2018年の国際招待試合にて、5番がゼッケンが西島さん(提供:日本ホースボール協会)
国際招待試合で最優秀人馬賞に
西島さんはその後もホースボール修行に、何度もポルトガルを訪れることになる。5回目のポルトガルとなった2018年には、国際招待試合に出場している。
「世界中から招待された20人の選手で抽選をしてMIXチームを作り、3試合を行い勝ち点を競う形でした。女性選手もいましたが、実力差は感じないですね」
西島さんはチームのキャプテンに選ばれ、貸与馬の質も高かった。結果、西島さんのチームは優勝し、自身も出場した選手の意見と投票により選出される最優秀人馬賞を受賞している。だが試合ではアシストはあったものの、ゴールを決めたわけではなかった。
「体調も含めて僕自身の体が出来上がっていたわけではなかったですし正直プレーで活躍できたとは思っていません。試合中、相手チームの馬が怪我をした際に、真っ先に治療に奔走したこともあり、それも含めて印象が良く目立ったのだと思います。プレーだけなら他のメンバーが妥当だったでしょうが『大会全体を通しいろいろ目立って沸かせたのはタカシだ』と、ホースボール連盟のカナス会長から言われました」
「運が良かった」と西島さんは謙遜するが、周囲の選手や会長の心を動かす何かが西島さんにはあったのだろう。
「僕の日本での練習の質と量では、プレー自体で活躍することはできないのはわかっていましたので、大会を楽しくする、皆が喜ぶように行動することを1番意識しました。それが皆の目に留まったのだろうと思います」
西島さん自身も、当時をこう振り返った。
度重なるポルトガル留学で経験を積みながら日本でも活動を続けてきた西島さんだが、資金面や拠点がなかなか定まらないなど数々苦労があった。ある乗馬施設ではホースボールができる馬を調教してホースボールをやってみたい人を募集してみたが、ほとんど集まらなかったという経験もした。それでも西島さんはホースボールを諦めずに続けてきた。現在は千葉県富里の牧場敷地内に落ち着き、4頭の馬が日本ホースボール協会所有となっている。この4頭について、西島さんの短評を。
マルヨシャバーリー
ロージズインメイ産駒、マルヨシャバーリー(提供:日本ホースボール協会)
「軽くて初動が良いです。操縦性も良いので初心者にも喜ばれる馬です。駈歩発進も簡単に出てくれるので、駈歩の練習でも評判が良いですね。栗毛らしく愛嬌があって人懐っこいですし、可愛がられるタイプです」
チャンピオンゴッド
マーベラスサンデー産駒、チャンピオンゴッド(提供:日本ホースボール協会)
「競走馬時代を知っている人がたまたま近くにいて、その人にどんな子でしたと聞いたら開口一番ふてぶてしいというふうに言われて、めっちゃわかるわ(笑)と。良い意味ですごく賢いですね。例えば何かに驚いたのをきっかけに人を試すとか、練習していても隙あらば好き勝手にしようとしたり。スピードと体力とパワーがあるので、ずっと走り続けてくれる馬です。父のマーベラスサンデーの現役時代の走りのイメージですね。うまく動かすことさえできれば、ホースボールをしやすい馬だと思います」
ジュフォン
ジュフォンの同級生は…(提供:日本ホースボール協会)
「いい感じにとぼけています。コントレイルやディープボンドなどの名馬とノースヒルズさんで同級生なんです。駈歩のリズムは持ってうまれたものだなと思いますし、普通は前に体重がかかりやすいと思うのですが、この馬は後ろ脚に体重が乗りやすくホースボール向きだと思います。コントレイルやディープボンドとは違うホースボールという道で頑張ってほしいです」
ペガサスエース
サンライズペガサス産駒のペガサスエース(提供:日本ホースボール協会)
「ちょうど1頭増やしたいと思った時に縁があった馬です。なかなか太りづらいところがあって、元々故障を抱えています。なので馬の片方に体を落としてボールを拾う動作は、この馬ではやらないことにしています。ただそういう馬でもできる練習はあるので、その馬の得意な練習をするようにしています。そういう馬で練習することによって、乗る人にも幅が出ますし、どんな馬にも乗れるようになると思うんです。このことはホースボールには必須でもありますしね」
西島さんがかつて勤めていた乗馬クラブは、所有馬をなるべく屠畜にまわさない方針で運営されていたという。
「その馬ができることに限定したレッスンをするなど、どんな馬でも生きる道を作るというのがすごくいいなと思っていました」
故障を抱えたペガサスエースもホースボール練習馬として活かしていく。以前の勤務先で得たことが今に繋がっているといってもいいだろう。
今年の最大のイベントは8月にフランス・ノルマンディー地方のサン・ローで開催されるワールドカップへの参加だ。(日本代表選手候補、協賛スポンサー募集中)
「昨年、一昨年よりも、メンバーの質も整ってきています」
だがまだ世界のレベルには届かないのも、西島さんは十分過ぎるほど実感している。
「ですから優勝を狙うというのではなく、メンバーには世界を肌で感じてもらいたいです。そうすることで、自分に足りないものが見えてくるでしょうし、ホースボールを続けていくのかも含めてこの先の方向性を決めてほしいと思っています」※日本チームは、貸与馬で参加。
ホースボールが日本でもっと普及すれば、ホースボール練習馬という引退競走馬の選択肢が1つ増えることになる。
ホースボールが日本でもっと普及すれば、引退競走馬の選択肢も増える(提供:日本ホースボール協会)
「ホースボールは本当に面白いので、ワールドカップをきっかけに知ってもらえればと思います。このスポーツを広めるほど馬に乗るレベルの底上げができて、馬を生かしていく方法も底上げできる、そして世の中がもっとよくなるという確信めいたものがあります」
ワールドカップが無事開催され、ホースボールが認知されるよう、そして引退競走馬の活躍の場が増えるよう、今後の動きに注目していきたい。
(了)
▽ 日本ホースボール協会 HP
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