▲戸崎騎手と川田騎手によるスペシャル対談(撮影:福井麻衣子)
川田騎手の連載『VOICE』に初のゲスト、戸崎圭太騎手が来てくださいました。昨年度の騎手大賞とMVJというこの奇跡の組み合わせが実現した背景には川田騎手によるある策と、戸崎騎手に起きた心境の変化がありました。
昨年3月の毎日杯、戸崎騎手はこれ以上ないほどドン底に落ちたと言います。そこから開き直ってみるも立ち直れていなかった春のGIシーズン、川田騎手から食事会のお誘いが。それは福永騎手が「圭太にしよう」と言い開かれたもので、その場で川田騎手はある言葉をかけます。
その言葉でハッとした戸崎騎手はそこから気を引き締め、一気に6年ぶりのMVJまで上り詰めます。そんな先輩後輩でありながらも、どんなことでも言い合える仲であるお二人の裏側が明らかになります。
(取材・構成=不破由妃子)
「初めて深い話をした」昨春の食事会
──戸崎さん、川田さん、MVJ、そして騎手大賞、本当におめでとうございます。
戸崎・
川田 ありがとうございます。
──『VOICE』初の対談企画にして、MVJ×騎手大賞の顔合わせですからね。まさにスペシャル対談が実現するということで、非常に楽しみにしておりました。
川田 なにより、今日こうして戸崎さんがきてくれたことがスペシャルだと聞いてますよ。対談依頼は「ことごとく断られてきた」とnetkeibaさんから聞いたので。
戸崎 俺、基本的に対談が苦手で…。相手が誰であれ、今まではお断りさせてもらってた。地方のジョッキーとはやったことがあるんだけどね。JRAのジョッキーとは、今回が初めてじゃないかな。
川田 相手が僕だから、「断ったら、あとが面倒くさそうだな」と思ったでしょ(笑)?
戸崎 netkeibaさんからの(出演依頼の)メールを見たら、「川田さんは、『戸崎さんは絶対に断らない』とおっしゃっています」って書いてあって…。「これ、断れねーじゃん」と思った(笑)。
川田 そう、断れないように、あえて言いました(笑)。
▲「これ、断れねーじゃん」(撮影:福井麻衣子)
戸崎 でもね、それ以上に心境の変化が大きいかもしれない。去年は、騎手人生のなかで一番楽しく乗れた年だったから。結果が伴っていたということもあると思うけど、それ以上に自分が楽しめた。今までにない感覚を味わえた一年だったよ。
──「騎手人生のなかで一番」とは、非常に興味深い。なにかきっかけがあったのですか?
戸崎 去年の毎日杯でドゥラドーレス(1番人気3着)に乗ったんですけど、我ながら酷いレースをしてしまったんです。本当に情けなくて、どん底に落ちたっていう感じで…。「もう表に出られない」くらいに落ち込んだんですけど、ここがどん底ならこれ以上落ちることはないなと、吹っ切れたところがあったんですよね。
それもひとつのきっかけですが、立ち直れないまま、それでもちょっとずつ開き直りながら頑張っているときに、将雅に食事会に誘ってもらって。
川田 5月か6月か…。春のGIシーズン中でしたよね。
戸崎 そうだね