3月25日にドバイのナドアルシバ競馬場で行われる第11回ドバイワールドC。過去の成績を見ると、地元ドバイ勢とダートの本場アメリカ勢の2大勢力が圧倒的優位に立っていることは明らかだ。今年も、このどちらが制して現在五分五分(過去10年でアメリカ5勝に対しドバイ5勝)の情勢から一歩リードするかが、焦点となるはずだ。
ただし、今年はアメリカから5頭という、これまでにない大デレゲーションが遠征しているので、アメリカ勢の中での取捨が大きなポイントとなってくる。
私は、2年連続全米リーディングのトッド・プレッチャーが送り込んでくるマグナグラジュエイトがエース格と見る。3歳シーズン後半に重賞3連勝と急上昇。殊に、スアーヴ、パーフェクトドリフト、トータルインパクトといったトップクラスの古馬を撃破して制した11月のG2クラークHのレース振りは印象的で、今季のアメリカ古馬ダート戦線を背負って立つ存在になることが期待された。
今季緒戦となった2月のG1ドンHは4着と敗れてファンをがっかりさせたが、当日のガルフストリームは極端な道悪で、しかも超のつくハイペースに巻き込まれて自滅と、敗因がはっきりしている。この敗戦にもめげずにドバイにやってきたところに、管理するリーディングトレーナーの自信が窺えるのだ。
もちろん、ドンHでマグナグラジュエイトを破ってG1初制覇を果たしたブラスハットも実力馬だし、ここでは大敗したスーパーフローリックも4着となったBCクラシックだけ走れば侮れず、アメリカ勢の上位独占もありえる状況と見ている。
一方のドバイ勢の筆頭は、ダート初挑戦となった前哨戦のマクトゥームチャレンジ・ラウンド3を7馬身差で圧勝したエレクトロキューショニストだ。お馴染み、昨年8月のインターナショナルSでゼンノロブロイを下した実力馬で、しかもダートもこなせるとなれば、地元の期待が高まるのも当然だが、一方で、マクトゥームチャレンジ・ラウンド3の2着馬チキティンは昨年のドバイWCの11着馬。言ってみれば相手が弱かったわけで、ダートの本場アメリカのトップクラスと互角にやれるかどうかは、いまだ未知数だと思う。
さて、ここに挑む2頭の日本勢。昨年11月のジャパンCダートで見せたパフォーマンスを再現出来れば、上位争いに食い込む可能性は十分にあるはずだが、再現出来るかどうかは、ひとえにナドアルシバのダートをハンドリングできるかどうかに、かかっていると言えよう。
香港シャティン競馬場の直線千メートルコース同様、どんなタイプを連れていけばドンピシャで合うのか、論理的解明が十分になされていないのが、ナドアルシバのダートコースである。カネヒキリの力は、ダートならば明らかに01年2着のトゥザヴィクトリーよりも上だが、一方でアドマイヤドン(04年8着)よりも強いかと言われれば、確信も持ってYESと言える段階にはまだ至っていないと思う。
先行しなければ勝機のないコースであることは、鞍上の武豊騎手も十分にわかっているはずで、積極的なレース運びを見せて、まずは日本馬にとって「指定席」とまで言われている6着を上回る成績を収めて欲しいものである。