天才イクイノックスの追撃をしのぎ切れるか
日本で最大の売り上げを誇るこのビッグレースは、チャンピオンシップ(選手権)でもない時代があった。かつて「毎日王冠(京都大賞典)→天皇賞(秋)→ジャパンC→有馬記念」のスケジュールがふつうであり、シーズン最後の一戦なので「もう疲れているのでは?」、とマイナスの要素があった。もっとも難しいコースの中山2500mも関係した。
だが、近年は出走レースを絞る陣営が増え、この夏以降に3戦したのは間を空けながらのジェラルディーナだけ。頂点に近いジャパンC組は2頭しかいない。このグランプリが複数の世代のエースが目標にする、中〜長距離の最強馬決定戦に変化している。
今年の大きなポイントはレースの流れ(展開)か。強力な先行タイプは少ない。タイトルホルダーは、まだパンチ不足だった昨年の有馬記念は5着。パンサラッサが飛ばし、レース全体の前後半バランス「1分12秒0-(6秒3)-1分13秒7」=2分32秒0の厳しいペースを、3コーナー過ぎから早めに捕まえに出て失速した。
4歳の今年、体調一歩だった中山2500mの日経賞を「前半1200m通過1分16秒9(推定)」のスローで逃げ切り、総合力と自信をつけた天皇賞(春)3200mは底力で7馬身差の独走。前後半バランスは力まかせに「1分37秒4-1分38秒8」だった。
パンサラッサが飛ばした阪神2200mの宝塚記念は2分09秒7のコースレコードで快勝。2番手から抜け出した自身の推定前後半バランスは理想に近い「58秒5-(12秒1)-59秒1」だった。国内の重要レースを3連勝。緩急のペースを自在にこなし、自分でレースを作れる先行型に成長している。
レースで主導権をにぎるレース運びは、ペースメーカーであり、格好の目標でもある。この形で天才イクイノックス【3-2-0-0】の追撃をしのぎ切れるかだが、中山2500mは直線の急坂を2回通過する。数字以上にきつい長距離戦に持ち込むことはできる。
凱旋門賞は豪雨の中、ブルーム(愛)に執拗に絡まれたが残り300mまで先頭を譲らなかった。主導権をにぎり、自身でレースを作れるタイトルホルダーから入りたい。
最近20年「3歳馬7勝、4歳馬8勝、5歳馬5勝。6歳上0勝」も有馬記念の特徴をストレートに示している。出走馬3頭だけの、3歳イクイノックス、ボルドグフーシュ、ジャスティンパレスを嫌うことはない。タイトルホルダー以外の4歳馬では、本物になったジェラルディーナ。評価落ちでも迫力の戻りつつあるエフフォーリア。5歳以上馬は9頭もいるが、今年になって芝に転向しジャパンCを制したヴェラアズールが筆頭。