重賞初Vを飾ったシャドウディーヴァ (撮影:小金井邦祥)
府中牝馬Sを制したのは4番人気シャドウディーヴァ、鞍上は福永祐一騎手でした。末脚を活かす競馬となった今回、前走の関屋記念にも触れながらレースを振り返りつつ、哲三氏も現役時代に重要視していたという“馬の頭の位置”に焦点を当て詳しく解説します。
(構成=赤見千尋)
安易に下げているわけじゃないところがポイント
土曜日に東京競馬場で行われた府中牝馬ステークスは、4番人気だったシャドウディーヴァが勝利しました。最近のシャドウディーヴァのイメージは、少し甘くなってきているのかなと感じていて、(福永)祐一君が騎乗してどこまで盛り返すかなと思っていましたが、3回目であっさりと結果を出しました。最近の祐一君はやはり乗れていますね。
前走の関屋記念は新潟の軽い馬場である程度スピードに乗せて競馬をしながら、中団前くらいの位置取りだったのですが、そこから伸び切れずに7着という結果でした。でも今回は下げて後方からすごい脚を引き出しました。後方からの競馬なのですが、安易に下げているわけじゃないというところがポイントです。下げて末脚を活かす競馬というと、ただ引っ張って下げている人もいますが、祐一君はスピードに乗せるための準備をしながら後方の位置に付けているんです。
まず最初の100mでスピードに乗るための馬の頭の位置をしっかり作り上げて、3コーナー手前でもう一回作り直して、仕込みは終了。あとは最後の末脚でどのコースを突いて行くかという選択で、馬が加速する準備がしっかり出来ているので、周りとはスピードの乗りが違う。そこが最近また腕を上げたなとよく思うところです。
「馬が加速する準備がしっかり出来ている」と哲三氏 (撮影:小金井邦祥)
自分自身の操作技術という部分もそうですが、馬の頭の位置が、すごくいい位置で走らせていることが多いんですよね。それはポジションを取りに行く時でも、行かない時でも同じで、常に意識しているのではないかと。
馬の頭の位置と言ってもピンとこないかもしれませんが、馬の頭の位置をある程度上げる、走りやすい位置に保つというのは、馬の筋肉の使い方の話なんです。人間でも速く走ろうと思ったらフォームを研究するのは当然のことですよね。馬にも走りやすいフォームがあって、一頭一頭違うわけですが、その中で大切なのが頭の位置だと考えています。僕は現役時代、そこを重視して研究してきました。僕と祐一君はやり方は違いますが、意識していること、重要視していることは同じなのではないかと、レースを見ていて感じます。
シャドウディーヴァの口取りの様子 (撮影:小金井邦祥)
たとえば若手のジョッキーが今の祐一君のフォームをただ真似しても、中身を真似しなければ、祐一君と同じような効果は引き出せない。今の祐一君はすごく乗れていると思いますし、いいトライをしているように見えるので、この先のGI戦線も楽しみですね。