3月21日、大井「京浜盃」。サワライチバンが会心の逃げ切りで、クラシックへ前進した。同馬は内田博騎手と2度目のコンビ。抜群のスタートを決め、迷うことなくハナに立った。「2〜3番手からのイメージだったが、好枠(2番)であれだけポンと出てしまえばね。いい判断をしてくれました」(佐藤賢二調教師)。道中悠々とマイペースに持ち込み(1000m通過63.8秒)、直線GOサインが出るともう一度加速した。1.1/2馬身差。どこまで行ってもという脚いろで、数字以上に危なげなかった。前走浦和「しらさぎ賞」に続き重賞2勝目。

　強い、凄い…そういうインパクトは正直薄いが、1700m1分48秒2(良)なら、ごく客観的に通年レベル。トーシンブリザード、ナイキアディライト、さらにシーチャリオット、錚々たる勝ち馬が並ぶ「京浜盃」。だから漠然とした不満は、過去の歴史などこちらの思い入れが先行するせいかもしれない。サワライチバン。現時点で俊敏かつ逞しいレース巧者と納得する。父ロングニュートリノは、産駒9世代目で初の重賞ウィナーを出した。ただし自身、「東海大賞典」「名古屋大賞典」「サマーカップ」などを制した地方の名馬で、ヤエノムテキが勝った「天皇賞・秋」にも出走している。ノーザンテースト×スイーブ(エ女王杯・ロンググレイスの母)という血統背景。少し古いが、良血中の良血といえなくもない。

京浜盃(サラ3歳　定量　南関東G2　1700m　良)

△(1)サワライチバン　　　(55・内田博)　1分48秒2
▲(2)グッドストーン　　　(55・石崎駿)　　1.1/2
△(3)カネショウアトラス　(55・石崎隆)　　1
○(4)アタゴハヤブサ　　　(55・的場文)　　2
　(5)キョウエイジェイド　(55・真島)　　　1.1/2
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△(7)ソリッドマーカー　　(55・鈴木啓)
◎(8)キングトルネード　　(55・酒井)

単790円　馬複1,380円　馬単3,100円
3連複2,610円　3連単17,920円

　ともあれ、06南関東クラシックは混沌になりそうだ。何が最有力か。今回「京浜盃」、例年“結論”が出るべきところで、現場TM諸氏と意見交換しても、確たる結論が出てこない。難しい年だと思う。私的にいえば、この日先行馬ペースを2番手から伸びきれなかったグッドストーンあたり、やや脱落の感があった。しかし、「前(サワライチバン)を楽に行かせすぎた。(自分の)馬はよくなっていますよ」(石崎駿騎手)。

　そうジョッキーが強気なら、予想者はまた一つ考え直すことになる。「センスがよくて乗りやすい。走る雰囲気は十分ある」(カネショウアトラス＝石崎隆騎手)。「今日は出遅れを外から伸びた。砂をかぶりながら頑張ったのだから収穫は大きい」(的場文騎手)。おおむね次は…というニュアンスで、そうなると結局、賞金水準に達している馬、すべて脈あり、色気ありの情勢だろう。◎に推したキングトルネード。結果8着はふがいないが、スタートでトモ(後脚)を滑らせ、最後まで闘志に火がつかなかった。気性面に弱点を抱える馬。八木仁厩舎＝酒井忍騎手が、本番「羽田盃」(5月10日＝大井)へ向け、どう秘策を練っていくか。

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　3月25日、ドバイ国際競走。日本勢は何とも頼もしい結果を出した。最高峰「ワールドカップ」に挑んだカネヒキリこそ5着だったが、「シーマクラシック」、「ゴドルフィンマイル」で、ハーツクライ、ユートピアがそれぞれ優勝。「UAEダービー」、フラムドパシオンの3着健闘、さらに「ゴールデンシャヒーン」、アグネスジェダイ(金沢競馬・吉原寛人騎手が騎乗)6着も、米スプリンターの強さ(1〜5着まで独占)を思うと、文句なく胸が張れる。

　とりわけ地方競馬ファンを勇気づけたのは、ユートピアの勝利だろうか。同馬は南部杯2連覇をはじめマイル戦で確かに強いが、帝王賞、東京大賞典、JBCクラシックの戦歴など、絶対能力の点で、けっして“雲の上の存在”ではない。そのユートピアがあれだけやれる。あくまでタラレバ。しかし例えば昨年ワールドカップ6着のアジュディミツオー。一つハードルを下げて「ゴドルフィンマイル」出走なら、おそらく十分な勝機があった。

　地方馬にとって“世界”は遥か遠いもの――観念的には確かにそう。ただし、ユートピア優勝、その事実だけをストレートに受け止めるなら、ちらちら光明もみえてくる。前を向くこと、あきらめないこと。アジュディミツオー、そしてそれに続く馬たちがどう未来を切り開いていくか。まだまだ見守る価値はある…そう思う。