3歳馬ピクシーナイトが初GI制覇 (撮影:橋本健)
今年のスプリンターズSはピクシーナイトが勝利、これが初めてのGI制覇となりました。鞍上は2歳新馬から乗り続けている福永祐一騎手で、「まさに100点満点の騎乗」と哲三氏も絶賛。
そんな今回は前2戦のCBC賞・セントウルSを分析しつつ、レース展開やポジション取りについても解説します。
(構成=赤見千尋)
勝利に大きく近づいた絶好のポジション取り
スプリンターズステークスは3歳馬ピクシーナイトが初GI制覇を果たしました。鞍上の(福永)祐一君は今回も素晴らしい騎乗でしたね。ピクシーナイトは1600mから1200mにシフトチェンジしていく中で、人馬ともに勉強しながら2戦戦って、GIの舞台で一発で答え合わせが出来た。まさに100点満点の騎乗で、騎手冥利に尽きる勝ち方だったのではないでしょうか。
1200mへのシフトチェンジの過程を振り返ると、まず小倉のCBC賞では外枠スタートから内に入れることにこだわって、切れ味を活かしたいという戦略に僕には見えました。けっこう外から行きたがっている様子もありましたが、しっかりと内に入れて折り合いも付き、最後も伸びて2着。負けはしましたが、1200mという距離で勝負するための仕込みは出来たのではないかと感じます。
続く中京のセントウルステークスでは、外枠から折り合い重視で進めて行って、レシステンシアに若干届かずという競馬で2着。そこから中山の1200mに替わって、今回の枠の並びからして、上手くすれば絶好の展開に持ち込めるのではないかと想像していましたが、スタートして約11秒の間にある程度の勝負付けを済ませ、優位に立ち回れる形を作り上げました。
セントウルSではレシステンシアに若干届かず2着 (C)netkeiba.com
おそらく、想定する中で一番イヤだなと感じる展開は、レシステンシアが内ラチ沿いのポジションを取って自分の目の前に入ることだったのではないかと。読みとしては、モズスーパーフレアとビアンフェという2頭前に行きたい馬がいて、モズスーパーフレアがハナに行ってビアンフェが2番手という見立て。
ビアンフェはハナに行きたい性格の馬ですから、逃げられず2番手だとしてもモズスーパーフレアの真後ろに付けることはない。そうなると、逃げ馬と自分の馬の間に入って来そうなのはクリストフ(・ルメール騎手)騎乗のレシステンシアしかいないわけで、そこさえ入り込ませなければ、レシステンシアもスピードがある馬なので外を回るしかなくなります。
逃げ馬の後ろという絶好のポジションを取り、そこからは先ほども触れましたが、小倉1200mで内から捌いた経験が活きましたよね。7枠11番だった小倉より、2枠4番からのスタートだった今回の方が楽にポジションを取ることが出来る分、位置を前に持っていけた。先週の中山の芝1200mは内ラチ沿いが伸びていて、外は脚が止まりがちな印象でしたから、そういう計算をしつつ、レシステンシアに自分が行きたいポジションを取らせず、あのポジションを取った時点で勝利に大きく近づいたと思います。
小倉1200mで内から捌いた経験が活きていた (撮影:橋本健)
そして、直線で伸びてきたピクシーナイトのクビの使い方がすごくいいんです。連動性がとても良くて、気分良く集中して走っているように見えました。ゴールした後の表情もすごく好きで、祐一君が抑えるしぐさをした時には左耳がピクッとしているけれど、クビも目も耳も基本的に真っすぐ向いているんです。こういう場面でガッツポーズをすると、馬のリズムが崩れると僕は思っているので、見ていて気持ちいいなと感じました。
もちろんガッツポーズをすることが悪いわけではなく、盛り上がる重要な要素であると思います。ただそれはケースバイケースで、ピクシーナイトはまだ3歳で今は成長していく段階。そういう時に馬のリズムが崩れることをしなかった、という選択が好きだなと。これが体も競馬も出来上がった古馬になってからならば、全然いいと思います。そのケースバイケースを見分けられるかも大事なことではないでしょうか。
ピクシーナイトの口取りの様子 (撮影:橋本健)
シリウスステークスは4番人気だったサンライズホープが勝ちました。幸(英明)君はさすがの騎乗でしたね。中京ダート1900mは、スタートして少ししてから坂になるわけですが、坂くらいまではちょっと追っ付けて、坂で軽くブレーキングを掛けながらリズム良く進んでいる。自分と近寄った人気の馬たちが自分の内にいる中で、幸君の馬が一番スムーズにコーナーに進入出来たと思います。
前に行く気持ちを削がずに、無駄なく、しっかりと流れに乗りました。あそこでちょっとでも間違えていたら、負ける要素も出て来たのではないかと。パーフェクトに進められたいいレースでした。