強豪が集結した地方全国交流の三冠目を制したことの価値
オリンピックが延期されなければ祝日となっていたはずの10月11日、地方競馬は想定外の平日で6場開催。注目されたのはJpnIの南部杯だが、名古屋競馬場では3歳馬による秋の鞍が行われた。勝ったのは地元馬トミケンシャイリで、“名古屋三冠”達成となった。
かつて東海地区では、駿蹄賞(名古屋)、東海ダービー(名古屋)、岐阜金賞(笠松)を“東海三冠”としていた時期もあったが、近年、名古屋競馬の関係者の間では三冠目を秋の鞍(名古屋)として、“名古屋三冠”と言われるようになった。
三冠の認識が変わったのがいつからなのかははっきりしないが、東海地区の秋の3歳重賞は、9月中旬の秋の鞍、そして10月中旬の岐阜金賞というローテーションで定着し、両レースとも2017年に始まった『3歳秋のチャンピオンシップ』にも組み込まれていた。
ところが2019年、『3歳秋のチャンピオンシップ』ファイナルのダービーグランプリが、それまでの11月下旬から10月第1日曜に繰り上げられたことにともない、そこに至る全国の対象レースの多くが、日程を繰り上げざるをえなくなった。そのため2019年は、岐阜金賞は1カ月半ほど繰り上げて8月29日、秋の鞍が9月3日となり、同じ東海地区で競合する日程となってしまった。
それで翌2020年、名古屋の秋の鞍は、それまでの1800mから1400mに距離短縮したうえで、10月12日に日程を繰り下げた。これは『3歳秋のチャンピオンシップ』からの離脱でもあり、主催者にとっては英断だったと思われる。地方競馬全国協会が主導するシリーズ競走であれば全国規模で広報展開されるが、『3歳秋のチャンピオンシップ』から抜ければその恩恵はなくなってしまう。
しかしながら距離短縮となった秋の鞍は、11月の楠賞(園田1400m)へのステップレースとして機能することとなった。
2020年の秋の鞍は、前年の全日本2歳優駿を制していたヴァケーション(川崎)が参戦。南関東3歳のクラシック路線では結果を残せないでいたが、秋の鞍では全日本2歳優駿以来となる勝利を挙げ、再び注目となった。
そして今年の秋の鞍にも、大井から3頭、兵庫、高知から各1頭が遠征。中央→大井→兵庫と移籍し、園田1400mの自己条件を大差で2連勝していたイグナイターが断然人気。しかし果敢にハナをとったトミケンシャイリが、3コーナー過ぎで迫ったイグナイターを直線で振り切り、2馬身差をつけて完勝。混戦の3着争いで先着したミラコロカナーレ(大井)にはさらに4馬身差をつける圧勝でもあった。
1800m→1900m→1400mという、距離的には変則的ともいえる三冠を制したトミケンシャイリ。一冠目、二冠目は東海地区限定戦だが、地方全国交流の三冠目を制したことは、名古屋三冠を達成した以上に価値がある。
園田の楠賞は、以前は1870mの古馬戦(3歳以上)だったが、2012年を最後に一旦休止。2018年に1400mの3歳地方全国交流として再出発した。1着賞金は、その2018年が600万円で、2019年が1000万円、2020年が2000万円と増額されてきた。実は盛岡のダービーグランプリは、今年1着賞金が2000万円に増額されたが、昨年は1500万円で、楠賞のほうが賞金が高いことでも注目されていた。
今年、楠賞の賞金はまだ公表されていないが、仮に据え置きとしてもダービーグランプリと同額。今のところ秋の鞍から楠賞へという2戦ではあるが、秋の3歳短距離路線にも注目だ。