記念すべき馬の産駒の勝利はなにより感慨深い重賞タイトル

ウインカーネリアンが重賞初制覇(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規
飛ばすタイプは少なく、最後の直線約660mに集約される上がりの速い決着が考えられたが、レースの流れは前後半の800m「48秒4-44秒9」=1分33秒3。まさか前半の方が3秒5も遅い歴史的なスローになるとは予測できなかった。
前半1000m通過「60秒3」は、2001年に左回りの高速競馬場に模様替えして以降、初めて60秒台のスローであり、1分33秒3は2001年以降もっとも遅い勝ちタイムだった。
だからといって、勝った5歳牡馬ウインカーネリアン(父スクリーンヒーロー)の評価が低くなるものではまったくない。これで3連勝となり【7-3-0-8】、いよいよ重賞ウイナーとなり、才能開花を告げた。
父スクリーンヒーローは、鹿戸調教師の開業初年度2008年にアルゼンチン共和国杯→ジャパンCを連勝して、初の重賞勝ち&初のGI勝利をもたらした記念すべき馬であり、その産駒ウインカーネリアンの関屋記念制覇は、多くのスタッフにとってもなにより感慨深い重賞勝利だったろう。
スクリーンヒーローの父系は、グラスワンダー(有馬記念2勝など)から、スクリーンヒーロー(ジャパンC)を経て、ゴールドアクター(有馬記念)とモーリス(安田記念など)が出現し3代連続GI勝ち馬の父系となった。さらにモーリスはピクシーナイト(スプリンターズS)やHITOTSU(AUSのG1馬)などを輩出し、グレード制導入後初めて「4代連続GI馬」を送り続ける貴重な日本のサイアーラインとして発展している。
ウインカーネリアンの展望も、目下ポイント1位のサマーマイルシリーズのチャンピオンではなく、秋の展望は「GIマイルチャンピオンS挑戦(鹿戸調教師)」である。
勝ったウインカーネリアンが2022年春の新潟1600m「谷川岳S」の勝ち馬なら、2着に粘った伏兵シュリ(父ハーツクライ)は、2021年の谷川岳Sの勝ち馬だった。長い休養ブランクがあって、そのあと大敗が続いたが、今回は入念な立て直しに成功。集中力を高めるメンコ(覆面)着用も正解だった。
スムーズに先手を奪うと、2番手が人気のウインカーネリアンなので終始マイペース。前半1000mを60秒3で通過したあと、このペースだから鈍るわけもなく自身の残り3ハロンは「10秒8-10秒7-11秒6」=33秒1。確かに恵まれはしたが、これで【6-2-0-7】。見事な復活となった。
2番人気のダノンザキッド(父ジャスタウェイ)は、前回の安田記念でかかり気味になり早めに先頭に立って差されたので、今回は直線までなだめて中団で控える形。ただ、決して力負けではないはずだが、各馬がスパートした残り600mからの2ハロンは「10秒8-10秒6→」。ここで差を詰める切れがなかった。猛追したのは「11秒6」となった最後の200mだった。
デビューから3連勝し、弥生賞も皐月賞も1番人気で勝ち切れず、やがて現在はマイル戦中心に方向転換したが、ホープフルSのあとは【0-0-3-4】。あふれる才能も、確かなスケールを秘めるのも間違いないが、本当はどういう馬なのだろう。まだ4歳の夏。これから大変身して欲しいが、何が足りないのか難しい。
4着スカイグルーヴ(父エピファネイア)は、ウインカーネリアンを射程に入れた理想の4-5番手追走。「止まってはいないが、こういう稍重馬場は良くないので反応が鈍かった(ルメール騎手)」という敗因は事実だが、大切に大事に成長をうながしてきた注目の良血馬。これで通算成績【2-4-0-5】。ダノンザキッドと同じで、GIIIのここは勝ち切ってトップグループに加われるのではないかと思えたが…。この超スローなので距離1600mは敗因にならない。
1番人気の安田記念を展開に恵まれず、上がり32秒6で猛追しながら0秒2差8着だったイルーシヴパンサー(父ハーツクライ)は、今回は巻き返したかった。珍しく好スタートを切ったが、持ち味を生かすように一旦下げた。まさかここまでのスローになるとは思えなかったろう。急な乗り替わりでいつものリズムを崩すわけにはいかないから、木幡巧也騎手は先行するわけにはいかなかった。
それにしても直線の伸び脚不発は残念な結果だったが、もともとスパートのタイミングが難しいタイプ。テン乗りになるはずだった岩田望来騎手から、同じくテン乗りの木幡巧也騎手への変更。今回は、最初から勝ち運に見放されていたとしか思えない。