単勝オッズ5.6倍(3番人気)のヨーホーレイクが優勝(c)netkeiba.com
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
別定競走らしく超人気薄の好走例は少ないレース
AIマスターM(以下、M) 先週は日経新春杯が行われ、単勝オッズ5.6倍(3番人気)のヨーホーレイクが優勝を果たしました。
伊吹 鞍上の川田将雅騎手にとっては、会心の勝利だったのではないでしょうか。道中は中団を進み、向正面から先は単勝オッズ1.8倍(1番人気)の支持を集めていたステラヴェローチェが視界のすぐ先にいる形。ほぼ同じコース取りで3〜4コーナーを通過し、ゴール前の直線で難なくかわし切りました。
M 負担重量に2kgの差があったとはいえ、着差(3/4馬身)以上の完勝だったように思います。
伊吹 その通りですね。ステラヴェローチェも相当に強い競馬をしているのですが、あの形になってしまったら為す術がありません。
M ヨーホーレイクは重賞初制覇。全兄のボレアスは2011年のレパードSを、同じく全兄のカミノタサハラは2013年の弥生賞を制しています。
伊吹 母のクロウキャニオンは本当に偉大な繁殖牝馬ですよね。2007年から15年連続で仔を産んでおり、現在のところデビューした13頭すべてがJRAのレースを勝ち上がっています。
M 仔出しの良さだけでも十分に凄いのですが、全馬が無事にデビューし、しかも勝ち上がりを果たしているというのは驚異的ですね。
伊吹 さらに言うと、13頭のうち12頭はJRAの重賞・オープン特別に出走した経験がある馬、そのうち8頭はJRAの重賞・オープン特別で3着以内となった経験がある馬。現3歳のダンテスヴューも昨年の東京スポーツ杯2歳Sで4着に健闘しました。ブラックタイドを父に持つ現2歳と現1歳の産駒も楽しみです。
M ちなみに、日経新春杯は3着が単勝オッズ46.3倍(9番人気)のヤシャマル、そして4着が単勝オッズ92.3倍(13番人気)のエフェクトオンでした。
伊吹 先週の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名していたエフェクトオン、本当に惜しかったですね。実は私も、最終的な◎はこの馬でした。ゴールの直前でヤシャマルに差し返されてしまった瞬間はさすがに声が出ましたし、実はまだちょっと立ち直れていません……(笑)。まぁ、馬はよく頑張ってくれたと思います。
M 今週の日曜中山メインレースは、芝中長距離路線の古豪が集結するAJCC。昨年は単勝オッズ2.4倍(1番人気)のアリストテレスが優勝を果たしました。
伊吹 強かったですね。不良馬場をものともせず、ゴール前の直線半ばで早々に先頭を捉え、そのまま後続の追撃を振り切りました。C.ルメール騎手の巧みな手綱捌きも、それに応えたアリストテレスの走りも、それぞれ高く評価できる内容だったと思います。
M 別定競走ということもあり、どちらかと言えば堅く収まりがちな印象です。
伊吹 たしかに、人気薄の馬が上位に食い込んだ例はそれほど多くありません。
M 上位人気馬がそれなりに優秀な好走率をマークしている一方、単勝7番人気以下の馬は苦戦していますね。
伊吹 さらに細かく見てみると、単勝8番人気以下の馬は2012年以降[0-1-1-68]でした。基本的には上位人気グループの馬を重視すべきだと思います。
M そんなAJCCでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ソッサスブレイです。
伊吹 これはまた凄いところを狙ってきましたね。最終的なメンバー構成にもよりますが、おそらく単勝8番人気以下でしょう。
M 前走のディセンバーSで3着に健闘しましたが、JRAの重賞では今のところ12着が最高。2021年のAJCCでも16着に敗れています。上位人気に支持される可能性はほとんどなさそうです。
伊吹 このくらいの人気薄で、なおかつAiエスケープが高く評価しているのならば、多少の不安要素には目を瞑って良さそう。レースの傾向と照らし合わせながら、好走確率を見積もっていきましょう。
M 強調材料のひとつと考えられるのは、前走好走馬である点です。
伊吹 これは素直に高く評価して良いと思います。2015年以降の過去7年に限ると、ノーザンファーム生産馬を除く前走5着以下の馬は苦戦していました。
M はっきりと明暗が分かれていますね。
伊吹 単純に前走好走馬が優勢とは言えないものの、好調であるに越したことはありません。
M 明け8歳である点はいかがでしょう。
伊吹 この点に関しては、さすがにちょっと評価を下げるべきだと思います。高齢馬が穴をあけた例もあるとはいえ、馬齢が7歳以上の馬は2017年以降[0-0-1-23](3着内率4.2%)。そもそも、近年は極端にキャリアの浅い馬が優勢です。
M キャリア11戦以内の馬は3着内率が6割超。今年も該当馬がいますし、この傾向は無視できませんね。
伊吹 ちなみに、出走数が12戦以上、かつ“前年以降、かつJRA、かつGI・GIIのレース”において“着順が4着以内、かつ4コーナー通過順が4番手以内”となった経験のない馬は2017年以降[0-0-1-40](3着内率2.4%)でした。極端にキャリアの浅い馬、そして実績ある先行馬を重視すべきレースと言えます。
M ソッサスブレイはまだ重賞で善戦したことのない馬。実績馬との力関係がポイントになりそうです。
伊吹 おっしゃる通り。前年のビッグレースを使っていた馬の方が信頼できるレースでもありますし、実績面に不安がある点を踏まえたうえで、最終的な評価を下すべきでしょう。
M なるほど。お話を伺う限りだと、伊吹さんはあまり魅力を感じていないようですが……。
伊吹 ただ、Aiエスケープが注目馬に挙げてきたということは、戦歴のどこかに能力の高さを担保するようなポイントが隠れているのかもしれません。もともと、場合によってはシルシを回そうと考えていたので、枠順やオッズも加味しつつ、もう少しじっくり取捨を検討します。