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サブノジュニア引退

  • 2021年12月14日(火) 18時00分

サウスヴィグラスの血を後世に繋いでいく活躍を期待


 2020年のJBCスプリント(大井)を制し、その年のNARグランプリ年度代表馬となったサブノジュニアが、12月9日、大井メインのビオラ賞でラストランを迎え、最終レース後には引退セレモニーも行われた。

サブノジュニアの引退セレモニー(撮影:高橋正和)



 1番人気に支持されたその最終戦は、残念ながら6着。互角のスタートも中団よりうしろからの追走となったのはいつものことだが、前半で掛かっていくような場面があった。直線を向くところで大外に持ち出したのは、おそらく今後のことを考えて大事にレースを運んだのだろう。直線で伸びてはいたものの、前との差を詰めることはできなかった。

 大井の堀千亜樹厩舎からデビューしたサブノジュニアの初勝利は、デビュー5戦目、2歳時の大晦日と意外に遅かった。短距離路線は一貫してぶれることがなく、3歳になっての2戦目から5月の優駿スプリントトライアルまで4連勝。このときは的場文男騎手が手綱をとっていた。1番人気で臨んだ優駿スプリントは、北海道デビューのバンドオンザランの2着。アフター5スター賞は4着だったが、初の古馬対戦で、しかも勝ったのが、のちに東京盃連覇を果たすキタサンミカヅキで0秒4差は健闘といえた。

 重賞タイトルがないまま、初めてのダートグレード挑戦となった4歳時の東京スプリントは11番人気ながら勝ち馬から0秒5差の4着。この前走から矢野貴之騎手が手綱をとっていた。そして6歳時の東京スプリントでジャスティンの2着と好走を見せると、その後は3連勝でアフター5スター賞を制し、ようやく重賞初制覇。続く東京盃で5着に敗れたため、JBCスプリントは8番人気という低評価ながら、ダートグレード初勝利がJpnI制覇となった。

 この6歳時は9戦5勝。大井の1200mに限ると7戦5勝で、負けたのは東京スプリント2着と東京盃5着だけ。大井の1200mで好走を続けたサブノジュニアにとって、ピークを迎えた年にJBCの舞台が大井だったことは幸運だった。

 残念ながら大井でのJBCスプリントが最後の勝ち星となり、ほかに制した重賞も同年のアフター5スター賞だけ。それでも大井1200mに限ると、通算26戦11勝、2着8回。勝率42.3%、連対率73.1%という圧倒的な成績を残した。しかし重賞となると、中央も含め1200〜1600mで21戦2勝、2着3回、3着2回と勝ちきれないレースが多く、それゆえ関係者にとっての悔しい思いも想像できる。

「この馬に乗るときは、いろいろ考えながら乗せてもらったんですけど、うまく乗れないことのほうが多くて、申し訳ない気持ちで一杯です。最後もちょっとうまく乗れなかったんですけど、この馬らしい競馬だったなとは思いますし、もっともっと勝ちたかったです」と、矢野騎手は涙ながらに語った。

 近年、南関東では3歳馬による優駿スプリントの創設(2011年)をはじめ、短距離路線も充実してきたが、それでもまだまだ年間を通じて短距離ばかりでローテーションを組むことは難しい。1400mあたりまで対応できる馬であればレース選択も容易なのだろうが、1200m以下に適性が特化した馬にはそうもいかない。

 サブノジュニアがJBCスプリントを勝ったあと勝ち星がなかったのは、ピークを過ぎたということもあるかもしれないが、もうひとつ大きな理由がある。それはダート短距離のGI/JpnIがJBCスプリントしかなく、それを勝ってしまうと、その後は多くのレースで負担重量を課せられること。ダート2000m前後の路線ではGI/JpnIが年間を通じて中央・地方合わせていくつもあるのと対照的だ。さらに、JBCスプリントは開催場によってはコーナー4つの1400mになることも、純粋な短距離馬が長く大舞台で活躍することを難しくしている。JBCクラシックでは2連覇、3連覇の馬が複数いるのに対して、JBCスプリントを複数回勝った馬はスーニ(09、11年)しかいない。

 そんな限られたチャンスを生かしてダートスプリントチャンピオンとなったサブノジュニアには、種牡馬としての期待がかかることになった。浦河のイーストスタッドで繋養されるとのこと。

 父サウスヴィグラスは、長くダートの種牡馬ランキングでトップを争ってきたが、後継といえる種牡馬はきわめて少ない。今のところナムラタイタンの産駒ブンブンマルが名古屋の重賞を勝っている程度。サブノジュニアには、サウスヴィグラスの血を父系として後世に繋いでいく活躍も期待したい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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