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欧州ハードル2マイル路線に新星現る

  • 2022年01月12日(水) 12時00分

無敗対決も実現しそうで例年以上に目が離せない


 欧州ハードル2マイル路線の、ノーヴィスハードラーたちの戦線が、面白いことになっている。8日(土曜日)にサンダウン競馬場で行われたのが、この路線のG1トルワースノーヴィスハードル(芝15F216y)で、ここでオッズ1.4倍の圧倒的1番人気に推されていたのが、ニッキー・ヘンダーソン厩舎のコンスティテューションヒル(セン5、父ブルーブレシル)だった。

 ハードルで2勝したクイーンオヴザステージの初仔として生まれたコンスティテューションヒル。昨年4月にティッペラリーのポイント・トゥ・ポイント競走を走り、2着になった後、5月にドンカスターで行われたゴフスUKスプリングセールに登場。ニッキー・ヘンダーソン師に、セッション4番目の高値となる12万ポンド(当時のレートで約1905万円)で購買されている。

 昨年12月4日にサンダウンで行われたノーヴィスハードル(芝15F216y)でハードルデビューし、ここを14馬身差で制し緒戦勝ちを果たしたコンスティテューションヒルにとって、2戦目となったのが8日のG1トルワースノーヴィスハードルだった。ハードル1戦1勝の馬がいきなりG1参戦かと、訝る方もおられると思うが、日本における平地の2歳戦を想起していただきたい。新馬で派手な勝ち方をした馬の次走がGIというのは、決して見られぬことではなく、実際に昨年12月のGI阪神ジュべナイルフィリーズには3頭、GI朝日杯フューチュリティSには1頭、GIホープフルSには3頭、前走新馬勝ちしただけという1戦1勝馬が出走していた。

 G1トルワースノーヴィスハードルにおけるコンスティテューションヒルには、課題が2つあった。1つは、降り続く雨で馬場がHeavy(=不良)となったこと。初戦の馬場がGood to Softだっただけに、騎乗した騎手たちが“ボトムレス”と形容した泥んこ馬場をこなせるかどうかは、大きな懸念材料だった。

 もう1つの課題は、初戦では10ストーン12ポンド(約68.9キロ)だった斤量が、ここでは11ストーン7ポンド(約73.0キロ)となったこと。他馬も同斤だったゆえ、有利不利を論じるわけではないが、前走から4キロ増で極悪馬場を走ることに、一抹の不安がないわけではなかったのである。

 そんな周囲の懸念を弾き飛ばすように、コンスティテューションヒルは圧勝した。前走レスターのノーヴィスハードル(芝20F110y)を制しハードル2勝目をあげての参戦だったジェトワール(セン7、父ジェレミー、15倍の4番人気)の逃げを、道中は2番手で追走。7号障害手前でジェトワールを交わして先頭に立つと、鞍上ニコ・デ・ボインヴィルが軽く気合をつける程度で、最後はジェトワールに12馬身差をつける楽勝となった。

 同馬を管理するニッキー・ヘンダーソン調教師は、このレース最多勝となる6勝目を挙げたが、サンダウン競馬場に同師の姿はなかった。実は、前日にコロナウイルスに感染していることが発覚。症状は軽いものの、自宅隔離となったため、この日はテレビ観戦となったのだ。レース後の電話取材に応えてヘンダーソン師は、この後のコンスティテューションヒルが、チェルトナム・フェスティヴァル初日(3月15日)のG1シュプリームノーヴィスハードル(芝16F87y)に直行する予定であることを明らかにしている。この結果を受け、ブックメーカー各社は同競走に向けた前売りで、コンスティテューションヒルのオッズを3倍前後にカット。各社横並びで1番人気に浮上させている。

 それでは、G1シュプリームノーヴィスハードルにおけるコンスティテューションヒルは抜けた人気になっているのかと言えば、さにあらず。3.5倍から4.0倍という、差のない2番人気に推されているのが、ジョンボン(セン6、父ウォークインザパーク)だ。そして、このジョンボンを管理しているのも、ニッキー・ヘンダーソンなのである。

 仏国産馬で、ポイント・トゥ・ポイント競走で1戦1勝の成績を残した後、ゴフスUKノヴェンバーセールに上場され、大馬主のJ.P.マクマナス氏にセッション最高値となる57万ポンド(当時のレートで約8176万円)で購買されたのがジョンボンだ。ナショナルハントフラットで1戦1勝の成績を残した後、今季に入ってハードルデビュー。11月26日にニューバリーで行われたメイドンハードル(芝16F69y)を6馬身差で制し、ハードル初戦を白星で飾ると、12月17日にアスコットで行われたG2ケネルゲートノーヴィスハードル(芝15F152y)に出走。ここも2.3/4馬身差で制し、重賞初制覇を果たした。

 すなわち、コンスティテューションヒル同様にジョンボンもまた、ここまで負け知らずで来ているのだ。ジョンボンは、1月22日にヘイドックで行われるG2ロシントンメインハードル(芝15F144y)か、2月5日にサンダウンで行われるLRコンテンダースハードル(芝15F216y)を使って、チェルトナム・フェスティヴァルに向かう予定だ。3月15日のG1シュプリームノーヴィスハードルは、例年以上に目の離せない戦いになりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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