▲強い逃げ馬の攻略法を考えます(撮影:桂伸也)
パンサラッサやタイトルホルダーなど、近年日本の競馬を賑わせている逃げ馬、今回はそんな強力な逃げ馬についての質問にお答えします。理想は逃げ馬の後ろにつけたいがスピードがありすぎてついて行けない、追いかけたらこっちが止まってしまうと、大逃げの馬を相手にする難しさを語るミルコ騎手。
そんな強力な逃げ馬がいる時、ジョッキーはどんなことを考えて乗っているのでしょうか。今後も課題となる逃げ馬の隙を探っていくと、だんだんと攻略のヒントが見えてきました。
(取材・構成=森カオル)
Q「パンサラッサのような、大逃げをする強い馬と競馬をするときはどうすればいいのでしょうか? 中山記念では、馬群が伸びて後ろの集団までハイペースになってバタバタになりましたし、ドバイターフで付いて行った馬は全部止まってしまいました。
とくにパンサラッサに対しては基本的な対策がなく、どうしようもないように思えてしまいます。相手までの位置で測るのではなく、自分の体内時計を信じて後ろにいるしかない? 中山記念で対戦していますが、どういうことを考えていたのか、ぜひ教えてください」(すきまさん)
ミルコ いや〜、難しいです、ホントに。自分の馬が前に行ける馬であれば、後ろにつけたい気持ちはあるけど、やっぱりついて行けないね。スピードがありすぎるから。
──質問のなかにもありますが、追いかけたらこっちが止まってしまう。
ミルコ 止まっちゃいますね。だって、たとえば1800mや2000mだとしたら、(前半)1000m60秒前後というレースもあるのに、あの馬は57秒台で行ってる。そういうペースに慣れていない馬たちは、どうしても戸惑ってしまうし、脚を使えずに終わってしまいます。
──そのペースで行かれて、最後まで止まらないとなれば、後ろの馬たちはなし崩し的に脚を使わされてしまうことも。
ミルコ そう、とっても難しい。絶対にあの馬が行くことも、行けば逃げ切ってしまう可能性があることも、みんなわかっているんだけどね。能力的にちょっと足りなくて、人気がない馬であれば、パンサラッサのような競馬をしたところで「止まるでしょ」という気持ちで乗っていられるけど、あの馬の場合、止まらないときがある。中山記念のときは、確か(パンサラッサは)2番人気? 勝つ可能性がある馬だったから、それほど離れずについて行きたかったけど、僕の馬(ヒュミドール6着)はスタートがあまりよくなかったこともあって、難しい競馬になってしまったね。
──パンサラッサのような馬は、出遅れたり、執拗に競り掛けられたりしない限り、勝ち負けはともかくとして自分の競馬ができてしまうということですね。
ミルコ そうですね、自分のペースを守れれば。でも、たとえば大阪杯のジャックドール(5着)でいえば、一完歩目がそれほど速くなかったから、横の馬たちの動きも変わったね。ジャックドールは、それまで1分前後くらいのペースで逃げていたけど、大阪杯は違ったでしょ?
──そうですね。あの馬にとって、初めての58秒台(58秒8)でした。
ミルコ 周りもそんなに離れていなかった。ジャックドールはとっても強い馬だけど