▲シルクロードSで重賞初制覇を狙うカレンモエ(ユーザー提供:だしまきさん)
父ロードカナロア、母カレンチャンと、ともに安田隆行厩舎で短距離GIを制覇した両親を持つカレンモエ。両親と同じ厩舎に入り、重賞では3戦続けて2着と、タイトルまであと一歩の走りを見せています。
現在、担当する臼井晃調教助手は、両親の現役時代を近くで見てきた一人。「カレンチャンと成長過程が似ていて、体もガッチリしてきました」と成長ぶりを話します。
母娘を所有するオーナーが贈ったピンクのメンコを着け、「何とか今年、タイトルを1つ獲らせてあげたい」と陣営が願うカレンモエについて、30日のシルクロードSを前に臼井調教助手に伺いました。
(取材・構成=大恵陽子)
※このインタビューは電話取材で行いました
「モエちゃん」というより「モエさん」な素顔
――カレンモエは父ロードカナロア、母カレンチャンとGI馬。4歳はじめまでは両親も担当した岩本龍治調教助手が担当していましたが、その後、引き継いだそうですね。
臼井晃調教助手(以下、臼井) 一昨年の2月くらいから担当しています。
――両親ともに同じ安田隆行厩舎でしたから、臼井調教助手も両親の現役時代を近くで見てきたかと思います。
臼井 そうですね、近くで見てきた経験は大きいです。お父さんのロードカナロアもお母さんのカレンチャンも早い時期から活躍はしていましたけど、カレンチャンは古馬になるにつれてムチッとした体になってきた印象があって、カレンモエはお母さんと成長過程がすごく似ているなと思います。3歳の頃に比べると横幅がだんだん出てきたように感じます。
――2勝クラスを勝った頃から担当しているとのことですが、昇級初戦でいきなり2着。スタートの速さはクラスが上がっても光っていましたね。
臼井 そこは武器なのかなと思います。スタートとレースセンスがいいですよね。ゴール直前にちょっと差されることが多いですけど(苦笑)。
▲スタートとレースセンスは最大の武器!(ユーザー提供:forderさん)
――オープン入り初戦となったGIII・京阪杯がまさにそうで、直線で先頭に立ちましたが、ゴール直前に差され、クビ差2着でした。
臼井 最後まで一生懸命走っているんですけど、ラストはちょっと脚が上がっているのかなと感じます。チャンスはありますし、いい競馬をしているんですけど、もうひと押しという感じですね。前走のセントウルSも直線に向いた時は一瞬、「うわー!」と思いましたけど、最後はいつものような感じで少し止まってしまいました。そこが課題かなと思います。
――20年の京阪杯、21年オーシャンステークスと函館スプリントステークスと、重賞で2着3回。いずれも僅差なだけに、悔しさも大きいのではないですか?
臼井 一生懸命走ってくれているので、いつも「よく頑張って走ったね」という思いが大きいです。悔しさはありますけど、デビュー前に入厩した時から元々硬さのある馬で、安田調教師も「無理せず、成長に合わせて使おう」と話していました。はじめの頃に比べると、この馬なりにしっかりしてきました。
――大切にされてきたんですね。馬房では普段、どんな様子ですか?
臼井 意外と素っ気ないんですよ。「モエちゃ〜ん」というより、「モエさん」という感じで、撫でていてもスンッてしています。嫌がってはいないんですけど、自分の世界を持っています。お母さんのカレンチャンは人間に警戒心がなくて、甘えてくる感じでしたけど、そこは違いますね。
――カレンモエという名前から、可愛く甘えてくる感じなのかなと思ったら、意外とクールな女子なんですね。パドックで着けているピンクのメンコが可愛いですが、パドックや返し馬などでの様子はどうですか?
臼井 安田厩舎は黒いメンコなんですけど、ピンクのメンコはオーナーが作ってくださいました。トレセンにいる時と違って、競馬場に行くと気持ちが入って、歩様が良くなります。
▲意外とクールな性格のカレンモエ、ピンクのメンコはオーナー特製(ユーザー提供:ビスタKEISUKEさん)
今年はどこかでタイトルを...!
――さて、昨秋はスプリンターズステークスへの出走が予定されていましたが、左肩の捻挫のため回避しました。
臼井 その後、年末の京阪杯に使う話も挙がったんですけど、歩様の硬さが取れなくて、そこも見送ったのですが、牧場がすごく良くケアをしてくれて、とてもいい状態で今回帰厩しました。元々硬さのある馬なので1戦毎のダメージが他の馬よりも大きいと思うんですけど、しっかりケアをして状態を上げて戻してくれるので、成績もいいのだと思います。
――30日のシルクロードステークスに向けては20日に坂路で1週前追い切りを行い、4F49.8秒-11.9秒と、速い時計を出しました。
臼井 時計は元々、出るタイプです。前走のセントウルS前も坂路で併せ馬をしたんですけど、負荷のかかり方が少し緩いかなと感じたので、追い切りに乗った斎藤新騎手に「もっとキツめのことをしようか」と話して、この時計でした。1週前追い切りを経て素軽さが出るのがいつものパターンなので、当週はもっとスッと動けるようになっているんじゃないかなと思います。
――今回のシルクロードSも楽しみですし、その先の高松宮記念を楽しみにしているファンの方も多いのではないかなと思います。2012年の高松宮記念はお母さんのカレンチャンが勝ち、お父さんのロードカナロアは3着と、両親が戦ったGIの舞台でもあります。
臼井 ローテーションはオーナーや先生が決めることなので分かりませんが、僕は目の前の1戦にしっかり向き合って、今年一年、どこかで1つ重賞タイトルを獲らせてあげたいなと思っています。去年もそういう話をしていて、その先にGI出走があればいいなと思います。
――念願のタイトルが今回のシルクロードSだといいですね。
臼井 僕が担当しはじめてからでも、体重は大きく変わらないですけど、体がガッチリした感じが出てきています。いつも一生懸命走ってくれる馬ですし、この血統なので、1つでも多く勝てるように応援してもらえると嬉しいです。
▲今年こそは念願のタイトルを!(ユーザー提供:ペコ1892さん)
(文中敬称略)