脚質に幅を増した現在なら、1600mをこなして不思議ない

根岸Sで勝利したテイエムサウスダン(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
逃げ宣言のリアンヴェリテ(父ゴールドアリュール)はいたが、果敢に飛ばしたのは伏兵ジャスティン(父オルフェーヴル)。「前半34秒4-46秒2-(1000m通過58秒2→)」のハイペースとなった。これはサウスヴィグラスが勝った2002年の「34秒4-46秒2-(1000m通過58秒1→)」と前半4ハロンはまったく同じ。この時期の東京ダート1400mで行われた根岸S史上2位タイの厳しい流れだった。
勝ったのは、タフな種牡馬サウスヴィグラス(父エンドスウィープ)産駒の5歳テイエムサウスダン。厳しい流れをいつものように先行せず、中団でうまく折り合い、自己最高の554キロの馬体から繰り出すパワーあふれるフットワークで抜け出した。
この根岸Sを2勝(2002、2003年は1200m)した父サウスヴィグラスは、ここまでダート中心の公営の種牡馬ランキングトップになること8回(2012、2015-2021年)。きわめてタフな名種牡馬で、全国で記録した勝利数は日本の競馬史上空前の5019勝(1月30日終了現在)に達している。
テイエムサウスダンの勝利は父と同じように交流レースのものが多く、1分22秒台になっては難しいかと思えたが、乾燥したダートで勝ち時計は1分23秒1(自身の最高時計とほぼ同じ)。全体にタイムがかかってタフなレースになったのが有利だった。また、これでベストの距離ダート1400mで8勝目となった。1600mは【0-0-0-2】だが、経験が少ないだけで脚質に幅を増した現在なら、こなして不思議ない。
今回の勝利でフォーティナイナー(父Mr.Prospector)直父系種牡馬の産駒は、サウスヴィグラス(2勝)、テイエムサウスダン、ノンコノユメなど、この根岸S7勝となった。
サウスヴィグラスの後継種牡馬は、サブノジュニア、スパロービート、ナムラタイタン…などごく少ない。グレードレース計5勝となったテイエムサウスダンには種牡馬の道が開けた。ファミリーの代表馬には名種牡馬Smart Strikeスマートストライクがいる。
2着ヘリオス(父オルフェーヴル)は、ハイペースの展開を読んで意識的に好位差しを狙った位置取り。このペースを先団で追走しながら追って伸びたから立派。テイエムサウスダンと同じように1600mはギリギリと思えるが、一段と脚質に幅を増したので、フェブラリーS出走でも侮れない。オルフェーヴル産駒で、母の父フレンチデピュティ。大仕事をしたマルシュロレーヌと同じ配合になる。
3着タガノビューティー(父ヘニーヒューズ)は、前半最後方追走。レース上がりが36秒9に落ち込む絶好の展開になり、直線一気に伸びてきたが、ゴール寸前に同じ脚勢になってしまった。ハイペースだったとはいえ、ちょっと置かれすぎてスパートのタイミングが合わなかったのかもしれない。
このペースで4着に粘ったジャスティン(父オルフェーヴル)は、海外遠征の凡走などで近走は目立たなかったが、この馬はタフ。このハイペースで行って寸前まで粘った。1200mならトップクラスのスピード能力をみせた。1200m通過は1分10秒4。
人気のソリストサンダー(父トビーズコーナー)は、余力を残して直線に向いたようにみえたが、1400mがきびしかったというより、テイエムサウスダンをマークする位置にいたが、狙った場所に馬群が生じ、コース選択に悔いが残った印象がある。最後まで馬群をさばくことができず、外から差し切った武蔵野Sのように持ち味発揮といかなかった。フェブラリーSで巻き返したいが、必ずしもマイルがベストとはいえない馬だけに、評価は分かれるだろう。
出負けして6着のタイムフライヤー(父ハーツクライ)はもう7歳なのでさらに上昇は難しいかもしれないが、前2戦とは体つきも、気配も一変。今回は直線に向いたところで寄られて狭くなり、スパートが遅れている。フェブラリーS出走なら侮れない。
オメガレインボー(父アイルハヴアナザー)は、巧みなコース取りで能力を出し切っていたと思える。ゴール前はまだ伸びていた。ただ、成績通り乾いたダートではなく、締まって時計の速いコンディションの方が、より切れが生きるタイプだろう。
公営のモジアナフレイバー(父バトルプラン)はスタートダッシュもう一歩。直線は苦しい位置から馬群を割って伸びている。1400mは距離不足だった。2020年の南部杯1分33秒0(上がり35秒3)の3着があり、1600mならJRA勢と差はない。