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静内農業高校におけるマイスターハイスクールへの取り組み

  • 2021年11月25日(木) 18時00分

最先端の授業が生徒たちの刺激に


 前回に引き続き、静内農業高校におけるマイスターハイスクールへの取り組みについて触れたい。

 過日、同校を訪れ、マイスターハイスクール事業を統括している加藤和則教頭にお会いすることができた。

生産地便り

静内農業高校校舎


 北海道立静内農業高校がわが国で唯一、サラブレッド生産を授業の一環として取り入れ実践していることは前回紹介した通り。そして、同校には、現在、食品科学科と生産科学科の二つの学科が設置されており、全校で128名が在籍していること、そしてサラブレッド生産は生産科学科の生徒たちによって行われていること、などもすでに触れた。

 その静内農高にマイスターハイスクール事業申請の企画が浮上したのは、今年2月の事だという。期間は令和3年〜5年までの3か年。学校と産業界、そして地方公共団体が共同でこの事業を行いたいと文科省に申請し、文科省から予算付けとともに、これら申請者に対して事業委託をする、という形だという。

 全国で12校が指定され、この事業に取り組んでいることは前回触れたが、静内農高の場合はこのマイスターハイスクール事業の目標を「地域発次世代イノベーター人材の育成〜持続可能な日高農業の創り手〜」と題し「軽種馬、野菜生産や食品加工など、特色ある日高の農産業の実践を通して、地域産業の課題解決の一助を担うとともに、フロンティアスピリッツのもとに地域と産業の持続的発展をけん引するイノベーターとしてのマイスター育成を図る」と掲げている。

 同事業には、「運営委員会」と「事業推進委員会」の二つが設置されており、静内農高を中心に、運営委員会では日本軽種馬協会、国分北海道(株)、酪農学園大学、JAしずない、北海道経済連合会、新ひだか町商工会、そして行政(北海道、北海道教育委員会、新ひだか町)が加わり、実施計画を立案し、育成すべき人材像を策定する。

 この運営委員会の指導、助言のもとに、事業推進委員会では具体的な教育課程を策定してカリキュラムを組み、外部講師の確保、出張授業の手配などを行う、というものだ。

 加藤和則教頭によれば「この事業は今年が初年度でして、実質的に6月くらいからのスタートになりました。生産科学科の馬コースに関しては、7月のセレクションセール見学に始まり、JRA日高育成牧場とJBBA静内種馬場などのご協力を頂いて、サラブレッドの初期育成や乗馬、調教、さらに蹄のこと、獣医学のことなど、専門家を学校に招いたり、またバスで出張して授業を受けたりということがこの事業でできるようになりました。従来、予算がないので、生徒たちを他の場所に見学や視察などに連れて行くことが難しかったのですが、それがある程度可能になって、例えばJRA日高育成牧場や札幌競馬場などへも出かけられるようになったのです」とのこと。

「やはり今まで見たことのない現場に行って、生の、というか最先端の授業を受けることは生徒たちにはとても刺激になっているようで、目の輝きが違う、みんなとても積極的だ、というようなお声をいただいております」と加藤和則教頭は話す。

 こと、静内農高の生産科学科馬コースに関しては、従来から、地元以外の道内各地にとどまらず、本州方面、さらに九州などからも、馬の世界を目指して同校の門をたたく生徒が一定数いる、という。とりわけ近年は女子生徒が何人も道外から入学してくるようになり、それらの馬志望の生徒たちは概して優秀なのだそうである。

生産地便り

JRA日高育成牧場にて授業を受ける生徒たち


「馬の世界で仕事に就きたい、という強い希望を持って同校に入ってくる女子生徒のために3年前から女子寮も作りました。こと、馬に関しては、わが校ほど環境の整った高校は他にないだろうという気がします。道路を挟んですぐ隣にはJBBA静内種馬場や軽種馬生産技術総合研修センターがあり、さらに学校の周囲には数多くの牧場があります。この地は本当に景観も美しくて素晴らしいところだと思いますよ」と加藤和則教頭は言う。

生産地便り

静内農高パンフレット


 ここで文章によっていくら説明しても、なかなかイメージが湧かないであろうとは思う。静内農高とはいかなる学校なのか。それを知るための恰好の映像がある。「青春サラブレッド」というタイトルのドキュメンタリーである。制作はテレビ北海道。去る9月23日に放映されているが、現在もまだYouTubeで期間限定配信されている。興味のある方はそちらをぜひご視聴いただきたいと思う。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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