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【スタート論・後編】毎日王冠も危機一髪! 川田流「ゲートの中の過ごし方」を語る【In the brain】

  • 2022年12月01日(木) 18時01分
“VOICE”

▲「スタート論」後編(撮影:福井麻衣子)


競馬において最も危険であり重要なスタートを決めるために、ジョッキーはあらゆる方法で手を尽くしていることが前編で語られました。後編では10月の毎日王冠で起きたアクシデントを例に、ゲート内での過ごし方から、二の脚のつけ方を解説します。

前編で紹介したゲートを嫌がる馬に限らず、おとなしい馬であってもゲートを待つ時間は苦痛であり悪さをし始めることもあるとのこと。そんなゲートの中でのポイントは「馬の動きを止めない」ことだと言います。

(取材・構成=不破由妃子)

「これはヤバイ!」毎日王冠レイパパレの例


 前回に続き、スタートについてのお話です。

 最後の馬がゲートに入ってから前扉が開くまでの時間は、よほどのトラブルがない限り、ほんのわずかです。でも、そのわずかな時間に、いいバランスでいいスタートを切るために、僕たちジョッキーはいろいろな策を施しています。その内容は人それぞれで、スタートに対する考え方や馬の動きに対する考え方など、そのジョッキーが何を重視しているかが反映される時間かもしれません。

 僕は、ゲートに入ったら、まず馬の首筋を撫でます。狭い空間に入っていくのはストレスが掛かることですから、まずはちゃんと入ったことを褒めてあげる。まさにレースが始まろうとしている瞬間なので、馬の気持ちも高ぶっていますから、落ち書かせるために、という意味合いも大きいです。

 その後、ゲートのなかで待つ時間が始まるわけですが、僕が大事にしているのは、馬の気持ちをどう誤魔化しておくかということ。

“VOICE”

▲馬の気持ちをどう誤魔化しておくか(ユーザー提供:クロージャーさん)


 たとえば、おとなしい馬だったとしても、いつ開くかわからないゲートに真っ直ぐと対峙させていたら、集中力が切れる。その結果、悪さをし始めたり、逆にゲートが開いても出なかったりといったことにもつながります。

 だから、「まだ出ないんだよ」「今は待つ時間だよ」ということを伝えるために、僕はうるさい馬であってもおとなしい馬であっても、気持ちを誤魔化すために顔を左右に振らせます。前扉に集中させるのではなく、顔を左右に向けさせ、足踏みをさせながらゲートが開くのを待ちます。

 この足踏みというのは、ゴルファーを想像してもらうとわかりやすいと思うのですが、彼らも構えてから実際に打つまで、クラブを握り直したり足踏みをしたり、ちょこちょこと動いてますよね。あれは、自分が気持ちよく構えられて、気持ちよく動き出せる態勢を作っているわけですが、馬も一緒で、ジッとした状態から急に動き出すのはとても難しいんですよ。

 競馬の場合、ゲートが開くタイミングこそ自分では決められないけれど

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1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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