▲インゼルレーシング代表・松島悠衣氏へのインタビュー後編(撮影:榎本良平)
日本ダービーをドウデュースで制し、最初の所有馬がデビューしてから8年足らずでダービーオーナーとなった松島正昭氏(キーファーズ代表)。かねてより公言されてきた「武豊騎手と凱旋門賞を勝つ」という最大の目標に向けて、夢の駒を大きく進めました。
ファンとして馬主として、競馬を楽しむ父の姿を間近で見てきた娘の松島悠衣氏。現在は一口馬主クラブ「インゼルレーシング」の代表を務め、自身も競馬に深く携わっています。そんな悠衣氏に「松島家と競馬」についてお話しいただきました。
(取材・文=不破由妃子)
改めて“武豊”の威力を感じています
──悠衣さんはいまや、『インゼルレーシング』の代表となったわけですが、約3年前にお父さまが、突然「クラブをやるぞ」と言い出されたそうですね。
悠衣 そうなんです。父は閃き型で、いつも突然なので(笑)。まさか自分が…とは思いましたが、いろいろな方にお話を聞いたり、大学院でも競走馬業界について研究したりしていたなかで、けっこうクローズな業界だなとは思っていたんです。
自分が代表になることが決まったときは、逆にそこにやり甲斐を感じたといいますか、おもしろそうやなと思いました。クラブをきっかけにさらに競馬人口を増やして、競馬業界に微力ながら貢献できたらと思っています。
──それまでにも競馬関連事業に携わられていたのですか?
悠衣 いいえ。基本的に、父がひとりでやっていましたから。
──いきなりクラブの代表という重責を背負うことになって、最初は戸惑いもあったのでは?
悠衣 父はもともとチャレンジ精神の塊で、私もなんでもチャレンジさせてもらえる環境で育ったので、戸惑いはありませんでしたね。むしろすぐに「やろう!」と思えました。もちろん、父が後ろで支えてくれるというのも大きいです。
▲突然「クラブをやるぞ」と言い出されたとのこと(撮影:榎本良平)
──お父さまは閃き型だとおっしゃっていましたが、悠衣さんも同じだったり?
悠衣 はい。そのあたりは父と似ていると思います。父の直感は的を射ていることが多くて、結果的に「あ、これをやりたかったんやな」とあとからわかることが多いんです。
自動車の事業をやっているときも、常々「ブレずにやり続ける事が大事や」と言っていて、馬主になった当初から「武豊さんと凱旋門賞に行く」と言い続けてきたのも、今となってはブランディングだと思うんですね。
──確かに。松島オーナーの夢として、ファンも含めた競馬界の共通認識になりつつありますものね。
悠衣 そうですよね。もちろん、最初からブランディングに重きを置いてやってきたわけではないけれど、そういう信念を持って取り組むことがビジネスでは重要だとわかっているといいますか。
だから、結果論ではありますが、武豊さんとの夢も、そのストーリーに感動してみんながついてきてくれる。初めから狙っていたわけでは決してないのですが、やっぱりこうしてつながってきたなと思っています。
その意見は、インゼルの入会アンケートの半分近くに書いてありました。武さん、本当にすごい。改めて、“武豊”の威力を感じています。
▲信念がいつの間にかブランディングに(撮影:榎本良平)
──6月12日には、クラブ法人として史上初となる初出走初勝利(函館5R・2歳新馬・クリダーム)を決め、9月19日終了時点で15戦3勝、2着1回。まだスタートしたばかりではありますが、毎週どんな思いで所属馬の走りを見ていらっしゃいますか?
悠衣 やっぱりキーファーズの馬を見ていたときとは違う感覚ですね。会員さんがいらっしゃるので、負けてしまうと申し訳ない気持ちになるというか…。
自分が期待していた馬が負けてしまって「アカンかった…」と落ち込んでいたりすると、父にパン! と肩を叩かれて、「そんなに甘ないで! いちいち気にしたらアカン!」と言われています(苦笑)。毎週本当にドキドキですが、責任感はすごく感じていますね。
▲インゼルレーシング初出走初勝利を飾ったクリダーム(c)netkeiba.com
──クラブの運営を通して、これから競馬サークルで実現させていきたいことなど、何かビジョンはありますか?
悠衣 パンフレットにもコンセプトとして掲載しているんですが、やっぱり世界を目指していきたいなとは思っています。クールモアさんなど、海外の牧場さんにも協力していただいているので、日本にとどまらない夢のあるクラブとして、世界にも日本馬を輩出できるような強いクラブを目指したいです。
あとはやっぱり、引退馬のケアですね。
──お父さまも、繁殖牧場の経営に意欲を見せていらっしゃいますね。
悠衣 そうですね。それこそ、川上から川下までみたいな感じで。グループとして今は馬運車を作っていて、引退馬の支援団体の方たちに提供しているんですけど、そういう活動も続けながら、これからも競馬界にいい循環をもたらすようなグループでありたいと思っています。
引退馬支援については、世界的な問題として耳目を集めていますからね、そこは恐れずに。しっかりと現実と向き合って、そのうえでできることを探っていかなければという思いです。競馬を持続させるためにも、そこのケアには力を入れていきたいですね。
▲日本にとどまらず世界へ、そして引退馬支援も(撮影:榎本良平)
──代表としての夢は何ですか?
悠衣 まずは、クラブから送り出した馬が、世界の大きいレースを勝つことです。グループとしては、父の繁殖牧場で生まれた馬をクラブで走らせて、最後は養老牧場でのんびりと余生を送ってもらう。そういう大きな循環が可能なグループを作りたいというイメージを持っています。
──『インゼルレーシング』ならではの強味や特色はありますか?
悠衣 日本一の社台グループ、海外の牧場からはクールモア、さらに日高のさまざまな牧場さんにもご協力いただいて、血統のバリエーションも含め、会員さんの“選ぶ楽しみ”をとても意識して馬を集めています。あと、特色といえば「Fun Fund」ですね。
──全頭パッケージですよね。画期的だなと思いました。
悠衣 競馬界の裾野を広げることを意識して取り入れてみました。全頭パッケージであれば、費用も抑えられますし、ほぼ毎週所有馬が出走する状況になるかと思いますので、毎週末のエンターテインメントとして競馬を楽しんでもらえるのではないかと思っています。気軽に競走馬を所有する楽しみを感じてもらえるはずです。
▲「Insel Fun Fund」はほぼ毎週所有馬が出走する楽しみがある(撮影:榎本良平)
──今日は本当にありがとうございました。最後に、いよいよドウデュースが出走する凱旋門賞が近づいてまいりましたが、悠衣さんご自身の期待のほどをお聞かせください。
悠衣 武さんなら、やってくれるでしょう! 今年かもしれないし、来年以降かもしれませんが、いつかは絶対に夢を現実のものにしてくれると信じています。
──ちなみに、凱旋門賞が間近に迫ったお父さまの様子はいかがですか?
悠衣「はよ終わってほしいわ…」と言ってます(笑)。私も緊張しているのか、朝方にハッと起きてしまうことがあるくらいですから、父の緊張たるや…。きっと眠りも浅いでしょうから、またダービー前のようにイビキをかいているでしょうね(笑)。
ドウデュース、そして武豊さん、関係者のみなさんには、本当に頑張ってほしいです!
(文中敬称略、了)
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