです。

伊吹 そのうえAiエスケープも注目馬に挙げているわけですからね。近年のキーンランドCは圧倒的に外枠有利なので、枠順次第ではさらに好走確率が上がると思います。



M おおっ。思いのほかハッキリと明暗が分かれていますね。

伊吹 私自身も、この馬が外枠に入ったとしたら、おそらく狙いたくなると思うんです。ただ、長期の休養明けであったり、転厩初戦であったりという点は慎重に評価したいところ。枠順やオッズが出揃ってから、改めて馬券上の位置付けを考えます。