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母は3歳時から世代トップ、娘は父の影響で晩成傾向

  • 2022年11月14日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・11/13 エリザベス女王杯(GI・阪神・芝2200m)
 中団の外を追走したジェラルディーナが大外から豪快に突き抜けました。重馬場となって内ラチ沿いが荒れていたこともあり、掲示板に載った5頭はすべて二桁馬番。ジェラルディーナは大外18番枠でした。

 母ジェンティルドンナは牝馬三冠、ジャパンC連覇を含めてGIを計7勝した女傑で、繁殖牝馬としてもGI馬を出し、非凡な資質をあらためて証明しました。母は3歳時から世代トップでしたが、娘は4歳秋に本格化。これは晩成傾向を伝える父モーリスの影響でしょう。

 ピクシーナイト、ジャックドールなどの父で、3歳夏を越したあたりから本格化してくる仔が目につきます。日本だけでなく、シャトル種牡馬として供用されたオーストラリアでも、ヒトツ、マズ、キボウと3頭の重賞勝ち馬を出し、なかでもヒトツはヴィクトリアダービーなど3つのG1を制覇しました。

「モーリス×ディープインパクト」は他にルークズネスト(ファルコンS)が重賞を勝っており、連対率24.2%、1走あたりの賞金額273万円。これはモーリス産駒全体の19.2%、187万円を大きく上回っており、ニックスといえるでしょう。ちなみに、ジェラルディーナもルークズネストも、ダンジグのクロスを持つという共通点があります。

・11/12 デイリー杯2歳S(GII・阪神・芝1600m)

 ハナを切ったオールパルフェがマイペースに持ち込んで逃げ切りました。前後半800mのラップは、47秒3-45秒9ですから、大野騎手がスローの流れにうまく落としました。父リアルスティールはこの世代が初年度産駒で、重賞初制覇。

 JRAの新種牡馬ランキング(賞金額)ではマインドユアビスケッツを抜いて首位に浮上しました(ホッカイドウ競馬に遠征して重賞エーデルワイス賞を勝ったマルカラピッドの賞金を加えるとマインドユアビスケッツが首位)。JRA2歳ランキングでは11位です。仕上がりが早いタイプとはいえないので、これから成績は良くなっていくはずです。

 リアルスティールの2代母モネヴァッシアは、名種牡馬キングマンボの全妹にあたる良血。母の父ルーラーシップはキングマンボの直系の孫なので、オールパルフェは「モネヴァッシア=キングマンボ3×4」という全きょうだいクロスを持っています。それと同時にサンデーサイレンス3×4も持っていますが、現時点でリアルスティール産駒におけるサンデーサイレンスのクロスは、父の平均以上の成績を挙げています。

今週の血統注目馬は?


・11/20 秋明菊賞(2歳1勝クラス・阪神・芝1400m)
 阪神芝1400mと相性のいい種牡馬はリオンディーズ。連対率24.1%は、2012年以降、当コースで産駒が20走以上した74頭の種牡馬のなかで第3位。当レースに産駒が登録している種牡馬のなかではナンバーワンです。当レースにはスーパーアグリとヒルデブランドの2頭が登録しています。

 注目したいのは前者。新馬戦を勝ったばかりですが、そのレースは今回と同じ阪神芝1400mが舞台で、馬群のなかで折り合い、直線で難なく抜け出すという満点をつけられるレースぶり。レース上手であることは2歳戦で大きな武器です。

今週の血統Tips


 マイルチャンピオンシップは1984年にレースが創設され、今年で39回目を迎えます。この間、連覇を達成した馬が6頭いることは目を惹きます。同じ期間、安田記念を連覇した馬はわずか2頭しかいません。まぎれが少なく、実力馬が勝ちやすい舞台といえるでしょう。

 レース創設直後、84、85年に連覇したニホンピロウイナー(父スティールハート)は、軽快なスピード馬というより“高速重戦車”といった迫力を感じさせる馬でした。84年の単勝配当は120円。ニッポーテイオーが勝った87年と並び、レースにおける単勝最少配当です。

 ニホンピロウイナーはその後、種牡馬としても成功し、ヤマニンゼファーやフラワーパークといった名馬を出しています。ヤマニンゼファーは数少ない安田記念連覇馬で、天皇賞・秋も勝ちました。フラワーパークは高松宮杯(現高松宮記念)とスプリンターズSを制し、繁殖牝馬としてディープインパクトとの間にヴァンセンヌ(現種牡馬)を出しました。

 ニホンピロウイナーの血はいまもわが国のサラブレッドのなかに受け継がれています。先週の土曜日、阪神の岸和田Sを逃げ切ったニホンピロスクーロにも、ニホンピロウイナーの血が含まれています。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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