2021年京都金杯(GIII)を制したケイデンスコール(提供:JRA)
一昨年、岩手の菅原勲調教師に、競走馬の名付けを託された。菅原厩舎に入厩する2歳の男馬で、エキストラエンドの初年度産駒だと言う。エキストラエンドというと、2014年の京都金杯(GIII)の勝ち馬。後方から馬と馬の間をすり抜けて、軽やかに突き抜けたことを覚えている。
エキストラエンドのお母さんは、フランスの名牝・カーリング。ディープインパクトとの間に生まれたエキストラエンドは、カーリングにとって最後の産駒となった。エキストラエンドという言葉は、「カーリングの延長戦」を意味するそう。そうか。“名牝カーリングが、母として戦う延長戦”ということか。なんて粋な発想なのだろう。
名付けを託された馬は、“カーリングの延長戦の延長戦”ということになる。そこをふまえて、“マツリダスティール”という名前に行きついた。マツリダは馬主の高橋オーナーの冠名で、スティール(スチール)はカーリング用語。カーリングで先攻時に得点することや、連続して得点する快挙を、スチールと言うそうだ。鋼(Steel)のように丈夫に育ってほしいという願いも込めた。
マツリダスティール・東京競馬場のパドック
エキストラエンドに感謝を伝えたい。京都金杯を勝ち、種牡馬入りの道を切り開いてくれて本当にありがとう。水沢競馬場で鍛えられたマツリダスティールは、芝でもダートでも重賞を制覇した。JRA遠征でも見せ場を作った。岩手競馬の看板を背負って、夢を見せてくれている。とびきりの延長戦。
今年の京都金杯(GIII)は、京都競馬場が改修工事中のため、昨年に続いて中京競馬場で開催される。昨年は12番人気のケイデンスコールが勝利し、3連単は120万馬券という大波乱となった。今年は、もし出走が叶うならば、4歳馬のヴィジュネルを狙いたい。2022年の京都金杯は、未来にどんな物語を描くのだろう。
2021年京都金杯のレースシーン(提供:JRA)
筆者プロフィール: 井上オークス
大学在学中にエッセイコンテストに応募したことをきっかけにライターとしてデビュー。現在は新聞、雑誌等での執筆活動を中心に多方面で活躍中。趣味は競馬で全国各地を飛びまわる「旅打ち」。