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【七夕賞AI予想】今年は荒れない!? あまりにも意外なAIの見立てを徹底検証

  • 2022年07月04日(月) 18時00分

単勝オッズ7.2倍のフェーングロッテンが優勝(撮影:下野雄規)


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

馬券に絡んだ馬の半分が7番人気以下


AIマスターM(以下、M) 先週はラジオNIKKEI賞が行われ、単勝オッズ7.2倍(3番人気)のフェーングロッテンが優勝を果たしました。

伊吹 逃げたショウナンマグマが2着に残り、最内の5番手前後を追走していたフェーングロッテンが1着、そして同じく最内の8番手前後を追走していたサトノヘリオスが3着。枠順や馬場、そして展開に恵まれたのは確かです。ただ、それを差し引いても価値のある勝利だったと思います。セックスアローワンスも加味すると、ハンデキャッパーがこの馬よりも上位と見ていたのは重賞で連対経験のあるソネットフレーズ・ベジャールだけ。クロスマジェスティ・サトノヘリオス・ボーンディスウェイの3頭と同じ“3位タイ”の評価でした。決して負担重量に恵まれたわけではありません。

M 前走でオープン特別の白百合Sを制したものの、その白百合Sは7頭立ての少頭数でしたし、3走前や4走前には1勝クラスのレースで二桁着順に敗れている馬。半信半疑と見ていた方が多かったのではないでしょうか。

伊吹 最終的に重いシルシを打ったとはいえ、正直なところ私も「重賞らしいタイトな展開になったら苦しいかもしれない」と考えていたんです。ただ、この見立てはまったくの杞憂でしたね。1000mの通過が58.8秒というペースを難なく追走していましたし、ゴール前の直線では逃げていたショウナンマグマのさらに内へ進路を取り、まったく怯むことなく差し切っています。松若風馬騎手の手綱捌きも、それに応えたフェーングロッテンも、お見事と言うほかありません。

M フェーングロッテンは半兄に2021年のスプリンターズSを制したピクシーナイトがいる良血馬。収得賞金も増えましたし、今後が楽しみですね。

伊吹 今回がハンデキャップ競走だった点や、1勝クラスで足踏みしていた今年3月以前の戦績を考えると、ここ2戦のパフォーマンスに見合った評価をされるかどうかは微妙なところ。次走以降もしばらくの間は妙味ある存在になってくれるのではないでしょうか。コース適性の幅も広そうですから、たとえ不安要素を抱えた状況であっても、安易に軽視してしまわないよう心掛けたいと思います。

M 今週の日曜福島メインレースは、サマー2000シリーズの開幕戦となる七夕賞。昨年は単勝オッズ5.9倍(2番人気)のトーラスジェミニが優勝を果たしました。2018年に単勝オッズ100.8倍(11番人気)のメドウラークが1着となるなど、波乱の決着も少なくない印象ですが、実際のところはどうでしょうか?


伊吹 近年に限ってもだいたいイメージ通りですね。2012年以降の3着以内馬30頭中、半数の15頭は単勝7番人気以下でした。


M 優勝馬10頭のうち7頭は単勝3番人気以内ですが、3着内率は単勝1番人気馬が40.0%、単勝2〜3番人気馬が30.0%。上位人気勢の好走率としては物足りません。

伊吹 そのうえ単勝4〜6番人気馬の3着内率も16.7%にとどまっていますからね。単勝オッズで区切ってみても、2012年以降の3着以内馬30頭中17頭が10倍以上、8頭が20倍以上でした。人気薄の伏兵を積極的に狙っていくべきレースと言えるでしょう。

M そんな七夕賞でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ヒートオンビートです。

伊吹 これはちょっと予想外でしたね。どちらかと言えば“穴党”寄りのAiエスケープが、よりにもよってこのレースで人気の中心となりそうな馬を推奨してくるとは……。

M オープン入りを果たした2021年の4月以降は勝ち切れていないものの、5着以下に敗れてしまったのは5走前の京都大賞典(8着)だけ。昨年の目黒記念で2着に、今年の天皇賞(春)で4着に食い込むなど、強敵相手のレースで安定した成績を収めています。今回はGIIIのハンデキャップ競走ですし、格上の存在と見ている方が多いのではないでしょうか。

伊吹 厳密に集計したわけではありませんが、Aiエスケープが本命サイドの馬を挙げてきたレースは、堅く収まりがちな印象があります。人気が割れそうなこともあって、今のところ期待値の高い伏兵は見当たらない──ということなのかもしれませんね。こうした背景も踏まえたうえで、好走馬の傾向からこの馬の信頼度を判定していきましょう。

M まず、天皇賞(春)から直行してきた点はどう見ますか?

伊吹 ごく近年の傾向を見る限りだと、特に不安視する必要はなさそう。2019年以降の七夕賞で3着以内に好走したのは、前走がGIだった馬と、前走の距離が1800〜2000mだった馬だけです。


M サマー2000シリーズの開幕戦ですし、ビッグレースに挑戦できるような実績馬や、2000m前後のレースを主戦場としてきた馬でないと、上位に食い込むのは難しいのでしょうね。

伊吹 そういうことだと思います。ちなみに、前走の出走頭数が12頭以下だった馬も2019年以降[0-0-0-11](3着内率0.0%)と上位に食い込めていません。2018年以前はこれらの条件に引っ掛かっている馬の好走例も少なくなかったのですが、再びそのような馬が馬券に絡むまでは、臨戦過程を素直に評価したいところです。

M なるほど。では、キャリア19戦の5歳馬である点はいかがでしょう。

伊吹 こちらも強調材料と見て良さそう。同じく2019年以降の3着以内馬9頭中7頭は、出走数が21戦以下でした。


M それほど余裕はありませんが、この条件もしっかりとクリアしていますね。

伊吹 馬齢が同じくらいであっても、ヒートオンビートよりキャリアが豊富な馬は過信禁物と見るべきでしょう。

M 逆に、割り引きが必要なポイントは何かありますか?

伊吹 やや気掛かりなのは、単勝1番人気の支持を集めた今年の中山金杯で3着に敗れている点。2019年以降の3着以内馬9頭中7頭は“同年、かつJRA、かつ2000m以下のレース”において2着以内となった経験がある馬でした。


M ヒートオンビートは基本的に2000m超の長距離戦を主戦場としてきた馬。もう少し短い距離のレースが合うタイプに足を掬われる可能性もありそうです。

伊吹 ただ、昨年12月のチャレンジCでは2着を確保していますし、今年の中山金杯も2着のスカーフェイスとはタイム差なし。この一点だけを理由に嫌うのは無理筋でしょう。私は別の馬に◎を打つつもりですが、ヒートオンビートも対抗格くらいの位置には置く予定。Aiエスケープと同様に、堅めの決着もあり得るという前提で買い目を組もうと考えています。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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