スマートフォン版へ

5億人が注目する障害レースが今週末始まる

  • 2022年04月06日(水) 12時00分

衰えたと言われた馬が再始動した


 世界中が注目する障害の大一番、G3グランドナショナル(芝34F74y=約6907m、障害数30)が、9日(土曜日)にリヴァプール近郊のエイントリー競馬場で行われる。

 当日、1番人気が予想されるのが、テッド・ウォルシュ厩舎のエニーセカンドナウ(セン10、父オスカー)だ。 ハードルで4戦2勝の成績を残した後、17/18年シーズンからスティープルチェイスを跳んでいるのがエニーセカンドナウだ。ゆっくりと力をつけ、8歳となった20年2月にネイスのG3ホワットオッズパディーチェイス(芝16F)を制し、重賞初制覇を飾った。

 さらに、2度目の重賞制覇となったのが、昨年3月にナヴァンで行なわれたG2ウェブスターカップチェイス(芝16F)で、ここを10馬身差で快勝したエニーセカンドナウは、昨年のG3グランドナショナルに出走。オッズ8.5倍の2番人気という高い支持を受けることになった。

 先行馬群を前に見る位置に付け、最大の難所と言われるビーチャーズブルックを無事通過したエニーセカンドナウにアンラッキーなアクシデントが起きたのが、第12号障害だった。目の前を走行していたダブルシャッフルが飛越に失敗して転倒。接触を避けられなかったエニーセカンドナウは、体勢を崩しながらも落馬は免れたものの、ポジションを大きく落とすことになった。

 そこから盛り返した同馬は、最終的に勝ち馬ミネラタイムスから8.1/4馬身差の3着でフィニッシュ。敗れて強しの印象を残すことになった。 今季のエニーセカンドナウは、昨年12月に始動。ハードルを2戦した後、2月26日にフェアリーハウスで行われたG3ボビージョーチェイス(芝25F110y)で勝利を収め、3度目の重賞制覇を果たしてG3グランドナショナルに向かうことになった。

 昨年は10ストーン9ポンド(=約67.6キロ)だったハンデが、今年は11ストーン7ポンド(=約73.0キロ)に上がった点がポイントとなりそうだが、例えば前走のG3ボビージョーチェイスでは11ストーン8ポンド(=約73.5キロ)を背負っており、この馬にとっては背負いなれた斤量である。

 そのエニーセカンドナウにとって最大の敵になると目されているのが、同馬よりさらに重い11ストーン8ポンド(=約73.5キロ)を背負っての出走となる、ゴードン・エリオット厩舎のデルタワーク(セン9、父ネットワーク)だ。

 仏国で平地を2戦、エリオット厩舎移籍後にハードルを9戦した後、18/19年シーズンからスティープルチェイスに転身したのがデルタワークだ。転向初年度は5戦し、12馬身差で制したパンチェスタウンのG1チャンピオンノーヴィスチェイス(芝24F120y)など3つのG1を含む4勝をあげ、いきなりスティープルチェイス3マイル路線の最前線に躍り出ている。

 翌19/20年シーズンも、レパーズタウンのG1愛ゴールドC(芝24F)を含む2つのG1を制覇した。

 ところが、そのシーズンの最終戦となったチェルトナムのG1ゴールドC(芝26F70y)で5着に敗れると、そこから歯車が狂い、スランプに陥ることになった。20年のG1サヴィルズチェイス(芝24F)では、ハードル時代を含めて入障後20戦目にして初めて落馬を経験。今季3戦目となった、今年2月のG1愛ゴールドCで6着に敗れた段階で、連敗街道は7まで伸びることになった。ちなみに、G1愛ゴールドCの結果を報じたレーシングポストは、短評欄で同馬を「衰えている」と斬り捨てた。

 そのデルタワークが鮮やかな復活を見せたのが、今年のチェルトナムフェスティヴァル2日目(3月16日)に行なわれた、グレンファークラスチェイス(芝30F37y)だった。実はこれ、18年・19年とグランドナショナル連覇を果たした名馬タイガーロール(セン12)の、現役最後の一戦として、ファンの大きな注目を集めていた一戦だった。

 前半は好位の4〜5番手で競馬をしていたタイガーロールが、25号障害の手前で先頭に躍り出ると、場内は大歓声に包まれたのだが、最終障害手前でタイガーロールの内に馬体を併せてきたのが、タイガーロールと同馬主・同厩舎のデルタワークで、タイガーロールも簡単には譲らなかったものの、最後はデルタワークが3/4馬身先着して優勝。空気をまるで読まない激走を見せて、デルタワークは2年1カ月ぶりの勝ち星を手にしたのだった。

 この2頭に続く3番人気以下には、エイントリーのG3ビーチャーハンディキャップチェイス(芝25F188y)を含めて直前3連勝中で、10ストーン8ポンド(=約67.1キロ)という軽ハンデ(日本の感覚だと、ちっとも軽くはないのだが)が魅力のスノーレパーデス(牝10、父マルタリーン)、前走G3ボビージョーチェイスがエニーセカンドナウの鼻差2着だったエスカリアテン(セン8、父マレスカソレント)、昨季の愛グランドナショナル(芝29F50y)3着馬エンジョイダレン(セン8、父ネットワーク)らが続いている。

 全世界で5億人が視聴すると言われているグランドナショナルに、今週末はぜひご注目いただきたい。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング