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ばんえい競馬のスピード比べ

  • 2022年03月08日(火) 18時00分

力比べだけではない


 ばんえい競馬のクライマックス、ばんえい記念が3月20日に迫った。ばんえい競馬は、年齢を重ね、クラスが上がるほど重い重量のソリによって争われる。その頂点となるのが、1年に1度だけ、1トン(1000kg)のソリによって争われる、ばんえい記念。

 パワー勝負のばんえい競馬だが、ちょっと変わったレースもある。それが3月6日のメインレースとして行われたスピードスター賞。古馬の普段のレースでは設定がない、500kg(5歳馬10kg減、牝馬20kg減)という軽い重量で争われる。レース名のとおり、ばんえい競馬ではめずらしいスピード競馬。途中で止まることもないし、第2障害もノンストップで駆け抜けていく。

 この超軽量戦は、ばんえい競馬が帯広市単独開催(2007年度から)になって以降、何か新たな条件の、これまでと違ったレースはできないか、というところから始まった。現在では、疾風賞(10月11日)、地吹雪賞(12月28日)と2つの予選が行われ、それぞれの1〜5着馬(回避が出た場合は6着以下から繰り上がる)によって争われる決勝がスピードスター賞ということになる。

 前述のとおり、ばんえい競馬はより重い重量のソリを引いてこその力比べなので、以前であればこの軽量レースには、重賞で勝ち負けするような馬はほとんど出走してくることがなかった。ところが近年、その様相が変わってきて、バリバリのトップクラスの馬が出走してくるようになったのだ。

 今回びっくりしたのは、なんと、2週後に迫ったばんえい記念への出走が予想される馬が3、4頭も出てきたこと。500kgのレースを走ったあと、中1週で1トンのばんえい記念に出走するのだ。かなり乱暴な例えにはなるが、サラブレッドにしてみれば、3200mの天皇賞・春の前哨戦として1200m戦に出走するようなものかもしれない。

 今回のスピードスター賞は、1番人気に支持されたメムロボブサップが連覇を果たし、2着ゴールドハンター、3着アオノブラックまで、上位は人気順の決着となった。

 メムロボブサップは、3歳三冠、4歳シーズン三冠などを制してここまで重賞10勝の6歳馬。アオノブラックは同世代のライバルで、やはり重賞7勝。ともに今後のばんえい競馬の古馬戦線の主役となる存在だ。

 2着だったゴールドハンターは、ひとつ下の5歳馬。ここまで重賞2勝を挙げているが、とにかく気性が激しく、2歳時にはコースの外に逸走してしまったこともある。それゆえ、昨年4月から主戦となった金田利貴騎手は、第2障害の手前までソリの上には立たず座っていることもある。500kgレースには今シーズンの予選、疾風賞が初挑戦で、そこでいきなり昨シーズンのチャンピオン、メムロボブサップに競り勝った。

 決勝のスピードスター賞ではメムロボブサップに雪辱されたのだが、このスピードレースでの活躍は、その気性の激しさが生きたものと思われる。

 とにかくそのスピードスター賞の映像を見てほしい。馬体重1トンを超えるばん馬のスピード勝負は、普段の力比べとは違う迫力満点。このスピードでソリの上から馬を操れるのはスゴイと思う。

 そのスピードスター賞からばんえい記念へは、勝ったメムロボブサップは未定のようだが、3着アオノブラック、5着マルミゴウカイ、8着シンザンボーイが出走予定となっている。

 今回のスピードスター賞を勝ったメムロボブサップのタイムは47秒0。一方のばんえい記念は、馬場が乾いて重くなれば、勝ちタイムは3分台から4分台にもなる。まったく同じコースで、それほどタイムが違うレースのギャップもお楽しみいただきたい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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