スマートフォン版へ

【石神深一×藤岡佑介】尾っぽをグルグル、鼻面が地面にスレスレ それが“調子がいいときのオジュウの姿”/第3回

  • 2022年12月14日(水) 18時01分
“with佑”

▲低いフォームのオジュウチョウサン(撮影:下野雄規)


「オジュウって、頭がめっちゃ低いじゃないですか」と佑介騎手から質問が。確かに他の馬に比べて重心の低いフォームが印象的なオジュウチョウサン。今回はそんなオジュウの走法について探っていきます。

ずっと騎乗している石神騎手も最初はそう思ったとのことですが、それでも絶対にバランスを崩さないんだそう。他にも実際に乗らないと感じることのできない様なオジュウから伝わってくる爆発力など、少しクセがありながらも周りに愛されるオジュウの姿を紹介します。

(取材・構成=不破由妃子)

厩務員さんは、そういうオジュウの走りを見て喜ぶんだよ


佑介 今日は、同じジョッキーとして、ぜひお聞きしてみたいことがありまして。オジュウって、頭がめっちゃ低いじゃないですか。だから、飛越を見ていると、素人目には怖さを感じるんですけど、石神先輩は全然怖がっていないように見える。ジョッキーとしては、頭を起こしたくなりませんか?

石神 ああ、最初は思ったけどね。でも、乗っていくうちに、「ここがこの馬の重心なんだな」と思って。だから、レースでは起こさなかった。

佑介 調教では起こして乗っているんですか?

石神 普段の調教ではガッツリ起こして、重心を後ろに戻す調教をしているんだけど、競馬でそれをやるとガチャガチャになってしまいそうで。だから、ゲートが開いたら、もうオジュウのリズムで走らせてる。アイツはね、低い姿勢でミスステップをしたとしても、絶対に着地でバランスを崩したりしないから。

佑介 すごいなぁ。

石神 そう、それがアイツのすごいところで。体幹とか、股関節の柔軟性がズバ抜けているんだと思う。普通の馬であれば、「ここから踏み切ったらひっくり返るだろうな」と思うところから踏み切っても、何事もなかったかのように着地して、次の障害に向かって行くんだよ。あの感覚はたぶん、ほかの馬では味わえないと思う。何事もなかったように走って行けるのはオジュウだからであって、普通はバランスを崩したり、最悪転倒したりしてるよ。

“with佑”

▲「あの感覚はたぶん、ほかの馬では味わえない」(ユーザー提供:natsumiさん)


佑介 石神先輩は、ジャンプジョッキーのなかでは鐙が短いほうだと思うんですけど、オジュウに乗るときって、ほかの馬に乗るときと鐙の長さは変えていますか? それとも一緒?

石神 最初は折り合いをつけるために短くしていたけど、「俺が落ちさえしなければ、これはずっと勝ち続けられるな」と思ってからは、2個くらい伸ばした。

佑介 そうなんですね。オジュウのバランスって、あんまり鐙が長いと乗りづらいポジションだと思うので、そのあたりも含めて、石神先輩のバランスはオジュウにフィットしているんだろうなと思っていました。

石神 佑介くんもわかると思うけど、ああいう馬って自分の体重が後ろに行けば行くほど引っ掛かってくるから、若干前目で我慢させるようにしてる。だから、最初は鐙も普通の馬より短くしていたんだけどね。ちょっと伸ばしてからは、とにかく落ちないようにと思って乗ってるよ。

佑介 ああ、なるほど。レースを見ていて思うのは、オジュウは全然疲れていないけど、石神先輩はめっちゃしんどそうだなって(笑)。直線も、オジュウは元気だけど、そこに持っていくまでがすごくきつそうに見えたから。

石神 体もそうだけど、精神的にやられているところもある(苦笑)。

佑介 そうですよねぇ。スタートからずっと周りからプレッシャーを受け続けるなか、いいポジションを取って、飛越も丁寧に飛ばして…ですもんね。

石神 あとは、危ない馬が近くにいるとき

続きはプレミアムサービス登録でご覧になれます。

登録済みの方はこちらからログイン

質問募集
with 佑 / 藤岡佑介
このコラムでは、ユーザーからの質問を募集しております。あなたから
コラムニストへの「ぜひ聞きたい!」という質問をお待ちしております。
質問フォームへ
with 佑とは
JRAジョッキーの藤岡佑介がホスト役となり、騎手仲間や調教師、厩舎スタッフなど、ホースマンの本音に斬り込む対談企画。関係者からの人望も厚い藤岡佑介が、毎月ゲストの素顔や新たな一面をグイグイ引き出し、“ここでしか読めない”深い競馬トークを繰り広げます。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1986年3月17日、滋賀県生まれ。父・健一はJRAの調教師、弟・康太もJRAジョッキーという競馬一家。2004年にデビュー。同期は川田将雅、吉田隼人、津村明秀ら。同年に35勝を挙げJRA賞最多勝利新人騎手を獲得。2005年、アズマサンダースで京都牝馬Sを勝利し重賞初制覇。2013年の長期フランス遠征で、海外初勝利をマーク。2018年には、ケイアイノーテックでNHKマイルCに勝利。GI初制覇を飾った。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング