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【石神深一×藤岡佑介】ジョッキー間で論争が勃発!「オジュウチョウサンは有馬記念で足りるのか?」 /第2回

  • 2022年12月07日(水) 18時01分
“with佑”

▲オジュウチョウサンが平地に挑戦した2018年を振り返る(撮影:下野雄規)


オジュウチョウサンにとって初のJGI中山大障害は6着という結果でしたが、石神騎手は確かな手応えを感じていました。そこでオジュウの持つ能力を最大限引き出すためメンコにある細工を施すことに。すると普段の追い切りから激変、一気に障害の王者へ昇り詰めることになりました。

そしてJGI5勝を含む障害重賞9連勝という大記録を打ち立てたオジュウは2歳時以来の平地競走に挑戦することに。有馬記念出走へ向け、武豊騎手とのコンビ結成というビックニュースに競馬ファンは大いに盛り上がりましたが、主戦である石神騎手は自分が乗れないことに相当な悔しさを感じていたとのこと。そんな2018年シーズンを振り返ります。

(取材・構成=不破由妃子)

「オジュウ勝つかも!」改めてすごい馬だと実感した有馬記念


──2015年の中山大障害は6着でしたが、最後の障害を飛んでから、ものすごい脚を使ったとのこと。石神さんは、そこに能力の片鱗を見出したんですね。

石神 はい。2015年の大障害が終わったあと、和田(正一郎)先生に「まったく全力で走ってない」と伝えました。なんとか前進気勢を出せないかと先生と相談した結果、2016年からメンコを外してみたんですよね。

──メンコの耳の部分だけ外したんでしたっけ?

石神 そうです。返し馬までは耳覆いも着けたままで行きたかったので、ゲート裏で耳の部分だけパカッと取れるように、マジックテープになっていて。厩務員さんが馬具屋さんに特注して作ってもらったんです。

佑介 メンコを外すタイミングって難しいですよね。

石神 そうだね。オジュウの場合、普段の調教でも音にすごく敏感なんだよ。ゲート練習中も、ゲートが開く音がすると吹っ飛んでいくくらい。だから、もしかしたら舌鼓(ゼッコ)に反応してくれるんじゃないかと思って。

──舌を鳴らす合図ですね。

石神 そうです。だから、耳覆いを外して調教で試してみたんです。そうしたら、すごい追い切りができて。それまでは追い切りでも動かなくて、チップで70−40(5F−3F)が精一杯だったんですけど、耳覆いを外した途端、チップで66秒、馬なりですよ。もう抜群の動きでした。で、「先生、これはもしかしたら…」という話になって。

“with佑”

▲耳の部分だけ取り外せる特注のメンコでオジュウは激変(撮影:下野雄規)


佑介 ムチを入れようが拍車を付けようが進んで行かない馬が、耳を覆っていた布を一枚外しただけで、真剣に走るようになる。馬ってそういう生き物だっていうこと、オジュウの話を通して読者の人にも伝わればいいなぁ。

 でも、さっきも言ったように、外すタイミングって本当に難しい。オジュウの場合、石神先輩がいいタイミングで進言したから、上手くハマったっていうのはありますよね。長いあいだ乗っていて、変化をつぶさに感じてきたからこそ。

──音に敏感な馬の耳覆いを外すということは、当然リスクもありますよね。

佑介 リスクもメリットも両方あります。外したことで、より敏感に反応するようになって、テンパったり引っ掛かったりするケースもある。

石神 リスクもあるけど、そのリスクをいかに調教で減らせるかだと思う。もちろんゲート練習でも、耳覆いを外して駐立の練習をするしね。なるべくリスクを減らして、メリットだけを得られるように、普段の調教から工夫したよ。

佑介 一緒に過ごす時間が長いと、そういう計算も立ちますよね。

石神 跨って調教して、最後に森林コースに行って…。もう付きっ切りだからね(笑)。そういう濃密な時間を過ごすなかで、オジュウの性格はだいぶつかんだ。

──石神さん以上に、オジュウを知っている人はいない。

石神 僕と…、あとは(武)豊さんも知ってると思いますよ

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JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

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1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

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