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【天皇賞(秋) AI予想】どちらを信じる!? AIは好走馬の傾向から外れている馬を指名

  • 2022年10月24日(月) 18時00分

アスクビクターモアが菊花賞制覇(c)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

7番人気以下の伏兵がほとんど上位に食い込めていない


AIマスターM(以下、M) 先週は菊花賞が行われ、単勝オッズ4.1倍(2番人気)のアスクビクターモアが優勝を果たしました。

伊吹 GIウイナーが不在で、やや寂しいメンバー構成と見ていた方も少なくなかったはずですが、終わってみればコースレコード決着。非常にハイレベルな一戦だったと言って良いのではないでしょうか。勝ったアスクビクターモアはスタート直後から積極的に出していき、道中は先頭のセイウンハーデス(17着)からやや離れた2番手を追走。4コーナーでセイウンハーデスをかわし、ゴール前の直線に入ったところで後続を大きく引き離しています。

 さすがに最後は脚が上がったようで、中団から伸びたボルドグフーシュ(2着)やジャスティンパレス(3着)に差を詰められたものの、しぶとく粘り切ってゴール。田辺裕信騎手の思い切ったレース運びも、それに応えたアスクビクターモアの走りも、チャンピオンの称号に相応しいものでした。

M アスクビクターモアは日本ダービーで3着に、皐月賞で5着に食い込んでいた馬。実績馬が貫録を見せたとも言えますね。

伊吹 連勝式の合成オッズを見る限りでは単勝1番人気のガイアフォース(8着)と同じくらいの支持を集めていましたが、特別登録を見た段階ではアスクビクターモアがやや抜けた1番人気になると思っていたので、素直に信頼しようと考えていた方からすると魅力的なオッズだったはず。皐月賞や日本ダービーで連対を果たした馬がいないこともあり、新興勢力の台頭に期待した方が多かったのでしょう。ご存じの通り、3着のジャスティンパレスも2歳時にホープフルSで2着となった馬。今春までの実績や大舞台での経験が少々軽んじられていたかもしれませんね。

M アスクビクターモアは皐月賞を除くすべてのレースで3着以内に好走しているうえ、この距離もまったく問題なくこなしました。古馬が相手となる今後も、それなりに注目を集めるのではないかと思います。

伊吹 まだまだ奥がありそうな血統ですし、さまざまなタイプのレースに対応可能であることは証明済み。 来シーズン以降も古馬中長距離戦線を盛り上げてくれるはずです。ただ、これだけパフォーマンスが安定していると、馬券的には扱いが難しくなる可能性もありそう。どこで買うかはもちろん、どんなタイミングで逆らうかも今のうちにイメージしておくべきでしょう。

M 今週の日曜東京メインレースは、各カテゴリのトップホースが一堂に会する伝統の一戦、天皇賞(秋)。昨年は単勝オッズ3.4倍(3番人気)のエフフォーリアが優勝を果たしました。ちなみに、その2021年は2着が単勝オッズ2.5倍(1番人気)のコントレイル、3着が単勝オッズ2.8倍(2番人気)のグランアレグリアで、3連単の配当は2040円どまり。どちらかと言うと堅く収まりがちな印象があります。

伊吹 アーモンドアイが連覇を果たした2019年と2020年も3連単の配当は1万円未満。近年は人気薄の馬がほとんど上位に食い込めていません。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、単勝7番人気以下で馬券に絡んだのは、2015年2着のステファノス、2016年2着のリアルスティール、2017年3着のレインボーラインだけでした。



M 逆に、単勝1番人気馬は10頭中9頭が3着以内を確保。無理に逆らわない方が良さそうですね。

伊吹 2018年の天皇賞(秋)は単勝1番人気のスワーヴリチャードこそ10着に敗れてしまったものの、単勝2番人気、かつ連勝式ならほぼ同じくらいの支持を集めていたレイデオロが優勝を果たしています。人気の中心となるくらいの馬は、相応に高く評価すべきでしょう。

M そんな天皇賞(秋)でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ジャックドールです。

伊吹 なるほど。話の流れからすると「相応に高く評価」せざるを得ない一頭。Aiエスケープも「妙味ある伏兵は見当たらない」と結論付けたのではないかと思います。

M ジャックドールは昨年9月に1勝クラスを勝ち上がり、そこから5連勝で今春の金鯱賞を制覇。GI初挑戦の大阪杯では5着に敗れてしまったものの、仕切り直しの一戦となった前走の札幌記念で自身2度目の重賞制覇を果たしました。おそらく今回も上位人気グループの一角を占めることになるでしょう。

伊吹 前走の札幌記念で控える競馬を難なくこなした分、さらに評価が高まった印象。3歳馬イクイノックス、日本ダービー馬シャフリヤールと同じくらいの支持を集めそうですね。Aiエスケープの見立てを踏まえたうえで、私はレースの傾向から好走確率を見積もっていきたいと思います。

M ジャックドールはGIIを2勝していますが、この実績はどのくらい高く評価できるものなのでしょうか。

伊吹 残念ながら、十分な実績とは言えません。過去10年の3着以内馬30頭中26頭は、既にGIを勝っているか、GIで勝ち馬に0.1秒差まで迫ったことのある馬でした。


M これはわかりやすい。ビッグレースで優勝争いに絡んだことがある馬でないと、上位に食い込むのは難しいようですね。

伊吹 “JRA、かつGIのレース”において“着順が1着、もしくは1位入線馬とのタイム差が0.1秒以内”となった経験のない馬は、2016年以降の過去6年に限ると[0-0-0-41](3着内率0.0%)。近年は特にこの傾向が強まっています。

M ジャックドールは今回が2度目のGI挑戦。2走前の大阪杯では勝ったポタジェに0.5秒の差をつけられてしまいました。実績が足りない分を潜在能力の高さでどれくらい補えるか──といったところでしょうか。

伊吹 おっしゃる通りです。あとはコース適性も重要なポイント。2016年以降の過去6年に限ると、馬券に絡んだ馬の大半は、東京か京都のビッグレースで出走メンバー中上位の上がり3ハロンタイムをマークしつつ好走したことのある馬です。


M こちらもはっきりと明暗が分かれていますね。

伊吹 中山や阪神のGIでしか上位に食い込んだことがない馬、そして先行力の高さを活かしたいタイプは強調できません。

M ジャックドールはGIで3着以内となった経験がないうえ、東京のGIを使うのは今回が初めて。さらに言うと、どちらかと言えば「先行力の高さを活かしたいタイプ」です。

伊吹 正直なところ、このレースを目標にすると知った段階で「おそらく苦戦するだろうな……」と思っていました。近年の天皇賞(秋)には外枠不利という傾向もありますから、枠順次第ではさらに厳しい競馬となってしまう可能性があります。


M 外寄りの枠を引いてしまった馬は、扱いに注意したいところですね。

伊吹 馬場のコンディションにもよるとはいえ、よほど外枠有利な状況となっていない限り、手頃な枠に入った馬の中から連軸を選ぶべきでしょう。

M それにしても、Aiエスケープと伊吹さんの見解がここまで綺麗に割れるとは……。

伊吹 Aiエスケープの実力は良くわかっているのですが、それでも重いシルシを打つわけにはいきませんね。ただ、上位人気馬が強いレースなのは確かですし、Aiエスケープが有力視しているのならば無理に嫌う必要はないのかも。枠順やオッズも加味したうえで最終的な評価を下したいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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