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【凱旋門賞】「ダービーを勝ったことで父の人生は一変」娘・悠衣氏が語る松島正昭オーナー(前編)

  • 2022年09月28日(水) 18時02分
今週のFace

▲インゼルレーシング代表・松島悠衣氏へ独占インタビュー(撮影:榎本良平)


日本ダービーをドウデュースで制し、最初の所有馬がデビューしてから8年足らずでダービーオーナーとなった松島正昭氏(キーファーズ代表)。かねてより公言されてきた「武豊騎手と凱旋門賞を勝つ」という最大の目標に向けて、夢の駒を大きく進めました。

ファンとして馬主として、競馬を楽しむ父の姿を間近で見てきた娘の松島悠衣氏。現在は一口馬主クラブ「インゼルレーシング」の代表を務め、自身も競馬に深く携わっています。そんな悠衣氏に「松島家と競馬」についてお話いただきました。

(取材・文=不破由妃子)

武さんには家族全員感謝しています


──お父さまの松島正昭氏は、子供の頃からずっと競馬ファンで、ついには武豊さんとの出会いをきっかけに馬主資格を取得し、現在に至るわけですが、そんなお父さまを通して、悠衣さんが初めて競馬に触れたのはいつですか?

悠衣 父が武さんと仲良くさせていただくようになったのが私が中学生の頃で、家に武さんのグッズがたくさんあったんです。それを見た友達の間で、「悠衣の家には武豊騎手のグッズがいっぱいある!」と話題になって、すごく誇らしかったのを覚えています。それが競馬というものに触れた最初のきっかけですね。もちろん、それまでも父が馬券を買っているのは知っていましたけど。

──お父さまご本人から、筋金入りの馬券好きだったとお聞きしました。

悠衣 週末は、たとえば夜中の3時、4時に帰ってきたとしても、絶対に朝6時に起きて、競馬新聞を見ていましたからね。「ようやるな」と思っていました(笑)。でも、たまに高配当の馬券を当てると、「なんでも好きなものを買え」と言ってみんなに還元してくれていたので、競馬に対してはいい印象を抱いていましたね。

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▲熱心な父を見て「ようやるな」と思っていました(撮影:榎本良平)


──いろいろ買ってもらえるし…みたいな(笑)。

悠衣 そうです(笑)。そのあと、馬主資格を取って、最初にセレクトセールで買ったのがミコラソンで。そのとき私、ペルーに行っていたんですけど、ちょうど覚えたてのミコラソン(スペイン語で「私の心」「私の気持ち」という意味)というスペイン語が馬名になって。すごく親近感が湧いたことを覚えています。

 そこから競馬場に行ってパドックで馬たちを見ているうちに、もともと動物が好きなこともあって、さらに競馬の存在が近くなっていった感じです。

──馬主資格を取得されてからのお父さまは、悠衣さんの目にはどう映っていましたか?


悠衣 ユイマールとかチカリータとか、購入した馬の馬名に母や私の名前を、私たちに考えさせて入れてくれるんですよ。そうやって家族を巻き込むのが上手い(笑)。実際、父が作った「みんなで応援しよう!」というムードに乗っかって、いつしか家族みんなで応援するようになったんですけどね。家族だけでなく人を巻き込むのが本当にうまいです。

──素晴らしき確信犯ですね(笑)。

悠衣 ホントに(笑)。父自身のことでいえば、本業は自動車業界で、赤字の会社を父が立て直したのですが、それがひと段落して、兄が継いだタイミングで馬を始めたんです。

 ご存じの通り、昔から武さんの大ファンで、当初から武さんと凱旋門賞に行くことを目標として掲げていましたが、そんな壮大な夢を一緒に追いかけさせてもらうことが父の新たな生き甲斐になって、娘としては本当によかったなと思っています。武さんには家族全員感謝していますし、父に“競馬”というものがあって本当によかったなって。

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▲父は家族を周りを巻き込むのが上手だった(撮影:榎本良平)


──それが、いまやこうして悠衣さんにもバトンが繋がって。

悠衣 そうですよね。馬券が当たったときもそうですが、父は周りを巻き込むのが本当に上手いんです。みんながウィンウィンになれる術をずっと考えているような人なので。

──なるほど。そういったマインドが、運を引き寄せているのかもしれませんね。

悠衣 そうかもしれません。私利私欲ではないあたり、本当に尊敬しますし、そういった姿勢が悪いものを遠ざけているような気もします。

──なにしろ、最初の所有馬がデビューしてから8年足らずでダービーオーナーになられた。ダービーを勝ったことで、お父さまに変化はありましたか?

悠衣 生活もそうですが、人生が一変したなと思います。父は相当プレッシャーを感じていたらしく、ダービーの前はイビキや寝言がすごかったんです。でも、ダービーを勝ったら、ピタッと止まった(笑)。そこで初めて父が背負っていたプレッシャーの大きさを感じましたし、よかったな、救われたなと思いました。

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▲「よかったな、救われたなと思いました」(撮影:下野雄規)


──ダービー前にインタビューをさせていただいたときには、プレッシャーなど微塵もお見せにならなかったのに。

悠衣 “魅せる”のが上手いんですよ。父はエンターテイナーなので(笑)。まぁネットで叩かれたりもしていましたからね。それを見て落ち込んでいた父も知っていますし、横で見ていて、本当に大変そうでした。

 でも、車の事業もそうですが、今まで自分の信念を曲げずにやってきた人。そういう強い信念を持っている人なので、いつかはやってくれるだろうと思っていました。それが叶ってよかったなと思いましたし、娘としてはホッとしたところがあります。

競馬はどの角度から入っても、みんなに夢を見せてくれるスポーツ


──『インゼルレーシング』がスタートしたことで、悠衣さんご自身も競馬に深く関わるようになった今、改めて競馬の魅力について、どのように感じていらっしゃいますか?

悠衣 隣で武さんと父の物語を見てきたので、本当に夢のあるスポーツだなと思います。ダービーのときも、6万人の観客が一体となって“豊コール”に沸いていたじゃないですか。あれは本当に感動しましたし、鳥肌が立ちました。

 ほかのスポーツの大半は、敵と味方がいて、会場もそれぞれのファンで二分されていることを思うと、あれだけその現場にいる人たちが一体となるスポーツって、競馬くらいなんじゃないかなと思いました。

 ギャンブルとしての魅力はもちろんですが、夢やロマンもあって、血統のスポーツという見方もできます。クラブを始めて、そういうところに魅力を感じている方も多いことを実感していますし、そういう意味では、どの角度から入ってもみんなに夢を見せてくれるスポーツであること、そこに大きな魅力を感じています。

(文中敬称略、後編へつづく)



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先行募集受付期間 10月1日(土)〜10月23日(日)
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▽インゼルサラブレッドクラブ公式HP
https://inseltc.com/

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ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

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