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【再掲】快進撃は止まらない! オニャンコポン、偉大なる馬へ

  • 2022年01月15日(土) 18時02分
GIドキュメント

ホープフルSに挑むオニャンコポン(撮影:小金井邦祥)


※当記事は2021年12月21日配信分の再掲です
ホープフルSでGI制覇を目指すオニャンコポン(牡2、小島茂之厩舎)。愛らしい馬名とは裏腹に、レースでは力強い走りで2連勝。“かわいい”と“強い”の2つの顔を合わせ持つ人気者として、大一番に挑みます。同馬の素顔や期待のほどなど、管理する小島茂之調教師に色々と話を聞きました。

(取材・文=東京スポーツ・藤井真俊)

馬名の意味は「にゃんこ」じゃない!


──かわいい馬名で人気急上昇中のオニャンコポンですが、初めてその名前を聞いた時はどんな印象でしたか?

小島 第一印象としては、ふざけているのかな、と(笑)。それというのも当初は違う名前で登録される予定だったんですよね。しかも結構、普通の名前で(苦笑)。ただ田原(邦男)オーナーは、しっかりと考えて命名されるタイプなんですよね。そこで改めて馬名を調べると、アカン語で「偉大な者」という意味があるのだと。ほかにも西アフリカの「天空神」だとか、後になって漫画やゲームに登場するという話も聞いて、なるほどなと思っています。

──厩舎では何と呼ばれているのでしょう。

小島 呼ぶ人間や場面によってまちまちですね。“オニャンコポン”とフルで呼ぶこともありますし、“オニャンコ”とか“ポン”と略すこともあります。

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厩舎では“オニャンコ”や“ポン”と略されることも。(撮影:小金井邦祥)


──初めての出会いは?

小島 2019年セレクトセールの当歳セリの下見ですね。自分は1頭の上場馬に対して3回は事前に見に行くようにしていますので、その時です。

──印象は?

小島 ひょろっとした印象でしたね。自分のメモにも“細い”と書いてありました。ただ改めて見返すとウィークポイントも書いてはいなかったですね。

──セリでも狙っていた馬なのですか?

小島 いえいえ。エイシンフラッシュの子で気性的に難しいような印象がありましたし、母父のヴィクトワールピサも気持ちが穏やかな印象ではなかったので…。しかしそのセリで他に狙っていた馬が落とせなかったこともあって、田原オーナーが「行きましょう!」と。結果的にはリーズナブルな価格で買うことができて、田原さんは「いい買い物ができた」と満足そうにしていたのを覚えています。個人的には半信半疑だったのですが(笑)、このあたりはオーナーの“引きの強さ”なんでしょうね。

──田原邦男オーナーと言えば小島厩舎に初めてのGIタイトルをもたらしたブラックエンブレム(2008年秋華賞)など、深い縁がありますよね。

小島 そうですね。初めてクラシックに連れていってくれたのも田原オーナーのストラスアイラ(2005年皐月賞=14着)という馬でした。他にはプロレタリアト(4勝)もオニャンコポンのようにセリでいい買い物ができて、田原さんの“引きの強さ”を感じた馬でしたね。うまくいかないことがあっても辛抱してウチの厩舎に預け続けて下さって本当に感謝しています。

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ブラックエンブレムの秋華賞が、小島厩舎の初GIタイトル(C)netkeiba.com


──オニャンコポンが走りそうだという手応えはいつ頃から感じ始めましたか?

小島 北海道で育成してもらっていた頃はそれほどピンと来なかったのですが、山元トレセンに移動してきたあたりからいい評価を耳にするようになりました。

──実際に厩舎にやってきてからはどうでしたか?

小島 2歳にしてはバランスのいい馬だと思いましたね。大人しくて手がかかることもなく、すんなりゲート試験にもパスできました。そしてある時の追い切りで、ジョッキー騎乗の僚馬に対して、助手が乗って外からサーッと楽にいいタイムをマークした時に「これは!?」と思いました。

──血統背景から懸念されていた気性の難しさも問題なかったですか?

小島 ええ。しかし油断はしないようにしています。かつてウチの厩舎にいたエイシンフラッシュ産駒もそうだったのですが、1本の追い切りによるミスが引退まで引きずるようなこともありますからね。

この馬で大きなレースを勝てたら…


──レースでは見事に中山芝2000mの新馬戦を優勝。続く東京の百日草特別も勝って2戦2勝となりました。改めて振り返ってください。

小島 センスがありますよね。スタートからサッと好位につけていけるじゃないですか。ウチの馬は調教方針もあって、ある程度経験を積まないとなかなかああいう競馬はできないんですけどね。そして気持ちが前向きでいながら、追っての反応もいい。稽古で乗っている感じだとそう切れるイメージがないんですが、2戦ともしっかり伸びていましたよね。

──いい意味で調教の感触を裏切っている感じなんでしょうか?

小島 はい。正直、調教だけならウチの厩舎でもっと走りそうな馬は他にもいるんですよ。でも競馬に行くとオニャンコポンは違うんですよね。

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「競馬に行くとオニャンコポンは違う」(撮影:下野雄規)


──主戦の菅原明良騎手はこの馬について何と言っていますか?

小島 明良もいい感触を掴んでくれていますよ。デビュー前は追い切りに乗ってもらう予定がタイミングが合わず普通キャンターだけしか乗ってもらえなかったんです。でも本人に聞くと「もう大丈夫です。走るのは分かりましたから」と。本当かな…と少し疑っていたんですが(笑)、結果はご存じの通り。続く2戦目も自分としては“2着はあるかな”くらいだったんですが、彼は自信たっぷりに「ここでも通用しますから」と言って、やはり結果もその通りに。まだ20歳なのにすごい感性の持ち主だなと素直に思いましたね。

──この中間の気配は?

小島 山元トレセンから1か月くらい前に帰厩。直後に熱発してしまったのですが、そういうアクシデントが起こる可能性を考慮して早めに入厩させてもらっていたので問題はないですよ。その後は順調に乗り込んで、追い切りも消化できています。以前は顔つきも馬体も“まだまだ”という感じでしたが、ここにきて表情が凛々しくなって、体つきも随分と良くなってきました。

──それではホープフルSへ向けての抱負を聞かせてください。

小島 実は先日、社台ファームを訪ねた時に、事務所に飾ってある1枚の写真が目に入ったんです。エイシンフラッシュ(1着)とヴィクトワールピサ(3着)が映った2010年の日本ダービーのゴール前の写真でした。それを見て2頭に対する牧場の思いのようなものが伝わってきました。

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父エイシンフラッシュと母父ヴィクトワールピサ。かつてライバル同士だった(撮影:下野雄規)


 聞けばエイシンフラッシュ産駒はまだJRAの重賞を勝っていないそうなんですよね。そういう中でオニャンコポンはエイシンフラッシュの子で、母父がヴィクトワールピサ。お母さんのシャリオドールも社台ファームの生産です。きっとこの馬で大きなレースを勝てたら、たくさんの人が喜んでくれるんだろうなと思っています。まずは無事に。そのうえで力を出し切って、オニャンコポンにはいい走りを見せてもらいたいですね。

(文中敬称略)

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