
イクイノックスを管理する木村哲也調教師(撮影:下野雄規)
新馬戦、東スポ杯2歳Sと無傷の2連勝。その圧巻の勝ちっぷりに、早くからクラシックの主役候補として注目されてきたイクイノックス。今年の始動戦が、いきなり皐月賞の大舞台となりました。約5ヶ月ぶりの実戦…。このローテーションは、同馬の成長度合い、そしてその先を見据えての決断でした。4/6(水)、一週前追い切りを終え、管理する木村哲也調教師にお話をうかがいました。
(取材・文=佐々木祥恵)
繊細で、かよわい牝馬を管理しているようなイメージ
──まずイクイノックスを初めて見た時の印象をお聞かせください。
木村 2年前の初夏だったと記憶しています。骨格は大きくてバランスは良いのですが、手足が長くヒョロッとしていて少し頼りなさげな印象を受けました。
──頼りなさげというのは、成長途上というのもありますか?
木村 はい。それは今現在もそうなのですけど、成長途上だったと思います。初めて見た当時は青草も出だしていて、そういう時期の1歳の男馬はわりと立派に見えて余裕を持った体付きになる傾向があるのですが、イクイノックスはスリムでしたね。
──2戦目の東スポ杯2歳Sの時に「未完成」というコメントが出ていましたが、当時と比べて成長した点はありますか?
木村 体質が根本的に強くなったという印象は受けていないのですが、前走からだいぶ時間をいただいたので、馬が少し逞しくなったように多少見受けられますね。
──前走の東スポ杯からおよそ5か月間隔があきますが、このローテーションにした理由を教えてください。
木村 本当はもっと太ってほしいのですが、普段からあばらが浮いていて、食事の量を食べてもなかなか体が逞しくならないというのがずっと続いています。疲れも溜まりやすいので、クラシックに向けて2月、3月からレースを使いだすと、ダービーまで持たないのではないかと…。東スポ杯で賞金も加算できましたし、この馬のこれまでの成長度合いや今後の見通しを考えると、春は皐月賞から始動するということになりました。

これまでの成長度合いや今後の見通しを考えて、皐月賞が始動戦に(撮影:下野雄規)
──疲れやすいという話が出ましたが、調整を進める上で注意されていることはありますか?
木村 背中の疲れが溜まらないようなケアや治療をしています。ごつい男馬を管理しているというより、この時期の繊細で、かよわい牝馬を管理しているようなイメージを持って取り組んでいます。
ルメール騎手がレース後「イージー、楽勝」
──普段はどのような性格ですか?
木村 落ち着いていて大人しいです。暴れまわったりヤンチャな素振りを見せるということはないですね。
──新潟での新馬戦は先行、東スポ杯は後方の位置取りから最後は差してきて2戦2勝とセンスの良さを発揮していますが、この馬の強みは何でしょう?
木村 素直さだと思います。
──道中コントロールしやすそうですし、道中無駄な力を使わないでいけそうですが、クラシックの大一番では重要なことですよね?
木村 はい、その通りだと思います。

クラシックではより一層の強みとなる素直さを持つイクイノックス(撮影:下野雄規)
──始動戦がGIになりますが、そのあたりはいかがでしょう?
木村 いろいろな理由があっても言い訳はきかないので、最初からある程度結果を出していかなければいけないという責任感を持っていますが、トータル的に考えるとダービーにしっかりした状態で出すためには、こういうローテーションを選択するのがいいと自分では判断しました。
──小回りの中山は初めてですが、その舞台についてはいかがでしょうか?
木村 ルメール騎手が2回騎乗していますし、馬のことや脚の使いどころなどもご理解いただいていると思いますので、その状況なりの競馬をしてもらえるのではないかと思っています。
──ルメール騎手はこの馬についてどんなコメントをされていましたか?
木村 レースが終わってから、すごい! とかイージー、楽勝、素直などシンプルな表現をしていましたね。
──良い馬、強い馬というのは、シンプルな表現になるのでしょうかね?
木村 どうなんでしょうね。ただこのような経験はなかなかできることではないので、いろいろ勉強させてもらっています。
──先ほどダービーにはしっかりした状態で出したいと仰っていましたが、それでも皐月賞が叩き台というわけではないですよね?
木村 はい。皐月賞、ダービーと2つのレースできっちり頑張れるよう責任を持ってやりたいと思っています。
(文中敬称略)