
▲マルシュロレーヌが日本調教馬初の北米ダートG1制覇 (C)netkeiba.com
凱旋門賞と米国のダートG1のどちらが、日本馬にとって高い壁かという質問は、相当な難題と思えたが、あっさり答えが出てしまった。11月6日(日本時間7日午前)、米国カリフォルニア州のデルマー競馬場で行われた第38回ブリーダーズカップ(BC)2日目の「ディスタフ」(ダート約1800m)で、11頭中9番人気だった日本のマルシュロレーヌ(牝5、栗東・矢作芳人厩舎)が、ダンバーロード(同)を接戦の末に鼻差で振り切り、日本調教馬初の北米ダートG1制覇という偉業を達成したのである。
「ディスタフ」の約2時間前には、同じく牝馬限定の「フィリーアンドメアターフ」(芝約2200m)でも、矢作厩舎所属のラヴズオンリーユー(同)が、ゴール前で抜け出し、日本勢初のBC勝利をあげた。
従来、日本馬の海外遠征と言えば、欧州と香港、ドバイが中心で、米国を目指すのは特定の馬主や厩舎に限られていた感があり、ダートG1勝利がなかった背景にも、こうした事情があった。だが、「本丸」と呼ぶべきBCの中でも人気の高いディスタフを攻略したことで、様相が変わってきそうだ。
超ハイペースが波乱呼ぶ
今回のディスタフは4つのG1を含めて重賞5連勝中のレトルースカ(同)が圧倒的支持を集め、それぞれG1・3勝のマラサート(牝3)、シーデアズザデビル(牝4)など、質の高いメンバーがそろっていた。ここ数年、米国のダート路線では強い牝馬が次々に現れており、代表格が6歳のモノモイガールで、通算17戦14勝2着3回。G1も7勝という歴代級の存在だが、レトルースカは今年4月のG1「アップルブロッサムハンデキャップ」(ダート約1700m)で、同馬を鼻差で破る殊勲の星をあげている。
一方で、マルシュロレーヌは4歳時の昨年9月、小倉の桜島S(3勝クラス)で、初ダート戦を勝った後、ダートで通算8戦5勝。ただ、負けた3戦はJBCレディスクラシックと帝王賞の両JpnI、中央の牡馬相手のGIIIの平安Sで、相手が強くなると苦戦する傾向を見せていた。不慣れな馬場で強敵に相対するには荷が重く映る戦績だった。
驚くべき反転を呼んだのは、前半のハイペースだった。逃げたプライベートミッション(牝3)にレトルースカが絡み、前半の800mが44秒97、1200mが1分9秒70という短距離並みのハイペース。前の2頭は3コーナーで早々に手応えが怪しくなった。