「もしかしたら強いのかな」最初から最後まで驚きのデビュー戦

──昨春は桜花賞5着、オークス4着とキャリアが浅いながらも牝馬クラシックで活躍を見せました。デビュー前はどんな馬でしたか？

田中　デビュー前は大きく目立つタイプではなくて、調教も抜群に動くというわけではありませんでした。ただ、十分に乗り込めていましたし、気の強そうなタイプだなと感じていたので、どんな競馬をするのかなと思いながらデビュー戦を迎えました。

──そのデビュー戦では直線で馬と馬の間を割って伸びてくるという新馬らしからぬ根性を見せました。

田中　その前に、スタートで大出遅れをしてしまって、「あちゃー」と思っていました。でも、そこから3コーナーで前に取り付けて、内側にスペースがあったところを上手く押し上げていけて随分いい格好に見えたので「もしかしたら、ちょっとあるのかな」と思いました。そうしたら最後、間を割って抜けてきたので「もしかしたら強いのかな」と。


──いい意味で期待を裏切る強さだったんですね。その感触通り、チューリップ賞はキャリア2戦目ながら2着と力を見せました。

田中　やっぱり強い馬でしたね。直線で勝ち馬に離れたところから差されて仕方なかったですけど、デビュー戦から間隔を空けての2戦目であのパフォーマンスだったので、力を再認識しました。

──その言葉通り、GI・桜花賞はわずか0.1秒差の5着と力を見せました。続くオークスでは放馬の影響で発走が遅れてテンションが上がり過ぎてしまう馬もいました。ピンハイはどうでしたか？

田中　やっぱり影響はあったと思います。それでも4着としっかり走っていましたから、彼女のメンタルの強さなんでしょうね。

バビットの片思い相手はピンハイ？

──春のGIでこれだけ走りましたから、秋華賞でも期待がかかりましたが、残念ながら賞金不足で出走が叶いませんでした。

田中　春3戦を頑張った後で、夏に1走挟むのは難しいなと感じていて賞金加算できずにぶっつけだったので仕方がないですね。

──しかし、秋華賞当日の1レース前に出走した西宮Sは単勝1倍台で大外からしっかり差し切り勝ちを決めました。春に比べるとスタートが出るようになったかなと見えるのですが、実際はどうですか？

田中　わりと上手になってきたんじゃないかなと思います。特に何か対策をしたというわけではなく、馬が勝手に上手になってくれました。



──経験や成長というのも大きいんですね。エリザベス女王杯は初めての道悪馬場で9着。

田中　2200mという距離やコース形態、天候・馬場状態などいろいろ向いていない条件が結果的に重なってしまったかなと思います。ただ、彼女にとっていい経験にはなりました。

──いま距離の話が出ましたが、今回東京新聞杯を選ばれたということは、これから1600m前後を目指していくのでしょうか。

田中　そうですね、1600mが一番いいパフォーマンスをするんじゃないかな、という点と、牝馬の大きな舞台となるとこの条件になるので、一度走らせてみたいなと思いました。

──5月には同舞台でGI・ヴィクトリアマイルがありますもんね。

田中　賞金がまだ全然ないので、加算しないと何とも言えませんけど、この舞台にすごく適性はあるんじゃないかなと思っています。

──あのー、ちょっと話が逸れるのですが、道を挟んだ向かいの浜田多実雄厩舎にいる「バ」ことバビットが田中克典厩舎に好きな馬がいるんじゃないか説がSNSで噂になっています。もしかしてピンハイ？

田中　え！ そうなんですか。心当たりは全くないです。でもバビットはよく鳴いていて、こちらのブロックに気になる馬がいるのかなとは思っていました。


──特定できたらぜひ教えてください(笑)。最後に改めて東京新聞杯に向けて意気込みをお願いします。

田中　徐々に大人っぽくなってきていますし、まだキャリア6戦とレースを重ねていなくてこれからの馬なので、しっかり頑張って走ってほしいなと思います。