▲今年のひまわり賞で初勝利! ヒノクニが阪神JFへ (C)netkeiba.com
昨年のヨカヨカに続き、九州産として2年連続して阪神ジュベナイルフィリーズに生産馬が出走する熊本県の本田土寿さん。そのヨカヨカは、北九州記念で重賞制覇を果たし、九州産馬の希望の星となった。
ヨカヨカは残念ながら骨折が判明して繁殖入りが決まったが、その後を継ぐ存在として期待されるのが阪神JF出走予定のヒノクニだ。同馬について、本田さんに話を聞いた。
(取材・文=佐々木祥恵)
九州産馬の希望の星・ヨカヨカの後を継ぐ存在に
「出産の時に(脚を)引っ張っている時に、骨太で結構しっかりした馬で、これは男だなと思っていたら牝馬でした。男か女か引っ張っている時にだいたい勘でわかるんだけどね(笑)」
と本田さんは、ヒノクニが生まれた当時を振り返った。気性面では、繊細な面もあったという。
「いつもないものがあるなど、普段と違う風景になっていると反応したりしていました。それだけ知能が高いんでしょうね」
母のトワイスアップは、北海道日高町の下河辺牧場の生産馬。その父は米G1サンタアニタHやマリブSを優勝したRock Hard Ten、母も米国生まれのスロットルという血統。スロットルの米国時代の産駒には東京プリンセス賞3着のピュアーフレームがいる。さらに遡ってヒノクニの曾祖母にあたるマジカルメイデンは、G1のハリウッドスターレットS、ラスヴィルヘネスSなど8勝を挙げた名牝だ。
トワイスアップは下河辺牧場から、2018年のジェイエス繁殖馬セールに上場され、本田さんが購買した。カレンブラックヒルの子を受胎しており、翌年生まれたのがヒノクニというわけだ。
「カレンブラックヒルは子出しが良かったですし、スピードもあって九州には面白そうだと思いました」
順調に成長したヒノクニは、2020年九州1歳市場でJRAが484万円で購買。
「あの馬はずっとパワフルな体つきをした良い馬で、血統も筋が通っていますからね。JRAさんに購入頂いて良かったなと思っています」
2021年のJRAブリーズアップセールでは275万円で現オーナーの由井健太郎氏によって購買され、美浦の深山雅史厩舎の管理馬となった。
九州生まれの馬は夏の小倉の九州産限定の新馬戦でデビューするケースが多いが、この馬は6月6日の東京競馬場の芝1600mが初陣だった。
「12着でしたけど、新馬戦ではまだ戸惑っていたみたいですね」
小倉競馬場に舞台を移した2戦目は九州産限定の未勝利(芝1200m)で、後方の位置取りから追い上げてきて4着に入った。
「この時が良い脚を使ったので、真面目に頑張ってくれれば最後は伸びてくるという感触を得ました」
続く3戦目の未勝利戦(九州産限定)でハナ差の2着を経て、4戦目の九州産限定のひまわり賞では、それまでの3戦と違い好位からのレースを運び、最後の直線では一騎打ちになったカシノコマンドを振り切り、先頭でゴールイン。初白星を挙げた。
「行きっぷりが良かったので好位につけられましたし、何とか差し切ってくれないかなと思ったら、内からスッと抜けて勝ってくれました」
▲レースを振り返り「行きっぷりが良かった」と本田さん (C)netkeiba.com
休み明けとなった5戦目のエーデルワイス賞(JpnIII)は、初めてのダート戦で14着と大敗を喫した。
「行きっぷりを見てもやる気を感じられなかったので、ダートは合わないのかもしれないですね」
その後、陣営から阪神JF参戦が発表され、昨年のヨカヨカに続いて2年連続の九州産馬のGI出走が決まった。
「今度は芝になれば、この馬の持ち味は生かせるのではないかと思います。1600mまでは守備範囲と見ていますし、期待はしています」
繁殖入りが決まったヨカヨカに本田さんは、会いに行ったという。
「栗東の近くにある島上牧場にいたのですが、オーナーに連れていっていただいてね。元気な姿を見させてもらって、嬉しくて嬉しくて。良い思いをさせてくれましたし、あの子にはありがとう、ありがとうって言いました」
ヨカヨカはオーナーが所有する北海道新ひだか町にあるサンデーヒルズで繁殖となることが決まっている。九州には戻ってこないが「良い種をつけてもらって、良い子を産んでもらえればと思っています。ヨカヨカの姉のローランダーが引退して繁殖牝馬として戻ってきましたので、うまく種がついてくれて、ヨカヨカの子とローランダーの子を勝負させたら面白いなと夢を見ています」
九州産の希望の星となったヨカヨカ。その後継馬と期待されるヒノクニ。本田さんの生産にかける情熱が、2年連続してGI出走馬を送り出したと言っても過言ではない。
「昨年に続いてGIの舞台に立てるのは生産者としてとても嬉しいです。今回は嫁さんと次女を連れて阪神競馬場に応援に行くんですよ。目の前で頑張ってくれると思っています」
(文中敬称略)