▲マイル重賞で活躍したグァンチャーレのクセ馬エピソードに迫る(提供:北出成人厩舎)
不定期連載「クセ馬図鑑─愛すべき強者たち─」。このコラムでは、時にクスッと笑えるような、可愛くてどこか憎めない競走馬の個性にフィーチャーします。
第4回は2015年シンザン記念を勝ったグァンチャーレ。現在は種牡馬として過ごしているのですが、「男になれてよかったね」と思わず言いたくなる現役時代のエピソードがありました。3着内率45%という堅実な走りからするとちょっと意外な彼の素顔について北出成人調教師に伺いました。
(取材・構成=大恵陽子)
ゲートを出てくれなくて、試験合格まで6週間(苦笑)
──グァンチャーレは武豊騎手とコンビを組み、シンザン記念で見事な差し切り勝ちを決めました。
北出 その1つ前の東スポ杯2歳Sで武豊騎手が乗ったんですけど、直線で前が詰まってしまってどうしようもなく、全然競馬ができずに7着でした。レースから上がってくるなり「すみません。申し訳ないです。もしよければ、シンザン記念に行ってもらえませんか」と武豊騎手が言ったんです。それでシンザン記念を勝ってくれたもんやから、「やっぱりこの人はすごいな」と思いました。
▲武豊騎手自ら進言したシンザン記念を勝利(c)netkeiba.com
──次走を進言して、しっかり勝つなんてカッコよすぎます。3歳の年明けで重賞を勝つというのも夢が広がりますね。
北出 勝ってくれたことによってクラシックも意識するようになりました。皐月賞は当該週にツメを傷めてやむなく断念しましたけど、日本ダービーには出走しました。厩舎にとってダービー初出走だったんですけど、装鞍所から雰囲気が違って、やっぱりいいですよね。
──ダービーの直線でも差し脚を見せるなど差し馬のイメージがあったのですが、気づくと先行して結果を残すようになっていました。
北出 新馬で入厩した時、ゲートをなかなか出てくれなくて、ゲート試験に合格するまで6週間もかかった馬なんです。ゲート試験にこれだけ時間がかかった馬は私も初めてでした(苦笑)。それでも、デビュー4戦目の時にチークピーシズを着けてゲート練習をしたら、初めてレースでポーンと出て逃げたことがあってね。
──やればできる子ではあったと?
北出 最後はスタートが上手な馬になっていました。馬が走ることに集中するようになったからだと思いますし、ダービー後は1800mや1600mといった距離適性のあるレースに絞って走っていたからだと思います。
▲古馬になってからは好位からの競馬で堅実な走りを見せた(c)netkeiba.com
──18年スワンSは僅差の3着、翌年のマイラーズCは逃げ粘ってダノンプレミアムの2着と、古馬になってからも重賞で好走しました。