ダンビュライトを管理する音無秀孝調教師(撮影:高橋正和)
京都記念など芝の重賞2勝を挙げるダンビュライトが、みやこSで初めてダート戦に臨みます。芝とダート、適性の差はどこにあるのかを調教や馬体から判断するのは難しいと話す調教師は多く、クリソベリルなど多くのダート馬を手がけてきた音無秀孝調教師もそう語ります。
未知数な部分が多いながらもダートに矛先を向けたのには「もうひと花咲かせたい」とダンビュライトの可能性を信じる思いがありました。
(取材・構成:大恵陽子)
※このインタビューは電話取材で行いました。
ソダシの母ブチコも芝デビューからのダート転向
──ダンビュライトがみやこSで初めてダート戦に挑むということで注目を集めています。まずは芝2400mで行われた前走・京都大賞典(9着)を振り返っていただけますか?
音無 若い頃とは印象が少し違ってきているんですけど、それでも休み明けにしてもちょっと負けすぎだな、と感じました。もう少しやれると期待していました。ただ、あの馬は成績が表すように京都コースの方が合う馬なんです。工事でしばらくは阪神でしかレースがないので、同じことを繰り返すのであれば一度ダートでどういう走りをするか見てみたいということになりました。
京都のコースが合うというダンビュライト ※写真は2019年京都記念(C)netkeiba.com
──普段の走りなどからダートへの可能性を感じることもあったのですか?
音無 ダートが走ると確信しているわけじゃないので、やってみないとどちらに転ぶか私たちにも分かりません。ダートがいいか芝が合うかを決める境目は難しいです。
ただ、最初から芝への可能性を否定するのもいけないので、ダート血統でもデビューの頃は芝を使うケースも結構あります。ソダシのお母さんのブチコがそうで、芝でデビューして4戦目でダートに転向しました。
──いざレースを走ってみないと競走馬は分からない部分が多くあるんですね。
音無 調教でダートの稽古をしようと考えたんですけど、いま栗東トレセンのダートコースのうちの一つ(Eコース)が工事で閉鎖中で、試すことができませんでした。
──初ダートの馬は前の馬が蹴り上げた砂を嫌がることもありますが、芝のレースでは先行できる脚力を持っていますから、ダートでもそれを発揮できれば武器になりそうです。
音無 そうなればいいですね。でも、気性の激しい馬なので、もし砂を被った時はどう反応するかは分からないですね。
脚元がキレイで、馬も若い
──気性といえば、2019年ジャパンカップ後に去勢をしましたけど、気性の変化はありましたか?
音無 ほとんど変わっていないです(苦笑)。体型も特に変わっていません。
──良く言えば、重賞を勝った頃と変わらない体だと!?
音無 できればそうであってほしいと思います。脚元もキレイですし、馬も若くて、去勢をしているので種牡馬にはなれませんから、オーナーサイドと「いろいろやってみましょう」というお話になりました。
──その分、現役時代がより輝かしいものになればと願います。先日引退が発表されたGI/JpnI4勝のクリソベリルなど、音無厩舎にはダートで活躍した馬がたくさんいますが、そういった馬たちに調教で共通することなどはありますか?
音無 芝を走る馬もダート馬も、調教でやることは同じです。
クリソベリルの場合はお父さんがゴールドアリュールということで、デビューから一貫してダートでした。脚元はキレイになったんですけど、残念ながら喘鳴症が発覚して引退することになりました。半兄のリアファルはダートでデビューして、途中から芝に変わって重賞も勝ちました。リアファルのように芝・ダートどちらも走る馬も中にはいますし、芝がダメでダートに行ってみて「やはりダートですね」という馬もいたり、それぞれの馬で理由が違いますが、何せ芝かダートか決めるのは難しいです。
──これだけ活躍馬を手がけてこられた音無調教師の「難しい」という言葉に重みを感じます。ダンビュライトにとってダート転向がどう出るかは未知数ですが、復活を願うファンも多いと思います。
音無 私たちも、もうひと花咲かせるにはどうしたらいいかばかりを考えて、その結果が今回のみやこS出走です。そこで花が咲くかどうかですね。
陣営もファンも“もうひと花”を願って(C)netkeiba.com
(※文中敬称略)