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【共同通信杯】ダービー候補の1番手に近い迫力満点の内容

  • 2022年02月14日(月) 18時00分

牡馬のクラシック路線の勢力図はきわめて流動的


 1着、2着した馬の中から、過去10年間で5頭もの皐月賞馬が誕生している最重要ステップの共同通信杯を制したのは、ここが2戦目の3番人気馬ダノンベルーガ(父ハーツクライ)。2着がジオグリフ(父ドレフォン)だった。

 2歳終盤からのクラシックと結びつく重賞レースの勝ち馬は、

▽東京スポーツ杯2歳S…イクイノックス(1番人気)
▽京都2歳S…ジャスティンロック(5番人気)
▽朝日杯FS…ドウデュース(3番人気)
▽ホープフルS…キラーアビリティ(2番人気)
▽シンザン記念…マテンロウオリオン(4番人気)
▽京成杯…オニャンコポン(6番人気)
▽きさらぎ賞…マテンロウレオ(2番人気)
▽共同通信杯…ダノンベルーガ(3番人気)

 11月にイクイノックスが高い支持を受けて勝ったあと、人気の中心馬は7連敗している。また、今年のJRA重賞は1番人気馬がまだ未勝利。目下16連敗中。

 それだけでなく、候補イクイノックスは間に合っても2歳11月以来のクラシック挑戦になる可能性が高く、近年、成功例はあるがキラーアビリティも12月から直行とされる。

 今回、快勝したダノンベルーガも右トモをケアしながらの出走だったので、皐月賞に直行か、あるいは中山戦は回避して、日本ダービー直行か、現時点では不明。

 共同通信杯を2着したジオグリフも、2着するくらいだから現在は悪くなってはいないが、ノド鳴りの死角があり、2000m→2400mの距離延長は歓迎ではないと思える。

 牡馬のクラシック路線の勢力図は、このあと3月の「弥生賞」「スプリングS」「毎日杯」が終了し、有力馬の挑戦するレースが決定するまで、きわめて流動的になる。

 2歳戦が実施されるようになった1946年以降、皐月賞を最少キャリア3戦で制した馬は「2021年エフフォーリア、2020年コントレイル」など史上13頭もいるが、2戦だけの馬はいない。日本ダービーは1996年にフサイチコンコルドがわずか2戦、2021年シャフリヤールが3戦の戦績で勝ったが、これに続くのは2005年のディープインパクトなど6頭のキャリア4戦であり、2-3戦はかなり厳しい。

 共同通信杯を勝ったダノンベルーガは、これで2戦2勝。2015年のリアルスティールと並ぶ最少キャリアタイ記録だった。リアルスティールは、浅いキャリアを考慮して3戦目にスプリングS2着。「皐月賞2着→日本ダービー4着」だった。

 ダノンベルーガは、速くはない流れ「前半800m48秒6-(1000m通過61秒1)-後半800m46秒8」に、中団で1番人気のジオグリフ(ルメール騎手)をマークして進む正攻法。そこから上がり最速の33秒7でまとめ、2着以下を1馬身半離す完勝だった。

 スローな流れと、稍重馬場のため1分47秒9の勝ち時計は速くはないが、迫力満点。東京1800m、新馬の東京2000mをともに上がり33秒台で快勝したことにより、皐月賞出走は未定でも、日本ダービー候補の1番手に近い。

 2着ジオグリフはこの距離で、ゆるい流れになったので無理なく好位につけられた。直線、ちょっと狭いところに入る場面はあったが、割って伸びたから、1800m〜2000mならレースがしやすいのだろう。ただ、追い比べで外から猛然と伸びたダノンベルーガに迫力負けの印象はぬぐえない。レース前のパドックではずっとチャカチャカし通し。馬体はしっかりしていたが、馬体重のわりに身体がこじんまり映った印象もある。

 何より心配なのはノドの疾患。これだけのレースができるのだから、現在は大きな影響はないのだろうが、気にする(苦しさを訴える)ようになった時には、確実に能力減に結びつく。

 スローのマイペースに持ち込んだビーアストニッシド(父アメリカンペイトリオット)が粘って3着。展開に恵まれたのは事実だが、東京1800mの共同通信杯で3着にがんばったのだから、先行スピードは評価しなければならない。

 父はダンチヒ系のマイラーは確かでも、フォーティナイナー系と同じで、ダンチヒの父系はこなせる距離の幅を広げる馬が出現したから発展しているのであり、今後も展開注目馬だろう。祖母の半兄にはタフなことで知られたブルーコンコルド(通算15勝)がいる。

 4着ジュンブロッサム(父ワールドエース)は、プラス18キロ。休養で大きく成長していたのは間違いないが、今回は全体にちょっと余裕があった印象がある。そのため仕掛けての反応は鈍かったが、坂を上がってからのフットワークは実に良かった。

 5着アサヒ(父カレンブラックヒル)は、休み明けだった3走前と同じく出遅れ。おとなしいというより、ちょっと気合不足だったのが出遅れの原因だろう。使って良化型の成績なので、次回の巻き返しがある。上がりは勝ち馬と互角の33秒8だった。

 4番人気のダノンスコーピオン(父ロードカナロア)は、中間の動きもう一歩で人気を落としたように、馬体は悪くなかったが、やはり完調手前だった。同オーナーの隣のダノンベルーガに気配で見劣った。このあとはマイル路線に向かうと思える。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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