父と同じように距離をこなす産駒が出てくる頃だろうという期待はある

デビュー2戦目を快勝したセリフォス(C)netkeiba.com、撮影:武田明彦
快勝したのは3番人気のセリフォス(父ダイワメジャー)。1分33秒8は、1600mになって史上3位タイの好時計だった。バランスの取れた好馬体と、落ち着き満点の気配、パワフルな伸び脚には、初コース、キャリア1戦だけの2歳馬とは思えないところがあった。
栗東の中内田調教師は、これで新潟2歳Sに3頭出走させて【3-0-0-0】。
2016年のヴゼットジョリー、2017年のフロンティアに続き3戦3勝となった。
父ダイワメジャー産駒の平地重賞勝ち星(交流レースを含む)は、もう40鞍を超えているのに、カレンブラックヒルの1800mの重賞2つ以外は、すべて1600m以下という記録がある。
牡馬のクラシックに対応できるかどうか、今後の注目はこなせる距離の幅だろう。
自身の中身は「前半61秒0-上がり32秒8」。快勝した内容から2000m級まで大丈夫そうに思えるが、なにせダイワメジャーの産駒があまりにも極端な重賞成績を残すだけに心配はある。
母はマイラーだった。母の父Le Havreルアーヴル(仏芝2100mのダービー馬)は、ラクレソニエールなど輸入された仏オークス(芝2100m)馬2頭を中心に距離をこなす産駒も多いが、スタミナ系というよりどちらかといえばスピード色が濃い。
だが、セリフォスは父ダイワメジャーが17歳時の交配で誕生した産駒。
クロフネは19歳時の交配で、距離をこなした最高傑作に近い大物ソダシを送り、ディープインパクトがSnowfallスノーフォールの母と交配されたのは、ディープインパクトとすれば種牡馬生活晩年にも近い15歳時。ディープインパクトも、父サンデーサイレンスにとっては晩年の15歳時の交配。
タフだったフジキセキが初のクラシック馬イスラボニータを出したのは18歳時の交配だった。近年の日本の名種牡馬は、種牡馬としての晩年に大物を送る傾向がある。ダイワメジャーが、自身と同じように2000mなども平気な産駒を送り出すのは今だろうという期待はある。
レース全体の上がり600mは「10秒8-11秒0-11秒8」=33秒6。この上がりを、インを突いたとはいえ32秒8で抜け出した切れ味は鋭い。4代母Redowaレドワ(父Red God)は、輸入種牡馬イエローゴッド(ファンタスト、ブロケード、カツトップエースなどの父)の全姉。スピード能力を切れ味として爆発させたい。
1番人気のアライバル(父ハービンジャー)は最後に突っ込んで2着。こちらは逆に、時計勝負のマイル戦向きではないことを示す結果だった。ラップが「10秒8-11秒0」と上がったところでスムーズにスパートできなかったが、上がり33秒0で力強く伸びている。素質全開はもう少し距離延びてからだろう。もうマイル戦にはこだわらないと思える。
そういう意味では勝ち馬と互角以上の未来がある。立ち姿は、父ハービンジャーによく似ている。父が本物になったのは4歳時だった。
2番人気のオタルエバー(父リオンディーズ)は、軽快な動きでデキ絶好と映った。前半1000m通過60秒2は、2歳重賞として決して厳しいペースではないが、近年、前半61秒台のスローから後半の勝負に持ち込まれがちな新潟2歳Sとすれば、心持ち速かったかもしれない。スタートしてからちょっと行きたがったのがスタミナ切れの原因か。
父はエピファネイアと同じシーザリオ産駒なので、デアリングタクト、エフフォーリアと同じように、サンデーサイレンスの「4×3」のクロスを持つ点が魅力だが、折り合って差す形を覚える必要があるかもしれない。スピード型のマイラーに育つなら、このペースなら粘って欲しかった。
先行してあわやのシーンを作ったコムストックロードは、スケールは感じさせないが、新種牡馬ながら目下2歳総合種牡馬ランキングトップを走るシルバーステート(父ディープインパクト)産駒らしいセンスが光った。
近年の新潟2歳Sとすれば決してスローな展開ではないのに、1-3番人気馬が上位を独占して、レース上がりが「45秒3-33秒6-11秒8」と速くなってしまっては、控えて差し脚を生かしたいグループは苦しかった。
近年、新潟2歳Sは「秋以降は、忘れたほうがいい重賞」などとされることも珍しくないが、今年の上位グループはこの後の路線重賞でも差はなく、これからさらに変わってくれる気がする。