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大好きな馬、オースミコスモに会ってきました。

  • 2022年05月01日(日) 12時00分
常石さんの手綱で、2003年の関屋記念を制したオースミコスモ。繁殖を引退し、第三の馬生を過ごすカームデイズファームに会いに行った時の様子を綴っていただきました。

 皐月賞制覇、ジオグリフ号。福永(祐一)騎手、関係者の皆様おめでとうございます。強豪を相手に混戦の中、関門突破は、力が入りましたね。木村厩舎のワンツー勝利も素晴らしかったです。クラシックロードも始まり、秋競馬まで目が離せませんね。

日々是好日

皐月賞を制したジオグリフ(撮影:下野雄規)


 同期の活躍はやっぱりうれしいです。応援にも力が入ります。5月1日は、天皇賞・春です。今度はわっ君(和田竜二騎手)の番だ。ディープボンドと期待しています。

***

 私にも大事にしたい馬がいます。オースミコスモに会いに行ってきました。

 オースミコスモは競走馬を引退し繁殖として頑張っていましたが、23歳になり、これからは穏やかな余生を過ごしてほしいとの願いから、一緒に繁養されていたエスワンスペクター(21歳)とともに養老牧場へ行ったことを知り、NPO法人引退馬協会に連絡し、移動先の牧場を教えていただきました。

 そして、4月16日に北海道の浦河郡浦河町カームデイズファーム(Calm days farm)へ会いに行ってきました。

 出かける前に、オースミコスモを管理していた中尾正先生のもとを訪問しオースミコスモのことをいろいろ話していただきました。私の知らなかったことや懐かしいエピソードもあってワクワクしながら聞いていました。

中尾 新千歳空港から浦河は、かなり遠いところだぞー。初めてのレンタカーで運転大丈夫か? 無理しないで気をつけて行っておいで。コスモによろしくな。

常石 はい、慎重に運転してもらいます。横で居眠りしない様に気をつけます。

中尾 それは大事なことや、しっかりお母さんのサポートしてね。

 新千歳空港からレンタカーに乗って浦河まで…。んー、ちょっと札幌方面に走っている感じがする。料金所で降りて訪ねるとやはり間違い。「苫小牧方面へ走り、高速を降りてから日高道を50kmくらい走っていくと海が見えてくるから」と親切に教えていただき、ナビをセットし浦河を目指していざ出発。

 目的地は“絵笛”という地名ですが、牧場の看板はなくどこを見ても青々とした牧場が広がり、仔馬たちものんびり母馬のそばで日向ぼっこ。気持ちよさそうだな

 2、3か所で聞いて、やっとカームデイズファームに着きました。ちょうどコスモもスペクターもパドックにいました。「コスモ、コスモ」と呼んでも知らん顔で黙々と若草を食べていました。もう1つのパドックにはキャプテンベガもいました。

 奥の方から、牧場長の渡邊さんが、奥様とお子様と一緒に軽トラできてくれました。

渡邊 遠いところよく来てくれましたね。

常石 歓迎していただけてうれしいです。コラムに載せたいのでいろいろお聞きしたいです。

 そして改めてコスモと再会…。

常石 コスモ、コスモ! 会いたかった、元気でほんまによかった。俺って分かるか? そうか、よしよし分かるんやな。うれしい。ずっと一緒にいたいな。栗東へ帰るか?

 やっぱりスペクターと一緒やな、仲良しですか? 奥の方に猫もいるんですね?

日々是好日

オースミコスモと久しぶりの再会!


渡邊 前の牧場から一緒に来て、ずっと一緒に仲良くしていますね。奥にいるのはキツネなんですよ。馬には何もしないですが、人間が触ると危険です。

常石 遠くから見ていると遊んでいるようにも見えますね。

渡邊 近くに行くようなことはしませんね。コスモはカラスにも好かれていて…。カラスがコスモの餌を横取りしてコスモの背中に乗せて食べるんですよ。そんな時は不愉快そうに馬体をモジモジさせています。馬房にカメラをつけて自宅のパソコンで見守っているので、すぐに追い払ってるんですが、やっぱりコスモのところにだけきますね。

常石 現役の時、コスモが馬房にいると雀が来て一緒に飼い葉を食べていましたね。コスモはとっても優しく人懐こい性格で雀にもみんなにも好かれていました。厩舎でも人気者だったんですよ。

渡邊 やっぱり優しいんですね。娘が人参をあげられるようになりコスモと仲良くしています。水も大好きで早くほしいと要求しますが、急いで飲むので水がすぐに汚れてしまうんです。

常石 雪解け水はおいしいのか。食欲旺盛ですね。お嬢さんは何歳ですか?

渡邊 2歳です。いつも私たちと一緒に牧場に来ているので馬たちとも仲良くして怖がらないですね。

日々是好日

渡邊さんとお嬢さん


常石 渡邊さんはいつからこの牧場を始められたんですか?

渡邊 昨年の8月からです。約10年前に廃業された方からの借地です。父親が近くで養老牧場をしているのですが、そこでナイスネイチャ号が生まれ、ずっと見ていました。いい馬でしたね。小さいときから手伝っていましたが、大学から7年間会社員をしていました。(※現在養老牧場の渡辺牧場は以前生産牧場でナイスネイチャもこちらで生まれた)

常石 思い切りましたね。奥様も牧場関係ですか?

渡邊 まったく知らなかったですが、快く手伝ってくれて助かります。

常石 御兄弟はいますか?

