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【マイルCS AI予想】意外と狙い目!? AIの注目馬は大きな不安要素が見当たらない

  • 2022年11月14日(月) 18時00分

単勝オッズ8.1倍(4番人気)のジェラルディーナが優勝(c)netkeiba.com


netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)


上位人気グループの馬が総崩れになる可能性は低そう


AIマスターM(以下、M) 先週はエリザベス女王杯が行われ、単勝オッズ8.1倍(4番人気)のジェラルディーナが優勝を果たしました。

伊吹 1コーナーを5番手以内で通過した5頭がすべて13着以下に敗れる前崩れの競馬。この展開をどれくらいの確度で予測できていたかが、レースの、そして馬券の明暗を分けた一戦と言えるでしょう。ジェラルディーナは1コーナーを11番手で、4コーナーを9番手で通過。道中のパトロールビデオを確認してみると、先行集団から離れ過ぎないようにある程度は促していましたが、馬群の中に入っていこうという素振りはなく、終始外のポジションでレースを進めています。仕掛け始めたのは4コーナーに差し掛かったあたり。ゴール前の直線に入ったところで早くも周囲の馬を振り切り、先に抜け出したウインマリリン(2着同着)と馬体を併せることもなく、馬場の外めを真っすぐに伸びて差し切りました。

M 結果的に1着から4着までを7〜8枠の馬が占めたうえ、ライラック(2着同着)は4コーナーを13番手で、アカイイト(4着)は4コーナーを15番手で通過した馬。有利な枠順や展開を活かし切っての勝利と言えそうですね。

伊吹 ただ、出走メンバー中上位の能力がなければあれだけ突き抜けるのは不可能だったと思いますし、C.デムーロ騎手の的確なポジショニングや優れた騎乗技術がなければ、もう少し苦しい競馬になっていたかもしれません。枠順や展開に恵まれたわけではなく、チャンピオンの称号に相応しい実力の持ち主が、順当にその持ち味を発揮できたと見るべきでしょう。

M ジェラルディーナは待望のGI初制覇。母は2012年に3歳牝馬三冠を達成しているジェンティルドンナで、陣営や一口出資している会員の皆さんにとっても感慨深い一勝になったのではないかと思います。

伊吹 今年9月26日公開分の当コラムでも触れた通り、私はジェンティルドンナをPOGで指名していました。直接の関係者や出資されている皆さんほどではないにせよ、これくらい縁のある馬が活躍してくれるとやっぱり嬉しいですね。2走前にはオールカマーを快勝していますし、少なくともゴール前の直線が短いコースであれば、牡馬のトップクラスとも互角にやりあえるはず。今後が楽しみで仕方ありません。



M 今週の日曜阪神メインレースは、現役屈指のマイラーが一堂に会する王座決定戦、マイルCS。昨年は単勝オッズ1.7倍(1番人気)のグランアレグリアが優勝を果たしました。なお、2020年のマイルCSもグランアレグリアが単勝オッズ1.6倍(1番人気)の圧倒的な支持に応えて快勝しています。


伊吹 2020年が3連単4480円、2021年が3連単5460円と、極端な低額配当決着が続いているレースですね。2012年以降の過去10年を振り返ってみると、3連単の配当が6万円を超えたのは、単勝オッズ18.1倍(8番人気)のダノンシャークが勝った2014年(19万3290円)のみ。単勝人気順別成績を見ても、人気薄の馬はほとんど上位に食い込めていません。


M 単勝1番人気馬の好走率は何とも言えない水準ですが、単勝2〜3番人気馬や単勝4〜6番人気馬は相当に健闘していると言って良いのではないでしょうか。

伊吹 より細かく見ていくと、単勝5番人気以内の馬は2012年以降[9-10-6-25](3着内率50.0%)、単勝6〜10番人気の馬は2012年以降[1-0-4-45](3着内率10.0%)、単勝11番人気以下の馬は2012年以降[0-0-0-75](3着内率0.0%)でした。どんなファクターを重視するにせよ、この「とにかく堅く収まりがち」という傾向は強く意識した方が良いと思います。

M そんなマイルCSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、サリオスです。

伊吹 なるほど。基本的に“穴党”であるAiエスケープの注目馬としては意外なチョイスですが、話の流れを考えると、むしろ妥当なところかもしれませんね。

M サリオスは2019年の朝日杯FSを制しているGIウイナー。前走の毎日王冠も単勝1番人気の支持に応えて快勝しました。当然ながら、今回も相応の注目を集めることになるでしょう。

伊吹 ただ、2020年のマイルCSで5着に、2021年のマイルCSで6着に敗れている分、このレースに対する適性を不安視する向きはありそう。少なくとも、断然の1番人気となる可能性は低いはずです。Aiエスケープがこの馬に注目しているという事実を踏まえつつ、マイルCSで好走を果たした馬の傾向を紹介していきたいと思います。

M まずチェックしておくべき点はどのあたりでしょうか?

伊吹 直近のパフォーマンスですね。前走好走馬がそれなりに優秀な成績を収めている一方、大敗直後の馬は苦戦していました。


M これはわかりやすい。こういった傾向があるレースだからこそ「とにかく堅く収まりがち」なのかもしれません。

伊吹 そういうことだと思います。前哨戦で大きく崩れてしまった馬は、たとえ実績上位でも疑ってかかるべきでしょう。

M サリオス自身も、前走の安田記念で8着に敗れていた2021年は6着どまり。毎日王冠を勝って臨んだ2020年も5着に敗れているとはいえ、少なくとも昨年よりは高く評価して良さそうです。

伊吹 あとは同年に施行された安田記念以降のレースにおける戦績も重要なポイント。2015年以降の3着以内馬延べ21頭中14頭は“同年6月以降、かつJRA、かつ出走頭数が13頭以上、かつGI・GIIのレース”において3着以内となった経験がある馬でした。


M 安田記念より前のレース、少頭数のレース、GIIIやオープン特別のレースでしか好走していない馬は過信禁物、と。

伊吹 ちなみに、“同年6月以降、かつJRA、かつ出走頭数が13頭以上、かつGI・GIIのレース”において3着以内となった経験がなかった馬のうち、“同年、かつJRA、かつ1800m超、かつGI・GIIのレース”において5着以内となった経験もなかった馬は、2015年以降[0-0-0-74] (3着内率0.0%)とまったく上位に食い込めていません。中距離路線から転向してきたばかりの馬ならともかく、そうでない馬がこの条件に引っ掛かっていたら、思い切って評価を下げるべきでしょう。

M サリオスは前走の毎日王冠こそ10頭立てでしたが、3着に食い込んだ2走前の安田記念が18頭立て。こちらの傾向も強調材料と言えますね。

伊吹 もうひとつ挙げておきたいのは生産者別成績。2016年以降の過去6年に限ると、いわゆる“社台グループ”の生産馬が好走馬の大半を占めていました。


M 当たり前と言えば当たり前の傾向にも思えますが、これだけ偏っているとさすがに無視できませんね。

伊吹 生産者が社台ファームの馬だけは2016年以降[0-1-0-10] (3着内率9.1%)とやや苦戦していたものの、他のブリーダーは好走率も優秀。ある程度は意識しておくべきでしょう。

M サリオスはノーザンファームの生産馬です。

伊吹 レースの傾向を見る限りだと、無理に逆らう必要はなさそう。私自身、ここ2年のマイルCSで好走できていない点が嫌われるようならば積極的に狙ってみようと考えていました。Aiエスケープも同じような評価を下しているわけですし、あとはオッズを加味したうえで買い目上の最終的な位置付けを決めたいと思います。

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競馬評論家。JRAの公式ホームページ内「今週の注目レース」にて“データ分析”のコーナーを、TCK(東京シティ競馬)の公式ホームページ内「分析レポート」にて重賞競走のデータ分析を担当しているほか、グリーンチャンネル、JRAのレーシングプログラム、『週刊アサヒ芸能』、『競馬王』などさまざまなメディアを舞台に活動している。主な著作に『WIN5攻略全書 回収率150%超!“ミスターWIN5”のマインドセット』、『コース別 本当に儲かる騎手大全』シリーズ、『コース別 本当に儲かる血統大全』シリーズ、『ウルトラ回収率』シリーズ(いずれもガイドワークス)など。

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