スマートフォン版へ

大きな期待集まる昨年の欧州2歳王者ネイティヴトレイル

  • 2022年02月09日(水) 12時00分

牝馬で115を獲得したインスパイラルとテネブリズムは評価してしかるべき


 いささか旧聞に属するが、2021年ワールドサラブレッドランキングの翌日に発表された、ヨーロッパの2歳ランキングを考察したい。

 首位に立ったのは、チャーリー・アップルビー厩舎のネイティヴトレイル(牡、父オアシスドリーム)で、レイティングは122だった。

 G1スプリントC(芝6F)勝ち馬アフリカンローズの甥にあたり、タタソールズ・クレイヴン2歳トレーニングセールにて21万ギニー(当時のレートで約3408万円)でゴドルフィンに購買されたのがネイティヴトレイルだ。

 昨年6月11日にサンダウンのメイドン(芝7F)でデビューし、ここを4馬身差で制して初戦勝ちを飾ると、続いて出走した7月10日にニューマーケットで行われたG2スパーラティヴS(芝7F)を短頭差でモノにして重賞初制覇。続いて9月12日にカラで行われたG1ナショナルS(芝7F)に駒を進め、ここを3.1/2馬身差で快勝してG1初制覇。

 さらに、10月9日にニューマーケットで行われたG1デューハーストS(芝7F)も2馬身差で制し、4戦無敗の成績で2歳シーズンを終えている。

 前年(2020年)のヨーロッパ2歳ランキングの首位は、G1デューハーストSを3/4馬身差で制していたセントマークスバシリカで、レイティングは120だったから、これよりは2ポンド上という評価だ。セントマークスバシリカと言えば、3歳となった2021年はG1ばかり4戦し、無敗の4連勝を飾って欧州年度代表馬に選出されている。3冠初戦となるG1二千ギニー(芝8F)へ向けた前売りで、ブックメーカー各社がオッズ3.5倍から4倍のオッズを掲げて横並びで1番人気に推しているように、2022年のネイティヴトレイルにも、極めて大きな期待が寄せられている。

 もっとも、もう少し長いスパンで捉えると、ネイティヴトレイルの122というのは、決して高い評価とは言えない。2001年から2020までの20年間に誕生した、20頭の欧州2歳チャンピオンの平均レイティングは123.25で、ネイティヴトレイルの評価は平均以下。

 2歳チャンピオンのレイティングが彼よりも低かった年は、2003年(バゴ121)、2011年(キャメロットとダビルシム119)、2014年(ベラード119)、2020年(セントマークスバシリカ120)の4回しかないのである。

 そして、2021年欧州2歳ランキングの第2位は、レイティング115で、実に7頭が横並びという評価になった。すなわち、首位の評価がそれほど高くないにもかかわらず、首位と2位との間に7ポンドもの大きな隔たりが出来、ネイティヴトレイルの「1強状態」が形成されているのだ。例えば2019年に、首位のピナトゥボと2位のアースライトとカメコの間に、10ポンドもの差がついたことがあったが、それは、G1ナショナルSを9馬身差で制したピナトゥボに128という、今世紀の2歳馬としては最高値が付いたゆえだった。

 別の言い方をすれば、2位のレイティングが115という、2021年の数字が極めて低いのだ。これは、3頭が117で横並びの2位だった2011年を下回る、近年で最も低い評価となっている。

 そんな中、相応に評価してしかるべきは、牝馬ながら115を獲得し、2歳全体で2位タイとなったインスパイラルとテネブリズムの2頭だろう。インスパイラル(牝、父フランケル)は、チーヴァリーパークスタッドの自家生産馬。G1英千ギニー(芝8F)2着馬スタースコープの4番仔となる。ジョンとセイディ・ゴスデン厩舎から、2歳6月にデビュー。ニューマーケットのメイドン(芝7F)を制して初戦勝ちを飾ると、続くサンダウンのLRスターS(芝7F)を3.1/2馬身差で制し2連勝。さらに、ドンカスターのG2メイヒルS(芝8F)を3.3/4馬身差で制して重賞初制覇を果たすと、2歳最終戦となったニューマーケットのG1フィリーズマイル(芝8F)を2.1/2馬身差で制し、4連勝でG1制覇を果している。

 一方、愛国のエイダン・オブライエンが管理するのがテネブリズム(牝、父カラヴァッジョ)だ。G1コロネーションS(芝7F213y)、G1ジャックマロワ賞(芝1600m)と、マイルG1を2勝した母イモータルヴァーズの4番仔となる。芝平地シーズンが開幕した直後の昨年3月28日にデビュー。ナースのメイドン(5F)を3.3/4馬身差で制し初戦勝ちを飾った後は、小さな故障が重なり半年にわたって戦線を離脱。

 復帰戦となったのが、9月25日にニューマーケットで行われたG1チーヴァリーパークS(芝6F)で、出遅れて馬群最後方を追走した後、残り2Fを切ってから目の覚めるような末脚を繰り出して優勝。2連勝でG1制覇を果している。

 牝馬3冠初戦のG1英千ギニーへ向けた前売りでは、インスパイラルが3.5倍〜4倍のオッズで1番人気。テネブリズムが7〜8倍のオッズで2番人気となっている。 

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング