厚手の馬着を着て寒さを凌ぐタイキシャトル(提供:ノーザンレイク)
シャトルが1番好きなおやつは、バナナなのではないか
タイキシャトルは、ノーザンレイクの他の馬たちとともに無事元気に2022年を迎えた。この3月には満28歳になる。目指せ30歳。密かに願った。
1月2日、最低気温がマイナス15度ほどになった日、朝厩舎に行くとシャトルに疝痛の症状が出ていた。すぐに獣医師を呼び、診察を受けた。痛み止めの注射を打ってもらい、聴診器で丹念に診察ののち、補液を行った。補液中に下痢気味のボロ(馬糞)をしたが、獣医師によると悪い下痢ではないし、冷えからくる疝痛なのではないかとの診断だった。
補液後はいつも通りのシャトルの表情に戻り、痛み止めが切れた後も痛みも出なかったので、やはり一過性の疝痛だったようだ。この日は大事をとって馬房内で過ごしたのだが、隣の放牧地にいつも来るはずのシャトルが来ないので、メイショウドトウがいなないて呼び、しばらくの間、柵際で厩舎の方を窺っていた。集牧時間になると今度はシャトルが戻って来るドトウをジッと見つめていた。その様子から、お互いなくてはならない存在なのだなと改めて感じた。
1月2日に疝痛になり、その日は馬房で過ごした(提供:ノーザンレイク)
1月2日ほどではないが、その後も気温が下がると疝痛のような症状が出ることがあった。獣医師が到着するまでの間に行った引き運動の最中でボロが出ていつもの状況に戻ったりと、軽い症状で収まっていた。体温も時折36度台になることがあり、それまで以上に寝藁を厚く敷いたり、厚手の馬着を引退馬協会に購入してもらった。また整腸剤やサプリも与え、疝痛対策をできる限り行った。
放牧時は馬着を脱がせてなるべく日光浴をさせた方が良いという獣医師の指導もあったので、陽射しが暖かい時には馬着なしで、気温が低く陽射しのない日には馬着を着せて放牧をした。疝痛症状が出た時以外は至って元気で、相変わらず食欲も旺盛だったし、放牧地までの脚取りが力強く、引き手を通して抑えきれない手応えを感じる日もあった。
陽射しのある暖かな日は馬着なしで放牧(提供:ノーザンレイク)
そして3月23日に満28歳の誕生日を、2日後の25日にドトウが26歳の誕生日を迎えた。2頭の誕生日が近いこともあり、人参、りんご、バナナなどの野菜や果物や馬用のクッキー、生牧草に黒砂糖、健康に良いあまに煮などたくさんのプレゼントが寄せられた。量のたくさんあるものは、牝馬たちにお裾分けし、夜飼い後恒例のおやつタイムはこの時期豪勢になった。
ある方のプレゼントには葡萄があった。念のため調べてみると、葡萄は馬に食べさせても問題ない果物となっていた。早速与えてみると、ドトウは1粒目は勢いで食べたものの、2粒目はペッと吐き出した。牝馬たちもキリシマノホシ以外は皆食べない。ところがシャトルはというと、ためらいもなく口に入れ、数回モグモグして飲みこんだ。2粒目以降も同様だった。バナナに至ってはシャトルしか食べない。他の馬たちは噛んだ時の感触が苦手なようだったが、シャトルは本当に美味しそうな表情をした。
シャトルが1番好きなおやつは、バナナなのではないかと思うほど、本当に良い表情で食べていた。ただ高齢馬は健康のために糖分の取り過ぎに注意しなければならないので、シャトルには申し訳ないが、バナナはたまのお楽しみということで、普段は我慢してもらっていた。
シャトルへの誕生日プレゼント(バナナ入り)(提供:ノーザンレイク)
今年の冬は雪が多く、何度もトラクターが出動して場内を雪かきした。放牧地もかなりの積雪量だったため、昨年よりも雪解けが遅く感じた。だが解け出すとあっという間で、青草が顔を覗かせ始めると、シャトルをはじめ馬たちは皆夢中で食べている。4月から6月までは、馬たちにとっても過ごしやすい季節だ。昨年は移動してきた当初から毛ヅヤが今ひとつで、冬毛も完全には抜け切っていなかった。だが今年は順調に冬毛も抜け、いつの間にかスッキリした馬体となり、毛ヅヤもどんどん良くなってきた。青草を口にするようになって、体の張りも良くなった。今年は昨年より体調が上向きかもしれない。そう期待させるほど、栗毛の馬体は輝いて見えた。
春になって毛ヅヤが良くなってきたタイキシャトル(提供:ノーザンレイク)
(つづく)
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