昨年はラッキーライラックがエリザベス女王杯連覇(c)netkeiba.com
昨年に続き、京都競馬場改装中のため今年も阪神競馬場で行われるエリザベス女王杯。阪神芝2200mと言えば宝塚記念と同じコース。宝塚記念と言えば、最も上がりの時計がかかるタフなGIとして有名なレースです。となれば、同じ阪神芝2200mで行われるエリザベス女王杯も「上がりの時計がかかる」ことを前提に予想を組み立てるべきなのではないかと、昨年はそこを最重視していました。
しかし結果は上がり3ハロン33秒9の高速末脚決着でラッキーライラックが快勝。上がりの遅い勝負を想定するなら用無しと、1番人気とはいえ意気揚々と切り捨てたラッキーライラックに快勝されたショックは相当なものでした。
勝ったラッキーライラックの他にも、上位5頭のうち4頭が33秒台で上がってきた昨年のエリザベス女王杯。(昨年までの)宝塚記念で上がりの記録が残っている1993年以降の393頭、33秒台で上がって来れた馬は1頭もおらず、34秒5を切った馬もわずか5頭(1%程度)だけという状況において、これは相当なレアケースでの決着だったと考えます。
これ以外にも秋季阪神開催では数年に一度、速い上がりの決着が見られないこともないのですが、それでも基本は上がり時計のかかる決着。宝塚記念ほどのこだわりは持たないにしても、基本的には上がり35秒前後での決着を想定して予想を進めたいと考えています。
■阪神芝2200m勝ち馬の上がり3F平均
2〜4月期 35秒3 (対象92R)
6〜7月期 35秒5 (対象63R)
9〜11月期 35秒2 (対象19R)
12月期 34秒9 (対象26R)
※2001年以降、良馬場限定
そこで最近着目しているのは、各馬ごとに「1着時の上がりタイム」と「2〜5着時の上がりタイム」を比較するという手法。大負けしたレースは参考外として、通常は2〜5着に敗れたレースよりも1着になったレースのほうが速く走れているはずなのですが、それが当て嵌まらない馬。すなわち「時計のかかる展開」で勝ちきれている馬を炙り出す手法です。GIまで来るような馬は少々展開が向かなくても好走(2〜5着)はできてしまうものなので。
今年の宝塚記念を勝ったクロノジェネシスと2着のユニコーンライオン、(3着レイパパレは当時2〜5着経験なし)、前年宝塚記念単勝106倍で3着のモズベッロなどもこちらのタイプでした。
今年のエリザベス女王杯出走馬でそれに該当するのは、
アカイトリノムスメ
ウインマリリン
ステラリア
クラヴェル
コトブキテティス
ムジカ
リュヌルージュ
の7頭。これらは33秒台など速い上がりでビュンと伸びる競馬よりも、もっとタフなレースに適するタイプの馬ではないかと考えられます。
当日の阪神8レース、芝2200m戦の上がりタイムを確認してから決断するのが一番良いのかも知れませんが、ウマい馬券では、各馬の具体的な数値を織り交ぜつつ、ここから更に踏み込んでエリザベス女王杯を解析していきます。印ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。