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【NF天栄 木實谷場長】大器ソネットフレーズがついにGI初参戦! NHKマイルC出走決定の舞台裏

  • 2022年05月01日(日) 18時01分
今週のface

▲ノーザンファーム天栄の木實谷雄太場長がNHKマイルCを前に激白 (C)netkeiba.com


母系にはエアグルーヴ、父系にはスペシャルウィークと、90年代に活躍した名馬の名が見られるソネットフレーズ。良血の牝馬がいよいよGIに初挑戦します。

体質の弱さゆえ、キャロットクラブでは通常の募集より遅れての追加募集組でしたが、同クラブではこの世代から手術歴の公開をスタート。ソネットフレーズも手術歴がありながらも、経過が良好なことや動きの良さからGOサインが出され、ここまで歩んできました。

デビュー前から同馬に携わる、ノーザンファーム天栄の木實谷雄太場長にお話をお聞きします。

(取材・構成=大恵陽子)

手術歴を公表し、2歳春に追加募集


──第一印象を教えてください。

木實谷 昨年3月に初めて見て、すごくボリューム感のある馬体だと感じました。元々、不安点があって馴致や乗り出しが少し遅れていたのですが、そういった部分を感じさせないような馬でした。

──両後肢のボーンシストで手術歴があることがキャロットクラブから公表されていますが、追加募集に至った経緯というのは?

木實谷 通常は1歳夏に募集を行うのですが、疾患を抱えていてその後どうなるか分からなかったので、その時期には募集ができませんでした。しかし、乗り始めてから脚元に問題はありませんでしたし、動きも良かったので、2歳の春に追加募集に出されたというところです。

──美浦トレセンでゲート試験に合格後、ノーザンファーム天栄に入厩し、調整が行われました。動きなどはどう感じましたか?

木實谷 そういった疾患を抱えているので、背中から腰、下半身に弱さがある印象でしたが、坂路調教でも手応え良く動いていましたし、スピードも含めて能力の高さを感じていました。

──母系をたどれば1997年天皇賞・秋を制した名牝・エアグルーヴやオークス馬・ダイナカールが、父系にはアメリカンオークスを制したシーザリオ、1998年のダービー馬・スペシャルウィークといった名馬が名を連ねます。どの馬の血が色濃く出ているのでしょうか?

木實谷 どちらかと言うと、お母さんのボージェストに似ているな、というのが走りを見た印象です。ボージェストはこの血統にしては少し捌きが硬いと言いますか、ピッチ走法でした。エアグルーヴというよりは、現時点ではお母さん似ですね。

──デビュー前の追い切りではラスト1ハロン11.1秒を馬なりでマークしました。厩舎サイドとはどういった話をしましたか?

木實谷 手塚貴久調教師から「動きもいいですし、走ると思います」と、いい感触を聞いていました。

──新馬戦はその通りの結果で、勝利を収めました。

木實谷 変に気負い過ぎる部分を心配していましたが、レースではスッといい位置につけられて、折り合い面も許容範囲だなと思いましたし、いい内容だったと思います。

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▲1.4倍の断然人気を集めた新馬戦を、なんなく快勝 (撮影:武田明彦)


今年未出走も「成長を促す意味ではいい期間に」


──初勝利後、再びNF天栄に入厩しますが、そこで捻挫のような状態が確認されたとか?

木實谷 まだ下半身がしっかりしていないせいか、前脚などもブレが大きく、関節周りに負担がかかりやすい状況がデビュー前から慢性的にありまして、またレース後は背腰を中心に疲れも見られたので、とりあえず目標を決めず、じっくり進めていきました。

 10月はじめ頃にレースのメドが立つくらいの調整具合になったのですが、暮れのGIとなれば1勝馬では賞金的に出走が不確定な状況ですし、手塚先生との話の中で「年内に2走するのは厳しいだろう」ということで、デイリー杯2歳Sに向かうことになりました。

──直線では逃げ馬を交わしてからよく伸びましたが、僅差の2着。

木實谷 勝ち馬にもマークされていましたし、どちらかというと外が伸びる馬場で厳しい位置にも入りましたが、その中で最後までしっかりと走ってくれて、改めてこの馬の能力の高さを感じました。

──その後、桜花賞は視野に入れていましたか?

木實谷 もちろんです。ただ、獲得賞金から出走できるか不透明な状況だったので賞金加算を狙ってクイーンカップを目標にしたのですが、そこに向けて調整を進めていく際の追い切りで球節を痛めてしまい、再調整という形になりました。

──そのため、今年はまだ1走もできていない状況だったのですね。これだけ良血で高いポテンシャルが感じられますが、一方で体質の弱さもあり、陣営のみなさんは様々な面に気を配りながらケアや調教を進められていることと思います。

木實谷 どうしても脚元に負担がかかりやすいので、トレッドミルでの運動を交えながら、脚元の負担を考慮しつつも上のクラスで走る馬なのでしっかり運動量も確保しています。そのあたりのバランスが難しい部分ですね。

──人が乗って走るよりも、トレッドミルの方がやはり負担は軽くなりますか?

木實谷 トレッドミルであれば、単純に騎乗者1人分、重さで約50〜60kgの負担が減りますし、機械という性質上、一定のスピードで動かせるというのもメリットです。そういった意味で、騎乗時に比べて、脚元への負担は和らぐのではないかと思います。

──新馬戦の前後にはノドの疾患が懸念されるコメントも出ていましたが、こちらについては現状いかがですか?

木實谷 今は心肺機能もだいぶ向上しているからだと思うのですが、息遣いやノドの部分で不安を感じることはありません。

──ノドについては成長に伴って自然と良くなることもあると聞きます。何か疾患を抱えていると聞くと、短絡的に不安になってしまいますが、競走馬はアスリート。全く何も不安のない馬の方がむしろ珍しいのでしょうね。

木實谷 そうですね、どの馬も大なり小なり何かしら抱えていると思います。

──人間のアスリートと同様、それらと上手く付き合いながらいかに能力を発揮させるか、ですね。さて、次走はNHKマイルカップと発表されました。出走の決め手となったのは何でしょうか?

木實谷 脚元の状態も落ち着いて順調に調整できるようになったということと、この馬の獲得賞金でもNHKマイルカップ出走の目途が立ったという2点です。

──トレセンに送り出す直前の状態はどうでしたか?

木實谷 クイーンCの前に一頓挫あって、その回復に思ったよりも時間が掛かりましたが、乗り出してからは順調に調整することができました。肉体面に関してはボリュームも増していて、成長を促すという意味ではいい期間になったかなと思います。

──現時点ではどこに一番強みを感じますか?

木實谷 やはり普段の調教からとても時計が出ますし、スピード能力の高さだと思います。

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▲「スピード能力の高さが一番の強み」と木實谷場長 (撮影:武田明彦)


──NHKマイルCはこの馬にとってGI初出走となります。最後に期待感のほどをお聞かせください。

木實谷 クイーンC前に一頓挫あり、今回は厩舎サイドでも慎重にならざるを得ない部分があって、調整のさじ加減が難しいと思うのですが、無事に追い切りを終え、いい状態で当日を迎えてほしいと願うばかりです。

 今回上位人気が予想されるセリフォスとはデイリー杯2歳Sで一緒に走りましたが、その時の着差や内容を考えると、この馬自身の能力を発揮できれば今回のメンバーでもいいレースができると思っていますので、応援のほどよろしくお願いいたします。

(文中敬称略)

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