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【瑠星騎手のオタク度】南関東の全頭を暗記している小学生「我ながらヤバイ子供で…(笑)」

  • 2022年05月01日(日) 18時01分
ryusei

▲「競馬博士」坂井瑠星騎手の短期連載がスタート! (写真は2022年ゴドルフィンマイル優勝時、(c)netkeiba.com)


日本ダービーを筆頭に、毎週GIが控える5月。スターホースのまばゆい雄姿を楽しみにしているファンの方が、たくさんいらっしゃると思います。

今は現役のジョッキーとして活躍する坂井瑠星騎手も、かつてはそのひとり。ジョッキーになる遥か前、幼稚園の頃から競馬の魅力に取りつかれ、いまやその競馬知識の豊富さはジョッキー界でも随一という存在に!

そんな瑠星騎手と、毎回テーマを設けて競馬を深掘りしていく短期連載がスタートします。初回のテーマは「種牡馬」。人気種牡馬や馬券を盛り上げる種牡馬たちの特徴や魅力を、騎手目線で掘り下げます。

そしてこの企画の最後には、スペシャルなイベントも計画中! どうぞこの先まで、長ーーくお楽しみください。

(取材・構成=不破由妃子、タイトル画像撮影=福井麻衣子)

原動力は「父親に勝ってほしい気持ち」


 突然ですが、みなさんにとって小中学生時代のアイドルって誰ですか?

 ライブに行ったり、握手会に行ったり、グッズを買い集めたり…。当時は僕にもそんな存在がいて、それはもう夢中になって追いかけていました。

 ただし、僕にとってはライブ=競馬場、握手会=牧場。そのアイドルの名は……英雄ディープインパクトです!

 今でも牧場で撮ったツーショット写真はスマホのなかに大事に保存してあり、ときどき眺めたりして(笑)。その瞬間を懐かしく思い出すと同時に、我ながら変わった小学生だったなぁと思ったりします。

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▲瑠星騎手の永遠のアイドル“ディープインパクト” (撮影:下野雄規)


 ご存じの通り、僕の父親は大井競馬場の元ジョッキー・坂井英光(現調教師)です。僕自身の記憶は曖昧ですが、幼稚園時代から競馬にハマっていたらしく、送迎バスのなかでも、「的場文男は勝つけど、お父さんは勝たない」だとか、今は大好きな戸崎さんのことも「戸崎圭太はいつも勝つから嫌い」などと、周りをポカンとさせるような話をしていたとか(笑)。

 小学生になると、父親に勝ってほしい一心で、競馬オタクぶりにさらに拍車が掛かりました。友達がアニメや戦隊ものにハマっていくなか、僕がひたすら見ていたのは地方競馬中継。テレビの前に陣取り、ずーっと見ていました。

 さらに、父親が毎週持ち帰ってくる想定表を見ながら、「ここはこの馬が強い」「この馬には勝てそうだ」などなど、思えばジョッキーとしてまさに今やっているような力関係の整理や予習を夢中になってやっていましたね。

 そうこうしているうちに、南関東に所属しているほぼ全頭について成績を把握。成績と同時に血統も覚え、気づいたときには、どのクラスでどのくらいの強さかなどすべて頭に入っているという、究極の“競馬オタク”になっていました。当時の頭数はわかりませんが、現在、南関東に所属している競走馬は約4000頭。それらの成績をソラで言える小学生……我ながらヤバイ子供だったと思います(笑)。

 その原動力となっていたのは、やはり父親に勝ってほしいという気持ちが一番。そのためには、「ほかの馬のことも知らないとダメだな」と子供なりに思ったことが始まりでした。あとは、「好きこそ物の上手なれ」であり、その一連の作業が楽しくて楽しくて仕方がなかった。

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▲父・英光騎手の引退式、子供の頃から父にたくさん勝ってほしい気持ちが強かった (撮影:高橋華代子)


 それはジョッキーになった今もまったく変わらず、むしろ年を重ねた分だけ知識が膨大に。すっかり年季の入った競馬オタクとなりました。

 さすがに、関東馬については把握し切れていませんが、栗東で毎朝調教している関西馬の成績や血統は、ほぼ頭に入っています。ジョッキーのなかで、「僕より血統に詳しい人はいない!」と思えるくらいの自負もあります。

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▲栗東で毎朝調教しているときも、周りの馬の成績や血統がすぐにわかるという (撮影:井内利彰)


 そんな僕が感じた注目種牡馬の特徴や魅力を、少しでもファンのみなさんと共有できたら…というのが、今回の短期連載のテーマです。

 馬券のヒントになるかどうかはわかりませんが、より深く競馬を楽しんでいただけるきっかけになればいいなと思っています。ジョッキーとして、データという数字を超えた競走馬の神秘を伝えていきたいと思います。来週からの本編を楽しみにしていてください!

(文中敬称略)

1997年5月31日、東京都生まれ。父・坂井英光は大井競馬所属として地方通算2000勝を達成した名手(現調教師)。同期は藤田菜七子、荻野極、木幡巧也ら。2016年に栗東・矢作芳人厩舎所属でデビュー。2019年ノーワンのフィリーズレビューで重賞初制覇。2020年ダノンファラオのジャパンダートダービーで交流GI初制覇。また、2017年のオーストラリア長期遠征を皮切りに、ヨーロッパや中東など世界各国で騎乗。

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