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単勝オッズ90.6倍(14番人気)のドゥラエレーデが優勝(撮影:下野雄規)
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳"が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳"がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
上位人気グループの馬はやや期待を裏切りがち
AIマスターM(以下、M) 先日はホープフルSが行われ、単勝オッズ90.6倍(14番人気)のドゥラエレーデが優勝を果たしました。
伊吹 JRA-VANに記録がある1986年以降だと、単勝9060円というのは(JpnI・JGIを含む)JRAGI史上10番目の高額配当ですね。ただ、展開などに恵まれての勝利だったとは思いません。好スタートを決めつつトップナイフ(2着)を先に行かせ、道中は終始2番手を追走。3コーナー過ぎからはトップナイフについていく形で3番手以下との差を広げ、4コーナーを周ったところでは先頭を奪いに行っています。ここからトップナイフが差し返して一旦離されかけたものの、ドゥラエレーデもしぶとく食らい付き、再び並びかけたところがゴール。レースの序盤から主導権を握り、完全に勝ちパターンへ持ち込んだ逃げ馬を捻じ伏せたわけですから、相応に高く評価するべきでしょう。
M 鞍上のB.ムルザバエフ騎手はカザフスタン出身の30歳。2019年から4年連続でドイツのリーディングジョッキーとなっており、12月17日から短期免許で参戦中でした。
伊吹 今回が初めての短期騎手免許取得ということもあって、このホープフルSがJRA通算5勝目。芝のレースに限ると初勝利です。もっとも、先週の段階からコンスタントに穴をあけていて、12月17~18日の週は3着内率41.7%、複勝回収率124%、12月24~28日の週は3着内率53.8%、複勝回収率321%。年明けに改めて短期騎手免許を取得するようですし、今後も目が離せません。
M GIウイナーとなったドゥラエレーデの今後についてはいかがでしょう。
伊吹 母のマルケッサは未勝利のまま登録抹消となりましたが、母の母であるマルペンサは現役時代にアルゼンチンのG1を勝っている馬で、マルケッサ以外の産駒にはJRAGI2勝のサトノダイヤモンド、2019年京王杯SCで2着となったリナーテ、通算4戦3勝で種牡馬入りも果たしているサトノジェネシスがいます。今回は低評価を覆しての勝利だったものの、3歳牡馬クラシック戦線で活躍できるだけのポテンシャルはあるはず。過小評価される場面があったら積極的に狙っていきたいです。
M 年明け1月5日の中京メインレースは、バラエティに富んだメンバーが集うハンデキャップ競走の京都金杯。
昨年は単勝オッズ13.9倍(7番人気)のザダルが優勝を果たしました。なお、単勝オッズ43.3倍(12番人気)のケイデンスコールが勝った2021年には3連単122万8010円の高額配当が飛び出しています。
伊吹 過去10年の単勝人気順別成績を見ると、3着以内馬30頭中10頭は単勝7番人気以下。一方、上位人気に推された馬の好走率はそれほど高くありません。
M 単勝2~3番人気馬の3着内率は30.0%どまりで、少々物足りない水準ですね。
伊吹 より細かく見ていくと、単勝2~4番人気の馬は2013年以降[3-4-1-22](3着内率26.7%)、単勝5~7番人気の馬は2013年以降[3-3-5-19](3着内率36.7%)、単勝8番人気以下の馬は2013年以降[1-2-3-89](3着内率6.3%)でした。さすがに超人気薄の馬が上位に食い込んだ例は多くないものの、手頃なオッズの伏兵がいたら積極的に狙っていくべきでしょう。
M そんな京都金杯でAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、エアロロノアです。
伊吹 有力馬の一頭だとは思うのですが、オッズ的には悩ましいところ挙げてきましたね。単勝2~4番人気のゾーンに入る可能性も、単勝5~7番人気のゾーンに入る可能性もありそう。
M エアロロノアは明け6歳。2022年の六甲Sなどを勝っているうえ、前走のマイルCSで勝ち馬から0.4秒差の7着に食い込むなど、GIやGIIのレースでも善戦が続いています。ただし、単勝1番人気の支持を集めた2022年の京都金杯は6着どまり。このあたりが不安視されるようなら、妙味あるオッズがつくかもしれません。
伊吹 買うにしても嫌うにしても、買い目作りのポイントになりそうですね。Aiエスケープが高く評価していることを踏まえたうえで、レースの傾向からこの馬の好走確率を見積もっていきましょう。
M まず注目すべきポイントはどのあたりと見ていますか?
伊吹 直近のパフォーマンスですね。2013年以降の3着以内馬30頭中27頭は、前走の着順が10着以内でした。
M 大敗直後の馬は割り引きが必要、と。
伊吹 前走好走馬が優勢とまでは言えない印象だったものの、前走が格の高いレースだった馬を含めても、前走で11着以下に敗れていた馬は期待を裏切りがち。思い切って評価を下げるべきだと思います。
M 先程も触れた通り、エアロロノアは前走のマイルCSで勝ち馬から0.4秒差の7着に健闘。強調材料のひとつと見て良いのではないでしょうか。
伊吹 あとは、格の高いレースを主戦場としてきた馬が強いレースである点も見逃せません。2017年以降の過去6年に限ると、3着以内馬18頭中16頭は前年のGI・GIIで9着以内となったことのある馬でした。
M 逆に言うと、GIIIやオープン特別、条件クラスのレースばかり使ってきた馬は、疑ってかかった方が良さそうですね。
伊吹 おっしゃる通り。GIIIのハンデキャップ競走とはいえ、実績馬の参戦もそれなりに多いレースですから、新興勢力を過大評価してしまわないよう心掛けるべきでしょう。
M エアロロノアは2022年にGI・GIIを4回使っており、いずれも7着以内に好走しています。重賞未勝利ではありますが、実績上位の一頭として扱った方が良いかもしれません。
伊吹 さらに言うと、エアロロノアは明け6歳である点も高く評価して良さそう。2018年以降の過去5年に限ると、3着以内馬15頭中12頭は馬齢が5~6歳でした。
M 7歳以上の高齢馬だけでなく、明け4歳の馬たちも苦戦している点は気掛かりですね。
伊吹 ちなみに、馬齢が4歳・7歳以上、かつ“東京、かつGIのレース"において6着以内となった経験がない馬は、2018年以降[0-0-0-31](3着内率0.0%)とまったく上位に食い込めていません。2018年3着のレッドアンシェルと2019年1着のパクスアメリカーナは前年のNHKマイルCで、2022年2着のダイワキャグニーは6歳時の天皇賞(秋)などで善戦していた馬。東京のGIである必要はないかもしれませんが、ビッグレースで健闘したことのない4歳勢や7歳以上馬は、苦戦必至と見るべきでしょう。
M 今回は伊吹さんとAiエスケープの見解が一致しました。
伊吹 もちろん私はそれなりに重いシルシを打つつもりでしたし、Aiエスケープの評価も高いのであれば心強い限り。ただ、6着どまりだった昨年もこれらの条件はクリアしていたわけですから、本命にするかどうかはもう少し慎重に検討しようと思います。もっとも、その昨年はコース取りの差が堪えてしまった印象なので、それほど心配しなくて良いような気も。不利な枠を引いてしまったり、想定以上に人気を集めてしまったりしない限りは、素直に信頼して良いのではないでしょうか。