渡邊 弟がいます。父の牧場を手伝っています。私は幼いころから馬を見て育ったのでやっぱり馬から離れられませんね。

常石 渡邊さんもそうですか? 私も落馬したけどやっぱり馬に乗りたいと思い乗馬をしています。落馬したのに怖くないですか? とよく聞かれますが怖くないですね。馬に跨ると顔が変わるそうです。ときどき母に「悩みはないの?」と聞かれますが、馬の背中にいるときは気分爽快です。

渡邊 馬が好きなんですね。馬たちには1日でも長生きし、心と体を癒してゆったり過ごしてほしい。この馬たちの余生を見守っていきたいと思います。

日々是好日

オースミコスモと戯れる常石さん


常石 コスモは幸せ者ですね。うれしいです。これからの目標は、何ですか?

渡邊 奥にもうひとつパドックをつくっています。今も杭うちを行っていました。馬もあと2頭来る予定です。

常石 1頭でも多くの馬を預かってくれるとうれしいです。7000頭くらいの馬が生まれ競走馬になっていきますが、引退する馬もいます。行方不明な馬が沢山いる中で養老牧場があってよかったなあと思います。感謝しかないですね。今困っていることは、ないですか?

渡邊 養老牧場が少ないからもっと作ってほしいと思います。日本には養老牧場のデータが少ないため、参考になることや指導してくれる方がいないので手探りです。

常石 元調教師の角居勝彦先生が珠洲市で引退競走馬の援助活動をしています。何か手掛かりが見つかると思います。

 キャプテンベガはまだ若くて馬体にも張りがありいい体格ですね。乗馬できるんですか? こんな馬でパラリンピックを目指したいですね。

渡邊 腰を痛めていて脚の使い方がおかしいので、乗馬はできないですね。

常石 残念です。早く元気になってほしいです。私が、関屋記念で勝った時の写真ですが、コスモの馬房に飾ってください。

渡邊 コスモも喜ぶと思う。甘えん坊のコスモだから安心するでしょうね。いい写真ですね。活躍した馬の余生を見ることができ私たちもうれしいです。また是非会いに来てくださいね。

常石 ありがとうございます。またコスモや新しく入厩する馬にも会いたいです。会えるのを楽しみにしています。お嬢さんにも会いにきますね。「かっちゃん」と呼んでくれてうれしかったです。大変なお仕事ですが、よろしくお願いします。

 最後に、私にお手伝いできることはないですか? コラムを通してメッセージを伝えたいと思います。

渡邊 支えてくださるフォスターペアレント会員を募集しています。NPO法人引退馬協会をネットで探してみてください。皆様も会いたい馬にきっと出会えると思います。余生を支えるために支援を募集しています。ご協力よろしくお願いいたします。また、TwitterやInstagramにも馬たちの様子をアップしているのでみてください。引退馬を1頭でも多く預かり余生を大切に過ごせるようにしたいと思います。

日々是好日

渡邊さんに取材中…!



***

 コスモ、コスモと呼び、愛撫する様子を見ていると会いに来てよかったー。

 レンタカーの不安はありましたが、なんとかなる思いでした。車に乗るとすぐに爆睡する息子ですが、オースミコスモに会いたい気持ちが高ぶったのか、母の運転が不安だったのか、ほとんど寝ずにカーナビの設定をし案内してくれました。

 無心になってコスモにしがみつき一緒に栗東へ帰るか? とコスモから離れない姿をみて、馬との絆の深さを感じました。コスモにもわかったようでしたね。安堵。馬は人を動かす力がありパワーも凄いなと実感です。

 関屋記念の写真を渡邊さんに渡すと喜んでくださり、久しぶりにサインもしました。サインだけは、しっかり覚えている、まだまだ競馬人のようです。

 未練を残しつつコスモと別れ…帰り道、新冠町に入ると街頭に馬の顔があり、馬の街だと再確認。サラブレット銀座をずっと進むと優駿スタリオンステーションのそばにオグリキャップ像が堂々と天を向いて走っていました。そばには名馬の墓石も沢山ありました。

 また詳しく6月のコラムでお知らせします。楽しみにしていてくださいね。まだまだ続く親子珍道中牧場編です。

 150km、ノンストップで来た甲斐がありました。帰りも寄り道しながら延々と走りましたが落とし穴が。レンタカー返却場所が見つからずに空港の周りをウロウロ…。

 助っ人息子よ、先に入れたナビの削除をしなかったために同じところを巡回。スタートから出直し。15分で着くところを1時間も無駄にしてしまったが、何とか辿り着きレンタカーの旅に終止符。つかれたーー! お疲れ様。寝ずに頑張ったな(母の運転が怖く眠れなかったのかも?)

 つねかつこと常石勝義&オカン

(次回の更新は6/1(水)を予定しています)

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1977年8月2日生まれ、大阪府出身。96年3月にJRAで騎手デビュー。「花の12期生」福永祐一、和田竜二らが同期。同月10日タニノレセプションで初勝利を挙げ、デビュー5か月で12勝をマーク。しかし同年8月の落馬事故で意識不明に。その後奇跡的な回復で復帰し、03年には中山GJでGI制覇(ビッグテースト)。 04年8月28日の豊国JS(小倉)で再び落馬。復帰を目指してリハビリを行っていたが、07年2月28日付で引退。現在は栗東トレセンを中心に取材活動を行っている。

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