▲小牧太騎手と小牧加矢太騎手の親子対談が実現!(撮影:桂伸也)
今週からお届けするのは、『太論』新春スペシャル対談! ついに、加矢太騎手との親子対談が実現しました。加矢太さんには、2017年にも一度登場していただいていますが、当時は乗馬クラブに勤務しながら障害馬術に打ち込んでいた時代。現在はご存じの通り、ジョッキー×ジョッキーの立場となりました。子供時代の秘話から現在に至るまで、お二人にたっぷりとお話を伺いながら、小牧親子の歴史とそれぞれの思いに迫ります!
(取材・文:不破由妃子)
いつも気にしてはいるけど…何も言わず、遠くから見守るだけや
──この度、ついに親子対談が実現しました。小牧さん、加矢太さん、よろしくお願いします!
太・
加矢太 お願いします。
太 ああ、早くビールが飲みたいわ。
──もう少々お待ちください(笑)。去年はお互いに騎手という立場で初めて一年を過ごしたわけですが、加矢太さんの活躍は、小牧さんの期待を上回るものだったのではないですか?
太 いや、そんなことないよ。なんせ上手やからね、一年目から活躍すると思ってた。僕としたら、もっとポンポン勝てるんじゃないかなと考えていたくらい(笑)。でも、やっぱり厳しいよね。レースを見ていても、みんな厳しく回ってくるもんね。
▲「一年目から活躍すると思ってた」(撮影:桂伸也)
──3月スタートで9勝。障害リーディングでも5位につけて。加矢太さんご自身は、昨年をどう振り返りますか?
加矢太 時間の流れが速すぎて、本当にアッという間の一年でした。「思い出は?」と聞かれても、すぐには答えられないくらいにいろいろな経験をさせてもらって。成績に関しては、10勝までいきたいなという思いがあったんですけどね。でも、今シーズンに入ってから、ちょっと見方が変わって。
──というのは?
加矢太 今年は最初にひとつ勝つことができたんですけど、小倉開催が始まってからは、なかなか上手くいかないことが多くて。そんな現状を思うと、改めて初年度からよく9つも勝ったなぁと思うようになりました。まぁ親父はもっと勝てると思っていたみたいですけど(苦笑)。
──私は正直、競馬的な要素でもうちょっと苦戦するのかなと思っていたんですけどね。そのあたりも、一戦ごとに着々と収穫を得ていったように思います。
加矢太 いや、苦戦していますよ。もう激しく苦戦中(苦笑)。
太 それは仕方がない。なんせ20年選手と同じ舞台で戦っているわけやからね。
加矢太 どんなに映像を見たところで、実際にその場に立たないとわからないことっていっぱいあるでしょ? そこは経験することで埋めていくしかないんだけど、今はそのあたりが明らかに欠落しているなと思う。だから、今年は数をこなして乗りまくろうと。たくさん依頼をいただけるように頑張って、年間騎乗数100鞍以上を目指そうと思ってる。
▲今年は騎乗数100鞍以上を目指す(撮影:桂伸也)
──2017年に、『太論』の企画で小牧さんの50歳の誕生日をお祝いしたとき、加矢太さんも千葉の乗馬クラブから駆けつけてくださって。
加矢太 ああ、覚えてます。親父宛の手紙を書かされた(笑)。
──そうでした(笑)。あのとき、昔を振り返って「(中学卒業のタイミングで)JRAの騎手試験を受けたのは、騎手という職業に対する憧れもあったけど、それ以上に親父と共通の話題を作りたかったから」と話してくださいました。こうして共通の話題ができた今、やはり親子の会話も増えましたか?
太 競馬の話はしないな。レースを見て気になったことをパッと言うことはあるけど。
加矢太 たまに電話してくるもんね。「よかったやん」とか「危なかったやん」とか。でもそれだけ(笑)。
──加矢太さんから競馬のことを聞いたりもしない?
加矢太 そうですね。今は誰かに聞くことといったら、障害の専門的なことが多いので。もっと自分に余裕が出てきたら、たぶん親父に聞きたいことも増えていくと思うんですけど、今はまだその段階までいってないと思うんですよね、僕が。
太 そういえば、北沢くんとか高田潤とか、なぜか俺に障害のことを一生懸命教えてくるねん。なんで俺に教えるのか知らんけど、「小倉の障害コースの乗り方は…」とかさ(笑)。聞いた俺としたら、「これは加矢太に言うとかなアカンな」となるわけで。
加矢太 僕にも直接、しっかり教えてくれるんだけどね。なぜか親父にも教えておこうって(笑)。
▲なぜかお父さんも障害のことを教えられているみたい(撮影:桂伸也)
──謎ですね(笑)。今日はひかりさんも同席してくださっているのでお聞きしてみたいのですが、ひかりさんから見て、おふたりの関係性は変わりましたか?
ひかり 変わってはいないと思いますよ。ただ、父はずっと加矢太のことを気にしています。
太 常に気にしてるよ。トレセンでも、今日はどこにいるんかなぁっていっつも探してる。
ひかり 加矢太が住んでいるマンションの前を通るたびに駐車場をチェックして、「ちゃんと調教に行ってるかなぁ」とか、「出遅れてるんちゃうかなぁ」とか(笑)。
太 親なんて、そんなもんやで。何も言わずに遠くから見守るだけや。そもそもね、調整ルームに一緒にいるっていうのが、いまだに不思議な感覚やもんね。調整ルームでも「電気がついてるなぁ」とか、加矢太の部屋を覗きに行ってるんやけど(笑)。
▲加矢太さんのことは常に気にしてるとのこと(撮影:桂伸也)
加矢太 そういえば、阪神の調整ルームは親父の部屋を使わせてもらってるんやけど、けっこう金縛りに遭うんだよね…。ない?
太 ないね。一度もない。
加矢太 ほかの競馬場の調整ルームでも金縛りに遭うことはあるんだけど、阪神の親父の部屋は確率が高い(苦笑)。入口に人影が…とかも聞いたことがあるし。
──小牧さんの生霊⁉
太 なんでやねん(笑)。俺も阪神に関してはそういう話を聞いたことがあるから、夜中に目が覚めたときは、真っ暗な中、誰かおるかなぁと目を凝らすんやけど……誰もおらんわ(笑)。金縛りも一切ないし。
加矢太 話は変わるけど、親父の部屋には俺の荷物も置いてあるでしょ? 夜、荷物を取りに入りたいんやけど、8時にはもう寝てるし(笑)。だから、そーっと入って、そーっと荷物を取って、そーっと出て…。
太 俺、寝るの早いからね。ホンマに早いねん。最近なんて、7時半にはグッスリや(笑)。
(文中敬称略、次回へつづく)