netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
単勝1番人気馬が9年連続で連対中
AIマスターM(以下、M) 先週は新潟記念が行われ、単勝オッズ42.8倍(12番人気)のマイネルファンロンが優勝を果たしました。
伊吹 驚きましたね。新潟芝外回りは、M.デムーロ騎手やC.ルメール騎手といった外国出身ジョッキーの期待値が高い舞台。それもあって一応押さえていたのですが、M.デムーロ騎手の立ち回りが想像以上に素晴らしかったです。
M 大外から末脚を伸ばし、最後は外ラチの近くまで持ち出しての差し切り勝ち。馬場の状態を読み切っての勝利に見えます。
伊吹 発表こそ良でしたが、降雨の影響が残っていたようで、外を突いた馬に有利な馬場でしたね。内寄りの枠を引いた馬にとっては厳しい競馬となり、1着から6着までを6〜8枠の馬が占めました。
M マイネルファンロンは重賞初制覇です。
伊吹 3歳時のスプリングSで3着に食い込むなど、もともと実績上位ではありますが、6歳の夏にこうして結果を出したのですから、本当に立派な馬だと思います。これまでとはちょっとイメージの異なるレース運びでしたし、次走以降も注目しておくべきでしょう。
M ちなみに、2着は単勝オッズ6.0倍(3番人気)のトーセンスーリヤ。これでサマー2000シリーズにおける獲得ポイントを15とし、今年のチャンピオンに決定しました。
伊吹 Aiエスケープが特別登録時点の注目馬に指名していましたね。お見事です。
M こちらも6歳馬ですが、善戦が続いています。
伊吹 負担重量が前走より1.5kg増えていましたし、着順以上に高く評価して良いでしょう。この秋は格の高いレースでも上位に食い込むチャンスがあるかもしれません。
M 今週の日曜中京メインレースは、サマースプリントシリーズ最終戦のセントウルS。昨年は単勝オッズ3.0倍(1番人気)のダノンスマッシュが優勝を果たしました。
伊吹 横綱相撲で危なげなく押し切りましたね。休養明けに強いタイプであることは知られていましたし、順当勝ちだったと思います。
M スプリンターズSの前哨戦ということもあってか、上位人気馬はそれなりに信頼できるイメージです。
伊吹 実際、過去10年の単勝人気順別成績を見ると、1番人気に推された馬はすべて3着以内に好走しています。連対率も90.0%です。
M ほぼ完璧な成績ですね。
伊吹 そもそも2016年以降は単勝1番人気馬が5連勝中。2012〜2015年の単勝1番人気馬もすべて2着に食い込んでいました。連対を果たせなかったのは2011年3着のダッシャーゴーゴーが最後。ここまで大崩れが少ないのも珍しいですね。
M その分、人気薄の馬はあまり上位に食い込めていません。
伊吹 ただ、昨年は単勝オッズ67.6倍(12番人気)のメイショウグロッケが2着に健闘しました。1番人気馬を除くと、上位人気馬の好走率が極端に高いわけではないので、わざわざ買い目を人気サイドに寄せる必要はないでしょう。
M そんなセントウルSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ピクシーナイトです。
伊吹 なかなか興味深いところを挙げてきましたね。それなりに注目を集めると思いますが、1番人気ということはなさそう。
M おそらくレシステンシアが1番人気でしょうし、2番手グループの一角を占めるくらいかと思います。
伊吹 単穴、もしくは妙味ある連軸の候補と見ている方が多いかもしれません。
M ポイントはやはり3歳馬である点。伊吹さんはどう見ていますか?
伊吹 素直に強調材料と考えて良いんじゃないでしょうか。セントウルSは基本的に高齢馬が信頼できないレースです。
M 連対を果たした馬の大半は5歳以下なんですね。
伊吹 ちなみに3歳の馬は2011年以降[2-2-1-15](3着内率25.0%)、2015年以降[1-2-1-4](3着内率50.0%)。4〜5歳勢より高く評価すべきかどうかは微妙なところですが、少なくとも不安視する必要はありません。
M 今回はGIで善戦したことのある馬も出走してきますが、実績面はいかがでしょう。
伊吹 この点についてもまったく問題はないと思います。過去10年のセントウルSで3着以内となった馬の大半は、年明け以降の重賞で好走を果たしていた馬です。
M 昨年のセントウルSで穴をあけたメイショウグロッケも、2020年2月の京都牝馬Sで3着に食い込んでいました。
伊吹 ちなみに、集計対象を2013年以降の過去8年とすると、“同年、かつJRA、かつ重賞のレース”において3着以内となった経験がない、かつ“同年の北九州記念”において5着以内となった経験のない馬は[0-1-1-66](3着内率2.9%)。要するに、年明け以降の重賞で3着以内に好走している馬と、北九州記念の4〜5着馬を重視すべきレースです。
M 今年はこの条件をクリアしている馬が意外と多くありませんね。ピクシーナイトは今年のシンザン記念やCBC賞で連対を果たしていますから、相当に高く評価して良いんじゃないでしょうか。
伊吹 その通り。さらに付け加えておくと、前走好走馬である点も強調できます。
M なるほど。格が高いレースからの直行組でなければ、前走の内容が良かった馬を素直に重視したいところですね。
伊吹 もともと私もこの馬には重いシルシを打つつもりでした。Aiエスケープのお墨付きもあるわけですし、それなりに信頼して良いんじゃないでしょうか。オッズも加味したうえで、上手く買い目を組み立てたいと思います。