2019年の朝日杯FSはサリオスが優勝した(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
阪神芝1600mでの施行となってから、今年で8年目となる朝日杯FS。過去7年の勝ち馬を見ると、このレース以降に再びGIを勝てた馬は現在のところアドマイヤマーズ1頭だけという事実に気付きます。リオンディーズやダノンプレミアム、サリオスなど、このレースを勝った直後には洋々たる前途が期待されていた馬がそろう中、意外と言えば意外なのではないでしょうか。
ちなみにこのレース1番人気で後にGIを勝てた馬も、2018年アドマイヤマーズと同年のグランアレグリア1頭だけ。将来性を占うという点においては、現状あまり参考になっていないレース。これが朝日杯FSの難しさと言えるのかも知れません。
2015年〜2017年にかけて「1800m以上のレースで勝利した実績を持つ馬」が3連勝した時期には、この実績こそが重要なのではないかと考えていた時期もありました。しかしそれ以降の3年間、2018年〜2020年は1800m以上のレースに出走したことのない馬が優勝。特に2020年などは1400mの実績しかなく、1600mで大敗していたグレナディアガーズが完勝してしまい、その思いも霧散することに。
むしろ重要なのは、最後までシッカリと末脚を伸ばす力、ラスト1ハロンの重要性だと認識させられて現在に至ります。たとえば過去7年の朝日杯FS出走馬を、下記のような区分で2つに分けてみましょう。
■1400m以上で、ラスト1F12秒0以下での勝ち鞍の有無
あり 72戦【7-7-6-52】勝率10% 複勝率28%
なし 43戦【0-0-1-42】勝率 0% 複勝率 2%
現在のところ、1400m以上の距離で、「ラスト1ハロン12秒0以下での勝ち鞍」を持たずに馬券に絡んだ馬は2019年3着のグランレイ、21頭中1頭だけなのです。それを踏まえて今年の朝日杯FS出走馬を見たところ、半数近くの7頭がこの要件を満たせていないことに気付きました。これらの馬は好走の望みが薄いと考えても良いはずで、まずはここが朝日杯FSの予想スタート地点となります。
■2021年朝日杯FS出走馬、1400m以上かつラスト1F12秒0以下での勝ち鞍の有無
アルナシーム ○
オタルエバー ○
カジュフェイス ×
シンリミテス ×
ジオグリフ ○
スプリットザシー ×
セッカチケーン ×
セリフォス ○
ダノンスコーピオン ○
トゥードジボン ×
トウシンマカオ ×
ドーブネ ○
ドウデュース ○
プルパレイ ○
ヴィアドロローサ ×
闇雲にデータだけを見るのではなく、まずは仮説を立てて、そこから裏付けとしてのデータ・リサーチ。ウマい馬券では、ここから更に踏み込んで朝日杯FSを解析していきます。印ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論にぜひご注目ください。
■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、『ラップギア』と『瞬発指数』を構築し、発表。2008年、単行本『タイム理論の新革命・ラップギア』の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。
1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。『ラップギア』は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。